浄土真宗のお経の種類や意味を解説します【はじめての浄土真宗】

今回は、「はじめての浄土真宗」ということで、お経について解説をします。

お経とはそもそも何か、そして、浄土真宗でよくおとなえされるお経の種類や意味についてお話をします。

この内容は、浄土真宗本願寺派(本山:西本願寺)のものになります。

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◆お経とは何か

まず、お経とは何かについてお話します。結論からいうと、お経とは、仏教の開祖であるお釈迦様の説法をお弟子さんが記したものです。

お釈迦様は、80歳の生涯を生きられましたが、その間、各地を旅され、悩み苦しむ方々にお説法をなさいます。応病与薬(おうびょうよやく)といわれますが、病に応じて薬を処方されるように、お釈迦様は目の前の方の悩み苦しみに応じて対処法や解決法をお話されたといいます。

それを周りで聞いていたお弟子さんが、その説法の内容をまとめて記していったものがお経になります。お釈迦様が亡くなられた後、有力弟子が集まって会議を開き、お釈迦様はどういうことを説かれたかと話し合い、間違いないという内容をお経としてまとめていきます。

浄土真宗で大切にされているお経も、「如是我聞(にょぜがもん」とか「我聞如是(がもんにょぜ)」という語から始まります。この語は、私(お釈迦様のお弟子)はこのように聞かせていただきましたという意味ですが、それは、私(我々弟子)が説いたのではなく、お釈迦様が説かれたことを証明するものとして冒頭に示されていると言われます。

仏教はその後、大きく三つのルートに伝播していきます。中国などへの北の方面、東南アジアなどへの南の方面、そしてチベット方面です。日本に主に伝わっているのは中国や朝鮮半島をわたってきた北方系で、通称大乗仏教と言われます。大乗とは、大きな船に乗り、皆でさとりの彼岸(向こう岸)へと渡るということを表している言葉です。

大乗仏教の中にも様々な教えがありますが、浄土真宗では阿弥陀如来という仏様の救いが説かれた経典をとても大切にしています。阿弥陀如来によって、あらゆる人々が救済されていくとする教えは、まさしく大乗仏教の根本の精神をあらわしていると見ていかれたのが浄土宗の開祖である法然聖人(ほうねんしょうにん)であり、そのお弟子である浄土真宗の宗祖親鸞聖人(しんらんしょうにん)です。

お経は、中国に入り漢訳をされました。漢字で記されたお経が日本に入ってきたので、日本で読まれるお経は漢文のお経になっています。

お経で重要なことは、お釈迦様が悩み苦しむ方に向けて説かれたものであり、そしてお経には意味があるということです。

お経というと、ご葬儀やご法事でとなえられるもの、お供えされるものというイメージがあるかと思いますが、大切な方と別れてゆく悲しみの中にも、悩み苦しみを和らげる仏教の教えに出遇ってほしいという願いが、ご葬儀やご法事でお経をとなえるという行為に込められています。

そういう文脈で言っても、お経の意味を聞いていくこと、知ろうとすることを、大切にしていただければと思います。

◆浄土真宗のお経の種類と意味

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次に、浄土真宗のお経の種類と意味についてお話をさせていただきます。

世の中には、数多くのお経があり、一説では八万四千種類もあるともいわれます。この数は無数にあることを表しています。お経によって説かれる内容が違い、数あるお経の中で、自分の依りどころとなるのはこのお経、この教えであるとして、宗派が分かれていきます。

浄土真宗では、阿弥陀如来という仏様の救いを依りどころとしていく、そして、南無阿弥陀仏というお念仏を称えていくことを大切にしている宗派です。こうした教えを、阿弥陀如来のお浄土(仏様の国)になぞらえ、浄土教とよんでいます。

そして、浄土真宗では、浄土教系のお経を根本の聖典としています。具体的には、『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』『仏説観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)』『仏説阿弥陀経(ぶっせつあみだきょう)』が、浄土真宗の根本聖典、根幹となるお経とされています。

