信行寺では、「キッズサンガ」という子ども会を開催しています。
子ども会では、皆でお経をとなえたり、仏教のお話もしています。
手を合わせる心や、相手を思う素直な心が育ってほしいなという思いで、子ども会をおこなっています。
以前の子ども会で、「なぜけんかをするのか」というテーマでお話をしました。
そして、「相手の気持ちを考える大切さ」について、お子さんたちと考えました。
その話は、お子さん向けにつくった内容ですが、「相手の気持ちを考える大切さ」というのは、私たち大人にも通じる内容でもあります。
今回は、その時の話の内容を、ご紹介させていただこうと思います。
お子さんに向けて語っていることを想像しながら、ご覧くださいますと幸いです。
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◆どちらが悪い？
さて、やまとくんというお兄ちゃんと、さらちゃんという妹がいました。
ある日の家での出来事です。
お兄ちゃんのやまとくんが、積み木でお城を作っていました。
そこに、妹のさらちゃんがやってきました。
さらちゃんはよそ見をしていて、積み木があることに気付かず、積み木のお城を倒してしまいました。
すると、やまとくんは怒りました。
「さらがお城を壊した」と、やまとくんが言いました。
さらちゃんも、それに対して言い返します。
「わざとじゃないもん」。
そして、けんかが始まりました。
やまとくんは言います。
「壊したさらが悪い」。
さらちゃんも言います。
「わざとじゃないから、さらは悪くない。怒ったお兄ちゃんが悪い」。
こうしてけんかになってしまいました。
皆さんに質問です。
この時、積み木を倒したさらちゃんが悪いのでしょうか。
それとも、怒ったやまとくんが悪いのでしょうか。
先に積み木を倒したさらちゃんが悪い。
わざとじゃないのに、怒ったやまとくんが悪い。
どちらの意見にも言い分があるように感じますね。
もう一つ質問です。
この時、どうすればけんかにならなかったのでしょうか。
やまとくんとしては、自分が作っていたお城が壊されたら、怒りの感情はわくでしょうね。
しかし、さらちゃんはわざと壊したわけではありませんから、必要以上に怒らなくても良かったかもしれません。
さらちゃんとしては、わざと倒したわけではありませんから、やまとくんに怒られたら、「わざとじゃない」と言い返したくなる気持ちは分かります。
しかし、まず「ごめんね」と謝ることもできたかもしれません。
◆なぜけんかになった？
二人は、なぜけんかになったのでしょうか。
二人ともに共通することは何でしょうか。
それは、相手の気持ちを考えずに、自分のことしか考えていないということですね。
お兄ちゃんのやまとくんは、壊したさらちゃんが悪いと思っています。
さらちゃんが、わざと倒していないということについては考えていません。
妹のさらちゃんは、自分はわざと倒していないから悪くないと思っています。
やまとくんが悲しい気持ちになっていることについては、考えていません。
どちらの言っていることも間違ってはいませんが、二人ともできていないことがあります。
それは、相手の気持ちを考えるということです。
◆相手の気持ちを考えてみる
それではもし、お互いに相手の気持ちを考えていたらどうなっていたでしょうか。
少し考えてみましょう。
やまとくんは、かっこいいお城をつくりたいと思っていて、一生懸命積み木をしていたとしましょう。
そして、自分が思っていたとおりの、かっこいいお城ができました。
その時、その積み木のお城が壊されたら、どんな気持ちになるでしょうか。
悲しい気持ちになりますよね。
そして、「なんでこんなことをするんだ」という怒りの気持ちもわいてきます。
やまとくんは、積み木を倒された時に、おそらくそういう気持ちになっていたのではないでしょうか。
もし、やまとくんの気持ちが分からない場合は、自分と入れ替えて考えてみましょう。
自分が、積み木で好きなものをつくっていたとします。
積み木で好きなものをつくっているところを想像してみてください。
どんなものができましたか。
次に、その積み木が壊されたとします。
どんな気持ちになりますか。
悲しい気持ちになりませんか。
「せっかくつくったのに」という思いになりませんか。
これが、相手の気持ちを考えてみるということです。
相手の気持ちが分かると、「ごめんね」という気持ちもわいてきます。
