ここでは、浄土真宗でよくおとなえされる「正信偈念仏偈」(しょうしんねんぶつげ/正信偈)について、できるだけ分かりやすく学んでいきます。
・仏教やお経を学んでみたいという方。
・人生や生き方について関心がある方。
・でも何から学べばよいか分からないという方。
・浄土真宗のお寺とご縁がある方。
そうした方にお勧めの内容です。初めての方にも分かりやすく、しかし仏教やお経の深みをそこなうことなく、お伝えしてまいります。ご一緒に、学んでまいりましょう。
正信偈は、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人(しんらんしょうにん)がおつくりになった偈(うた)です。今回は、「正信偈」の「建立無上殊勝願」という部分からの偈文の意味について味わっていきます。細かく見る前に、今回は概要を見ていきます。
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◆正信偈の偈文(げもん)
ではまず、本文と書き下し文、そして意訳を見てみましょう。
【本文】
建立無上殊勝願 超発希有大弘誓
(こんりゅうむじょうしゅしょうがん ちょうほつけうだいぐぜい)
五劫思惟之摂受 重誓名声聞十方
(ごこうしゆいししょうじゅ じゅうせいみょうしょうもんじっぽう)
次に書き下し文です。
【書き下し文】
無上殊勝(むじょうしゅしょう)の願(がん)を建立(こんりゅう)し、希有(けう)の大弘誓(だいぐぜい)を超発(ちょうほつ)せり。五劫(ごこう)これを思惟(しゆい)して摂受(しょうじゅ)す。重ねて誓ふらくは、名声(みょうしょう)十方(じっぽう)に聞えんと。
次に意訳です。
【意訳】
後の阿弥陀仏である法蔵菩薩は、「悩み苦しむ全てのものを救う」という、この上なくすぐれた願いをたて、「救えなければ、仏とならない」という、たぐいまれな誓いをおこされました。
そして、五劫というとても長い時間をかけて思惟し、様々な仏の救済法の中から、粗悪なものを選び捨て、南無阿弥陀仏の意味を聞きひらいていくことによって救われていくという、すぐれた救済法を選び取り、阿弥陀仏という仏となられたのです。
『重誓偈』には、南無阿弥陀仏(必ず救う。私にまかせなさい)という阿弥陀仏の名のりを、全ての世界に響き渡らせると重ねて誓われています。
今回は、今読んだ偈文について、細かく見ていく前に、概要を見てみましょう。
◆建立無上殊勝願
「建立無上殊勝願」の部分ですが、書き下し文では、「無上殊勝(むじょうしゅしょう)の願(がん)を建立(こんりゅう)し」とあります。直訳すると、「この上なくすぐれた願いを建て」という意味になります。
言葉の意味を解説すると、無上とはこの上ないということ。殊勝とは、とてもすぐれていることです。無上殊勝の願で、この上なくすぐれた願いという意味になります。
建立とは、建てることです。何を建てるかというと、ここでは無上殊勝の願を建てるということになります。
ですから、「建立無上殊勝願」を直訳すると、「この上なくすぐれた願いを建て」という意味になります。どなたが願いを建てたかというと、後の阿弥陀仏である法蔵菩薩です。
◆超発希有大弘誓
次に「超発希有大弘誓」の部分ですが、書き下し文では、「希有(けう)の大弘誓(だいぐぜい)を超発(ちょうほつ)せり」とあります。直訳すると、「きわめてまれな誓いをおこされました」という意味になります。
言葉の意味を解説すると、希有とはきわめてまれであること。大弘誓とは、大いなる弘い誓いのことです。超発とはおこしたということです。何をおこしたかというと、ここでは希有の大弘誓をおこしたということです。
ですから、「超発希有大弘誓」を直訳すると、「きわめてまれな誓いをおこされました」という意味になります。この誓いをおこされたのも、後の阿弥陀仏である法蔵菩薩です。
◆四十八願
そして、無上殊勝の願とあるこの上なくすぐれた願いも、希有の大弘誓とあるきわめてまれな誓いも、どちらも同じものをさしています。
法蔵菩薩は、四十八願という四十八の願いをたてます。四十八願について、詳しくは別の回にお話しますが、簡単に言うと、法蔵菩薩が「人々をこのように救いたい」とか、「このような仏になりたい」とか、「このような浄土をつくりたい」といった四十八の願いを立てます。その四十八願のことを「正信偈」では、無上殊勝の願とも、希有の大弘誓とも表現されています。
そして、この四十八の願いのうち、根本となるものは十八番目の第十八願であると、親鸞聖人の師である法然聖人は見ていかれます。それを受け継いだ親鸞聖人もまた、第十八願が根本の願いであると見ておられます。
第十八願は根本の願いであるとして、本願とも言います。お寺のご法話の場で、本願という言葉を聞くことがあるかもしれませんが、法蔵菩薩、後の阿弥陀仏がたてられた四十八の願いのうちの十八番目、第十八願を本願と言います。
そして本願とは、簡単に言えば、「全てのものを必ず救う。私にまかせなさい」という阿弥陀仏の願いだと言われます。
◆五劫思惟之摂受