この三つのお経をまとめて、「浄土三部経(じょうどさんぶきょう)」と言っています。

『仏説無量寿経』は、『大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)』とも『大経(だいきょう)』とも言われ、最も根本となるお経です。浄土真宗のご本尊である阿弥陀如来という仏様の由来や、あらゆる人々を救いたいという阿弥陀如来の願いが説かれています。

『仏説観無量寿経』とは、『観経(かんぎょう)』とも言われます。とある王様の后である偉提希夫人(いだいけぶにん)を主人公として、自らの罪の自覚と、阿弥陀如来による救いが説かれています。

『仏説阿弥陀経』とは、『小経(しょうきょう)』とも言われます。阿弥陀如来のお浄土(仏様の国)の美しい様子や、俱会一処(くえいっしょ/ともにまた会う世界)という世界観が説かれ、南無阿弥陀仏のお念仏を称えることが勧められています。

この極楽浄土とも言われる阿弥陀如来のお浄土の世界観が、死を間近に自分ごととして感じられた時代において、民衆の心を捉え、日本に広まり定着したと言われています。

ちなみに、この「浄土三部経」全てに仏説とあるのは、仏であるお釈迦様が説かれたことを示しています。

浄土真宗本願寺派でよく使われる「日常勤行聖典」というお経本があるのですが、この中には「浄土三部経」全ては記されていません。

それはなぜかというと、この「日常勤行聖典」は、門信徒の方々が日常からとなえていただきたいという思いのもとつくられ、比較的平易でとなえやすいお経が収録されているからです。

「浄土三部経」は、全てとなえるとかなり長いのですね。ですので、「浄土三部経」はお坊さんがとなえるようなお経本に記されています。

『仏説阿弥陀経』は、短かくてとなえやすいお経ですので、「日常勤行聖典」に入っています。

そして、「讃仏偈(さんぶつげ)」と「重誓偈(じゅうせいげ)」というお経が入っていますが、これは、『仏説無量寿経』の一部にあるうたが抜き出されて記されているものです。

他にも「日常勤行聖典」には、「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)」通称「正信偈(しょうしんげ)」が出てきます。「正信偈」は、厳密にいうとお経ではありません。「正信偈」は、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人(しんらんしょうにん)が書かれたものであり、お釈迦様の直接の説法ではないからです。

しかし、それはあくまで定義の話であって、心持ちとしては、お経の内容が丁寧にあらわされた、お経に順じるものであるとして大切にされています。

(順じるの語は、一般的には、準じるの誤用とされますが、経典の中には、仏様の意に順じるとは、この順じるの語が用いられているので、ここではそれにならっています)

「正信偈」には、阿弥陀如来のお徳が讃えられ、阿弥陀如来によって救われていく親鸞聖人自身の喜びがあらわされています。

他には、「十二礼(じゅうにらい)」が入っていますが、これはインドの高僧である龍樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)がつくられたものではないかと言われ、お経に順じた聖典として大切にされています。阿弥陀如来の尊さやお浄土の美しさを讃え、うたにされています。

最後のほうに、「御文章(ごぶんしょう)」があるのですが、これは、本願寺の第八代の宗主(しゅうしゅ)であった蓮如上人(れんにょしょうにん)が書かれたお手紙です。「御文章」は、親鸞聖人があきらかにされた阿弥陀如来の救いの教えを、当時の方々にも分かりやすく記されたものです。

ちなみに蓮如上人は、親鸞聖人が記された「正信偈」を日々となえることも定着させ、習慣化されました。こうした「御文章」や「正信偈」を通して、浄土真宗の教えを根付かせる取り組みを数々おこなわれ、蓮如上人の時代に、浄土真宗や本願寺が日本を代表する一大教団となっていきます。そのため、蓮如上人は本願寺の中興の祖とされています。

さて、いかがだったでしょうか。

今回は、「はじめての浄土真宗」ということで、そもそもお経とは何というところから、浄土真宗でよくおとなえされるお経の種類や意味についてお話させていただきました。

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合掌
福岡県糟屋郡宇美町 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
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