【一口法話】世のなか安穏なれ

信行寺で開催している「朝参り」では、皆様の心が少しでも安らぐようなご縁となればと思い、法話をしております。動画と文章でご覧いただけるようにしましたので、宜しければご覧くださいませ。

▼動画はこちら

皆様、新年明けましておめでとうございます。今年最初の朝参りに、ようこそお参りくださいました。

今日、このように皆様とお会いでき、共に仏様に手を合わさせていただいていることを、とても嬉しく、そしてありがたく思います。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

昨年を少し振り返ってみると、色々なことがありました。コロナ禍に入り、三年目の年でしたね。コロナと共に生活することも、日常にはなりましたが、その分、感染者は中々減らないままでした。

ロシアのウクライナ侵攻が始まった年でもありました。まさか現代に、国と国との戦争が起こるとは、思ってもみませんでした。

安倍元首相が銃撃されたのも昨年でした。本当に色々なことがありました。

疫病の流行や戦争、一国の首相の銃撃というような、歴史上まれにみるような時代だったのではないでしょうか。今年は、穏やかな年になるといいですね。

さて、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のお手紙の中には、このような言葉があります。

「世のなか安穏なれ、仏法ひろまれ」

『親鸞聖人御消息』第二十五通

安穏(あんのん)という言葉を、聞かれたことはあるでしょうか。安らかという漢字と、穏やかという漢字で、安穏と書きます。

世の中が安らかでありますように。穏やかでありますように。そして、仏法(仏教)がひろまりますように。そのような意味の言葉です。

この年末年始も、多くの方が信行寺の本堂や納骨堂にお参りをされ、仏様やご先祖様、先に往かれた方へご挨拶をされていました。

今年がどうか安らかな年でありますように。そのような思いの中、お参りをされていた方も、多かったのではないかと思います。今日も同様の思いで、この朝参りの日をお迎えの方もおられるでしょうね。

親鸞聖人の言葉のように、本当に今年が安らかで穏やかな年になればいいですね。

さて、私たちの日々の生活の中では、楽しいことや、嬉しいこともありますが、思い通りにいかずに悩むこともあります。

思い通りにいかずに悩むような時は、仏様の前に座って、手を合わせて、南無阿弥陀仏とお念仏をとなえると、肩の荷がおりて、ほっとする気がします。

南無阿弥陀仏とは、「大丈夫だよ。私がいるよ」という仏様の言葉だと言われます。

私たちは、「大丈夫、大丈夫」と、自分自身に言い聞かせることもありますが、南無阿弥陀仏とは、阿弥陀仏という仏様から「大丈夫だよ」と言われている言葉なんですね。

宮崎県の岩尾秀紀さんというお寺のご住職のお話が、本願寺のホームページに掲載されていました。

その岩尾さんの娘さんが2歳の頃のお話です。娘さんが遊びの最中に、岩尾さんのお母さん、娘さんからするとおばあちゃんになりますが、おばあちゃんを大けがさせかねないようなことをしたらしいんですね。

具体的にどのようなことをされたかは、書かれていませんでしたが、子どもの頃って、結構危ないことをしますよね。家の中に隠れていて、おじいちゃんおばあちゃんを脅かしたり。心臓発作をおこしかねません。おじいちゃんおばあちゃんが座ろうとする椅子を引いたり。転んで骨折するかもしれません。

子どもの頃って、おじいちゃんおばあちゃんの身体の状態を想像することはなかなかできませんから、けっこう危ないことをします。その岩尾さんの娘さんも、おばあちゃんに大けがをさせかねないことをしたらしいです。

それを見ていた岩尾さんは、「どれだけおばあちゃんが痛かったと思うの。ごめんなさいと言いなさい」と大声でしかりつけたと言います。娘さんは泣きじゃくるばかりで、「ごめんなさい」が言えなかったそうです。

するとおばあちゃんが、悲しそうな顔をして、お孫さんを抱きしめて、「よしよし、大丈夫だよ、よしよし大丈夫」と、お孫さんと一緒に涙をながしながら何度も「大丈夫」といったそうです。

すると、大泣きしながら「おばあちゃん、ごめんね、ごめんね」と、娘さんはおばあちゃんに謝ったと言います。

娘さんは、おばあちゃんに大変なことをしたと思いながら、お父さんに大声で怒られて、悲しい思いになったことでしょう。おばあさんは、そのお孫さんの心がわかったんでしょうね。一緒になって泣いて、優しく抱きしめた。そんなおばあちゃんの心に、お孫さんの心も救われたのではないでしょうか。

阿弥陀仏という仏様は、私たちを見まもりながら、「大丈夫だよ。私がいるよ」と語りかけ、優しい光で包んでくださっている仏様だと言われます。そして、そんな「大丈夫だよ。私がいるよ」と語りかけておられる言葉が、南無阿弥陀仏のお念仏だと言われます。

思い通りにいかずに悩むような時は、仏様の前に座って、手を合わせて、南無阿弥陀仏とお念仏をとなえましょう。心がほっとしますよ。

そして、楽しいことや、嬉しいことがあった時も、また仏様の前に座って、南無阿弥陀仏ととなえましょう。仏様のところには、先に往かれた方もおられることでしょう。楽しいことも、嬉しいことも報告しましょう。

今年も共々に、仏様の前で、ご一緒にお念仏させていただければと思います。世のなかの安穏を願いながら、またそれぞれご自身や身近な方の安穏を思いながら、お念仏させていただきましょう。

本日もようこそお参りくださいました。そして、本年もどうぞ宜しくお願い致します。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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