次に、「五劫思惟之摂受」の部分ですが、書き下し文では、「五劫(ごこう)これを思惟(しゆい)して摂受(しょうじゅ)す」とあります。直訳すると、「五劫という長い時間をかけてこれを思惟し、摂め取りました」という意味になります。
言葉の意味を解説すると、五劫とはとても長い時間のことです。思惟とは、深く考えることです。ここで思惟とは、四十八願に説かれるように、「人々をこのように救いたい」とか、「このような仏になりたい」とか、「このような浄土をつくりたい」といったことを、とても長い時間をかけて深く考えたということです。
摂受とは、摂め取るということで、様々な救済法の中からすぐれた救済法を選び取ったということを意味し、また様々な仏方の浄土から、すぐれた浄土のありようを選び取ったということをも意味します。
五劫というとても長い時間をかけて深く考え、そして様々な仏方の救済法や浄土から、すぐれたものを選び取って、四十八願やその根本である第十八願を建てたことをあらわしています。
ですから、「五劫思惟之摂受」を直訳すると、「五劫という長い時間をかけてこれを思惟し、摂め取りました」という意味になります。どなたが思惟し、摂め取られたかというと法蔵菩薩になります。
◆重誓名声聞十方
次に、「重誓名声聞十方」の部分ですが、書き下し文では、「重ねて誓ふらくは、名声(みょうしょう)十方(じっぽう)に聞えんと」とあります。直訳すると、「阿弥陀仏の名を全ての世界に聞えさせようと、重ねて誓われました」という意味になります。
言葉の意味を解説すると、名声(みょうしょう)とは、名号(みょうごう)とも言い、ここでは阿弥陀仏の名前のことです。具体的には、南無阿弥陀仏という阿弥陀仏の名のり、喚び声をさします。
南無阿弥陀仏とは、阿弥陀仏に信じまかせなさいという意味の言葉です。ここでの名声とは、阿弥陀仏があらゆるものに対して、この阿弥陀仏に信じまかせなさいという南無阿弥陀仏の名のり、喚び声のことを言います。この部分は、少し言葉が難しい部分になりますので、また別の回に詳しくお話をしたいと思います。
十方とは、全ての世界ということをあらわしています。具体的には、東、南、西、北、東南、東北、西南、西北、上、下の十の方角のことで、十方とは全ての方角、転じて全ての世界ということを現わしています。
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ですから、「重誓名声聞十方」を直訳すると、「阿弥陀仏の名を全ての世界に聞えさせようと、重ねて誓われました」という意味になります。
ここで、重誓といって重ねて誓うとありますが、法蔵菩薩は、四十八願という四十八の願いを建てられ、その後に、その四十八願の内容を偈(うた)にして、重ねて誓われます。そのため、ここで重ねて誓うと記されてあります。
そういった内容が『仏説無量寿経』というお経に出てきます。ちなみに、その四十八願の内容を重ねて誓ったという偈は、『重誓偈』と言います。『重誓偈』は、浄土真宗でよくとなえるお経です。
『重誓偈』の中に、「名声超十方」という言葉あります。南無阿弥陀仏という名のり、喚び声が、十方に超えて聞こえるようにとの願いが、重ねて誓われています。
「正信偈」の「重誓名声聞十方」という言葉は、この『重誓偈』から引用されていることが分かります。
◆
さて、いかがだったでしょうか。今回は、「正信偈」の「建立無上殊勝願」という部分からの偈文の意味について、細かく見る前に、概要を見てみました。おおよその意味合いはつかんでいただけたでしょうか。
一度で意味がつかめなくても、この動画を何度も繰り返し見ていただくとより理解が深まるかと思います。是非、Youtubeのチャンネル登録もしていただき、動画を繰り返しご覧いただければと思います。
また、こうした内容に関心がありそうな方や、浄土真宗のお寺に通われている方がおられたら、是非この動画や、信行寺の「オンラインお寺参り」もお勧めいただければと思います。
今回は、偈文の概要を見ましたので、次回は今回見た偈文の意味を、さらに掘り下げてみたいと思います。
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最後までご覧いただきありがとうございます。
合掌
福岡県糟屋郡宇美町 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
仏教講座_浄土真宗【正信偈を学ぶ】第10回_阿弥陀仏の四十八願と第十八願 | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)
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◇参照文献:
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・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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