【仏教解説】第12回_一切皆苦(全てのものは苦しみである)

【仏教解説】のコーナーでは、仏教に関するテーマを一つ取り上げて、できるだけ分かりやすくご紹介しています。仏教やお寺を身近に感じていただいたり、日々を安らかに、穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。

今回は、一切皆苦(一切行苦)という言葉について、ご紹介させていただきます。

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◆一切皆苦(一切行苦)

一切皆苦(一切行苦)とは、仏教の辞書などによると、「全てのものは苦しみである」という意味だと言われます。

苦しみとは、分かりやすいものとしては、肉体的な苦しみや、精神的な苦しみがあります。

そして、仏教では本質的には、苦しみとは「思い通りにならないこと」であるとされます。

 

◆思い通りにならず苦しむ

我々は、願いや望みはかなってほしいと思います。願いや望みがかなうのであれば、それにこしたことはないですね。

例えば、できればいつまでも若々しく、健康で、病気がないことを我々は望みます。

また、家族の平穏や、学業や仕事も順調にいって、定年後にも不安なく生活できたり、充実して過ごしたいという願いを持つこともあるでしょう。

人間関係もストレスなく、仕事やプライベートでしたいことができればと望みます。

できるだけ健康で長生きしたい。亡くなる時はあまり苦しまずに往きたい。

こうした願いや望みは、多くの人が持っているのではないでしょうか。私もそのように思うことがあります。

ただ一方で、我々は自分自身の経験や、また周囲の方々の様子を見て、そう思ったとおりにはいかないことも知っていますね。

我々は、願いや望みを持ちながらも、思ったとおりにはいかないことも、頭で理解はしています。

それでもやはり、願いや望みはできればかなってほしいですし、思いどおりにならない現実を、はいそうですかとすぐに受け止められるかというと、そうでもないですね。

病気になればきついですから、やはり健康がいいなと思いますし、人間関係に悩めば、ストレスや怒り、憎しみの心もわいても来ます。

日々を穏やかに、楽しみながら過ごせたらどんなにいいだろうかと思うこともあるでしょう。

自分や家族、周囲の方々が健やかに、幸せに生きていけたらいいなと、我々はやはり願いますよね。

願いや望みがかなってほしい。でも、中々思い通りにはならない。

我々はこうした相反する思いと現実の間で葛藤し、悩み苦しんでいると言えます。

ですから、仏教では苦しみの本質は、思い通りにならないことだというんですね。

肉体的な苦しみも、精神的な苦しみも、どちらも思い通りにならない苦しみに帰結します。

歳をとりたくないけれど歳をとるとか、病気になりたくないけれどなってしまうというように、我々が感じる苦しみは、思い通りにならないところから生じています。

願いや望みがかなってほしい。でも、中々思い通りにはならない。そこに苦しみを感じてしまう。

そうしたことが人生の大きなテーマとしてあって、仏教もまさにその問いから始まっていると言えます。

つまり、苦しみがどうすれば楽になり、より良く生きていけるのか。

そうした問いに応えようとしたのが、仏教の始まりだと言えるかと思います。

お釈迦様の説法の中にも、苦しみについて語った言葉がいくつも出てきます。

それが後に体系化され、仏教として整理されていきます。

 

◆四苦八苦

苦しみの分類として有名なものに、四苦八苦というものがあります。

四苦八苦という言葉はもともと、日本でできた仏教用語と言われ、苦しみの種類を、代表的な四つ、八つに分類したものです。

四苦八苦とは、一般用語では、非常に苦しんだり、苦労するという意味で使われる言葉ですが、もともとは仏教用語なんですね。

では、四苦八苦に分類される代表的な苦しみには、どういう種類のものがあるのでしょうか。

まず四苦ですが、四苦とは生老病死と言われます。

生老病死という言葉は、聞かれたことがある方もおられるかもしれませんね。生老病死にそれぞれ苦とつきます。

①生苦(しょうく)とは、生まれる苦しみです。

例えば、生まれる時代や環境を選ぶことができないなどの苦しみです。

②老苦とは、歳を重ねる苦しみのことです。

③病苦とは、病気に関する苦しみですね。

④死苦とは、死に対する苦しみです。

この生老病死の4つの苦で、四苦と言います。

この四苦に、さらに4つの苦を加えて八苦と言います。

⑤怨憎会苦(おんぞうえく)とは、憎い人と会わなければならない苦しみです。

この苦しみも結構きついですね。

⑥愛別離苦(あいべつりく)とは、愛する人、大切な人と別れる苦しみです。

ご葬儀やご法事は、主にはこの愛別離苦に対応したものだと言われます。

⑦求不得苦(ぐふとくく)とは、欲しいものが得られない苦しみです。

手に入れたいものが手に入らない苦しみですね。

⑧五蘊盛苦(ごうんじょうく)とは、

自己に執着することから生まれる苦しみと言われます。

こうして四苦八苦を見てみると、自分が普段感じる苦しみに当てはまるものも多いのではないでしょうか。

そして、四苦八苦の全てが、思いどおりにはならないことから生じている苦しみです。

歳を重ねたくはないけれど重ねてしまう。

病気になりたくはないけれどなってしまう。

嫌いな人と会いたくないけれど、会わなければならない。

大切な人と別れたくはないけれど別れていく。

こうありたいという思いがまずあって、それが思い通りにならない時に苦しみを感じるんですね。

ですので、仏教では本質的には、苦しみは思い通りにならないことだという意味があるんですね。

そして、思い通りにしたいという強い思い、言い換えれば、執着や欲望、渇愛といったものが、苦しみの根本原因であると仏教では考えます。

そのため、執着をてばなすことや、自己の欲望を見つめていくことを、仏教では大切にするわけです。

では、仏教ではその苦しみを和らげるために、どのようなアプローチがあるのでしょうか。

今回は時間になりましたので、また次回に、苦しみを和らげるための仏教的なアプローチについて、ご紹介したいと思います。

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合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献:
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