では今度は、さらちゃんの気持ちも考えてみましょう。
さらちゃんは本当によそ見をしていて、お兄ちゃんが積み木をしていることを知りませんでした。
わざと倒したわけではありません。
倒した瞬間はびっくりして、そして、「ごめんなさい」という気持ちになっていたかもしれません。
それなのに、「さらが悪い」「さらはわざと壊した」と言われたとします。
その時、どんな気持ちになるでしょうか。
「わざとじゃないもん」と言いたくなるさらちゃんの気持ちも分かりますよね。
もし、あなたがわざとしていないのに、お父さんやお母さんから怒られたら、どういう気持ちになりますか。
悲しい気持ちになりますよね。
「わざとしていないのに。そんなに怒らなくてもいいじゃない」という思いもわいてきます。
こうして、相手の気持ち考えてみるとどうでしょうか。
相手の気持ちが分かると、「わざとじゃないなら、そんなに怒らなくてもいいか」という気持ちにもなってきませんか。
◆仏様の心
浄土真宗のお寺には、阿弥陀仏という仏様のお仏像があります。
阿弥陀仏という仏様は、自分のことよりも、まず相手のことを考える優しい方だそうです。
積み木のお城が壊れたやまとくんには、「悲しいね」という思いを抱き、怒られて悲しい気持ちになっているさらちゃんにも「悲しいね」という思いを抱く。
そんな相手の気持ちを考える優しい心をもった方が、仏様だそうです。
自分のことよりも、相手のことを考える。そういう仏様の心を通して、「自分は自分のことばかりを考えていたこと」「相手の気持ちを考えていなかったこと」に気付かされるのですね。
実は、私たち人間は、「相手が悪い」「自分は悪くない」と思ってしまうくせをもっています。
いつも自分中心に考えているため、相手の気持ちが分からなくなってしまうのですね。
今日は、そのことを覚えてもらったらと思います。
自分のことよりも、まず相手のことを考える。そんな仏様の心に触れることで、そうできていない自分に気付かされていきます。
そして、少しだけでも相手の気持ちを考えてみようとする思いもわいてきます。
仏様に手を合わせたり、仏様のお話を聞くことは、仏様の心に触れて、自分を見つめ直す機会でもあるのですね。
◆
さて、いかがだったでしょうか。
このような話を、以前の子ども会でさせていただきました。
「なぜけんかをするのか」というところから、「相手の気持ちを考える大切さ」について、お子さんたちと考えていきました。
子どもは、兄弟姉妹で年齢が近ければ、よくけんかをしますね。
子どもの言い分を聞いていると、お互いに自分の意見を主張しています。
それは、「相手が悪い」「自分は悪くない」と思ってしまうくせをもっているからですね。
いつも自分中心に考えているため、相手の気持ちが分からなくなってしまうのですね。
自分が小さい時もそうでした。
以前、子どもたちがけんかをしている時に、何でけんかをしているのか聞いたことがありました。
その時も、「相手が悪い」「自分は悪くない」と、お互いに自分の意見を主張していました。
その時、大人である私が、どちらが悪いかを決めたくなる気持ちがわいてきたのですが、ぐっとこらえました。
そして、「相手の気持ちになって考えてみてごらん」と、相手の気持ちを考えるように促してみました。
すると、相手の言い分も理解できたのでしょうね。
それ以上、「相手が悪い」「自分は悪くない」とは言わなくなりました。
子どもがけんかしているのは、相手の気持ちを考えられていないということも一因としてあるのだと、思いました。
そして、「またけんかになりそうになった時、どうしたら良いと思う」と、重ねて聞いてみました。
すると、「こうしたら良いと思う」「ああしたら良いと思う」と、どんどんと意見が出てきました。
相手の気持ちを考えてみたことで、なぜ相手が怒ったのか、なぜけんかになったのかも分かったのでしょうね。
どんどんと、良い意見が出てきて驚きました。
子どもがけんかをしている時に、大人は直ちにどちらが正しいかを決めずに、子どもに相手の気持ちを考えさせ、どうしたら良いかを考えさせるという姿勢も大切なのだと学ばされたことがありました。
宜しければ、皆様の感想もお聞かせください。
合掌
福岡県糟屋郡 信行寺（浄土真宗本願寺派）
神崎修生
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