浄土真宗の伝統行事「報恩講」について解説します【はじめての浄土真宗】

皆様、報恩講(ほうおんこう)という言葉は聞かれたことはあるでしょうか。

浄土真宗のご門徒さんなど、お寺によく通われている方であれば、報恩講という言葉を耳にされているかもしれません。しかしそれでも、報恩講とは何かと言われると、よく分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、浄土真宗の伝統的な行事である報恩講について、お話をさせていただきます。これまでお寺にあまり行ったことがないという方も、この機会に是非ご覧いただければ幸いです。

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◆報恩講とは

報恩講(ほうおんこう)とは、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人(しんらんしょうにん/1173~1263)のご命日をご縁として、営まれる法要(行事)のことです。

報恩とは、親鸞聖人のご恩に報謝や感謝するという意味で、講とは人が集まる会のことで、特に仏教のお話を聞く会のことを言います。

◆報恩講の日程

浄土真宗本願寺派のご本山である西本願寺では、毎年1月9日から親鸞聖人のご命日である1月16日までの七日間にわたって報恩講法要をおこなっています。

本願寺派では、明治6年(1873年)より太陽暦を採用しており、それ以降、1月に報恩講をおこなうようになりました。それ以前は、旧暦の11月28日を親鸞聖人のご命日として、その時期に報恩講がおこなわれていました。

東本願寺をご本山とする真宗大谷派では、現在も旧暦を採用しており、東本願寺では11月に報恩講がおこなわれています。

報恩講は、一般寺院でもおこないます。一般寺院の報恩講は、ご本山の西本願寺と日程をずらしておこなわれることが多いです。ご本山の報恩講に先立っておこなわれる報恩講のことを、御取越(おとりこし)とかお引上(おひきあげ)とよんでいます。

ちなみに、信行寺の報恩講も、毎年11月か12月にご本山に先立っておこなっています。また、地域によっては、浄土真宗の門信徒のご自宅で報恩講をおこなわれるところもあります。

◆報恩講の由来

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報恩講の由来ですが、永仁二年(1294年)、親鸞聖人のひ孫である本願寺第三代宗主(しゅうしゅ)の覚如上人(かくにょしょうにん/1270~1351)が二十五歳の時、親鸞聖人の三十三回忌を本願寺にてお勤めされたことを由来としています。

三十三回忌を期に、覚如上人は親鸞聖人のご遺徳を讃える『報恩講私記』(ほうおんこうしき/『報恩講式』とも言う)という書物を記されました。そして、親鸞聖人の御真影(ごしんねい/影像のこと)の前で、覚如上人は『報恩講私記』を拝読されたと言います。

それ以来、本願寺では報恩講が勤められ、その時に『報恩講私記』が拝読されるようになったそうです。報恩講という名前は、この『報恩講私記』(ほうおんこうしき)という書物の名からきています。

◆知恩講

ちなみに、報恩講以前に、知恩講(ちおんこう)というものがおこなわれていたそうです。

知恩講とは、親鸞聖人の師である法然聖人(ほうねんしょうにん/1133~1212)のご命日におこなわれる法要で、お弟子さんたちが法然聖人のご恩を偲びお勤めされたとあります。

知恩講での式次第や法然聖人の生涯を記した『知恩講私記』(ちおんこうしき/『知恩講式』とも言う)という書物を、隆寛律師(りゅうかんりっし)が記されており、覚如上人の『報恩講私記』は、その『知恩講私記』の形式にならったものと言われています。

このような先達がおこなわれていたことにならいつつ、親鸞聖人のご遺徳を讃えるために、覚如上人が報恩講というものを形作っていかれたと言えます。

もともと親鸞聖人は、浄土真宗という宗派をおこされてはいません。覚如上人の時に、曽祖父(そうそふ/ひいおじいさん)である親鸞聖人を祖師として仰ぎ、現在の本願寺や浄土真宗の礎が築かれていきます。

◆御伝鈔と御絵伝

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また、覚如上人は、親鸞聖人のご遺徳を讃える為に、『報恩講私記』に加えて、『親鸞伝絵』(しんらんでんね)という巻物を制作されました。『親鸞伝絵』とは、親鸞聖人の生涯を文章と絵にまとめた巻物です。

覚如上人は、曾祖父である親鸞聖人がご往生されて7年後にご誕生されていますので、親鸞聖人には直接お会いになっていません。しかし、親鸞聖人を慕い、各地を訪ねて親鸞聖人の伝承を集めたと言います。そうしてつくられたのが、この『親鸞伝絵』です。

『親鸞伝絵』の文章の部分を抜き出したものを『御伝鈔』(ごでんしょう)と言い、絵の部分を抜き出したものを「御絵伝」(ごえでん)と言います。

報恩講では、『御伝鈔』を拝読し、「御絵伝」を掲げ、親鸞聖人のご遺徳を偲びます。

このように、報恩講を形作ったのは、本願寺第三代宗主の覚如上人であり、現在まで大切に受け継がれてきています。報恩講とは、このように非常に歴史と由緒のある法要と言えます。

西本願寺やお近くのお寺で報恩講がおこなわれる際には、是非お参りされてみてはいかがでしょうか。

今回は、浄土真宗の伝統的な行事である報恩講について、お話をさせていただきました。報恩講とは、親鸞聖人のご命日をご縁としておこなわれる法要(仏教行事)であり、西本願寺では1月9日から16日までの計7日間おこなわれています。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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合掌
福岡県糟屋郡宇美町 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
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