【一口法話】私たちが生きていける理由

先日、トルコ出身のルーチャンさんという僧侶の方が、海外より信行寺までお参りくださいました。

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写真の向かって左側におられる方がルーチャンさんです。

現在は、韓国で仏教を修養されているそうですが、阿弥陀仏に惹かれたとのことです。

後々は日本でも仏教や浄土真宗を学びたいという思いをお持ちだそうです。

ルーチャンさんは、信行寺から配信しているYoutubeの動画を、普段からご覧いただいているようで、そのご縁でわざわざご遠方からお参りくださいました。

「なぜ阿弥陀仏に惹かれたのですか?」と私が伺うと、ルーチャンさんはこう教えてくださいました。

「阿弥陀仏の慈悲が素晴らしいと思いました。全てのものを救おうとされる仏様であると聞いた時に、とても感動しました。トルコや韓国では、自殺をされる方が多いので、阿弥陀仏の慈悲は、そういう方々の心の支えになると思います。私は、阿弥陀仏の慈悲を色々な方にお伝えしたいです」

そのような思いを伺い、何と清らかなことかと思いました。

お話したのは、ほんの僅かな時間でしたが、喜びに満ち溢れた姿と、とても澄んだ目をされていて、こちらの心が洗われるようでした。

▼こちらの内容は動画でもご覧いただけます。

◆阿弥陀仏の慈悲

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私たちは、誰かが気にかけてくれている、見てくれていると感じることで生きていけることがあるのではないでしょうか。

逆に、自分のことなんて誰も気にかけてくれない、自分がいなくても誰も困らない。

そう感じる時、私たちは生きていく意味を見出すことが難しくなります。

阿弥陀仏という仏様は、私たちのことをいつも気にかけ、見てくださっている。そういう慈悲の心をもった仏様だと言われます。

慈悲とは、他のものを思いやり、慈しむ心のことです。

そんな阿弥陀仏の慈悲の心は、親心にも例えられます。

◆アタッチメント

先日、NHKスペシャルの「生きづらさに悩むあなたへ」という特集番組をたまたま見ていたら、ある実験が紹介されていました。

その実験では、小さな子が、親と一緒に知らない部屋に入るところから始まります。

子どもは、親と一緒にいるので、知らない部屋でも、歩き回って部屋を探索したり、おもちゃで遊んだりしています。

時間が経過して子どもが部屋に慣れてきたところで、親が部屋から出ていきます。

さて、親がいなくなった時、子どもはどういう反応をするでしょうか。

予想通り、子どもは親がいなくなったことに気付くと、急に不安な様子になり、泣き出しました。

そして、親が出て行ったドアの近くに行って、ドアを開けようとしたり、泣きわめきながら親の姿を探します。

何組かの子で実験されていましたが、全ての子どもが同じように泣いて親の姿を探したようでした。

親が部屋に戻ってきて子どもを抱っこすると、子どもは泣き止み、次第に落ち着きます。

そしてまた、親に見守られながら、部屋の探索をしたり、おもちゃで遊び始めました。

その番組を見ながら、親が近くで見てくれていること、親が気にかけてくれていることが、子どもにとって大きな安心になっていることを感じました。

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子どもが親などにくっついて、安心したい、不安を和らげたいと思う本能的欲求を、心理学の言葉で「アタッチメント」と言うそうです。

幼少期にこうした安心感に満たされることが、子どもの健やかな発達や、大人になってからの人間関係や健康にも影響を与えることが分かってきたそうです。

相手が誰でも良いわけではないそうですが、自分のことを気にかけてくれている人がいることは、私たちに大きな安心感を与えてくれるのでしょうね。

それは幼少期だけではなく、大きくなってからも言えることではないでしょうか。

番組中に、コロンビア大学の准教授で精神科医の方が、このようなことを言われていました。

「信頼できる人とつながり合うことほど、人の心を落ち着かせてくれるものはありません」

◆人間の限界を超えて

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さて、阿弥陀仏という仏様は、私たちのことをいつも気にかけ、見てくださっている仏様だと言われます。

そうした阿弥陀仏の慈悲の心は、親心にも例えられてきました。

親に見まもられているような安心感を、仏様に対して感じる方もおられるのではないでしょうか。

親の存在は、子にとって大きなものです。

しかし一方で、人間の親には限界もあります。

親と言っても、必ずしも愛情深い親ばかりではありません。

また、親も人間ですから、健康や体力などに限界もあります。

子を思う気持ちはあっても、体がついていかないということもあるでしょうね。

子を置いて、先に亡くなっていかなければならないこともあります。

私たちは、良き親であろうと思いながらも、いつも良き親であれるかは難しいものです。

また、親に親らしさを求めながら、親も完璧ではないという事実に突き当たることもあります。

しかしそれでも、親という存在は、子にとって大きなものではないでしょうか。

だからこそ、人間のもつ限界を超えて、ずっと気にかけ、見てくださっている親のような存在を、人類は仏様に見出してきたのかもしれません。

地域や家族が空洞化、疎遠化している現代に、生きづらさや孤立を感じる人は多くなっています。

そんな中、気にかけてくれる方の存在は、生きていく上で、何より貴重で、尊いものかもしれません。

いかがだったでしょうか。

今回は、「私たちが生きていける理由」というテーマで、お話をさせていただきました。

皆様、どのようなことを感じられたでしょうか。また是非、感想などもお聞かせください。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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