【仏教解説】のコーナーでは、仏教に関するテーマを一つ取り上げて、できるだけ分かりやすくご紹介しています。仏教やお寺を身近に感じていただいたり、日々を安らかに、穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。

今回は、苦しみを和らげる仏教の考え方である四聖諦(ししょうたい)の四つ目、道諦(どうたい)の概要について、ご紹介したいと思います。

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◆四聖諦

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さてこの数回、四聖諦(ししょうたい)についてご紹介しています。四聖諦(四諦)とは、苦しみを和らげる仏教の考え方、実践法のことです。

諦とは真理という意味で、四聖諦で、四つの聖なる真理という意味の言葉になります。その四つの真理とは、苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)です。

前回までに、苦諦、集諦、滅諦について、ご紹介しました。今回は、四聖諦の四つ目の道諦についてお話致します。

道諦には、八正道という八つの実践方法が説かれますが、今回はまず八正道の概要について見てみたいと思います。

◆道諦

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さて、道諦とは、苦しみを止滅させ、安らかなさとりの境地に至るための真理です。そして、その具体的な実践方法として、道諦には八正道という、八つの実践方法が説かれています。

苦しみの止滅、さとりの境地という言葉は、ちょっと難しくて、あまりなじみがないというか、しっくりこないという方もおられるかもしれません。そこであえて、現代を生きる我々にとって、もう少し分かりやすく、しっくりくる言葉で、道諦、八正道を表現してみたいと思います。

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分かりやすい言葉で言うならば、道諦、八正道とは、我々が幸せに生きていくための道であり、幸せに生きるための実践方法と言えるかと思います。

幸せに生きていくとは、思い通りにしていくということではなくて、思い通りにならないことも含めて、この人生でおきる様々な出来事をうけとめながら、それでも心豊かに人生を味わっていける。そうした生き方、あり方が、幸せに生きていくことだと言えるかもしれません。

そうした深く人生を味わうことのできる見方や心を育み、安らかで幸せな方向へと、人生の歩みを進めていけるもの。そうしたものが仏教であり、この四聖諦の中の道諦、八正道には、その実践方法が示されています。

仏道における実践方法は、八正道以外にも、宗派によって様々なものがあります。この四聖諦、八正道は、様々ある仏道の実践方法の中でも、お釈迦様(ブッダ)が説かれた最初期のものだと言われています。

では、道諦に説かれる八正道という八つの実践方法とは、どのようなものなのでしょうか。

◆八正道

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今回は、ざっと八正道の概要を見てみます。

一つ目の正見とは、正しい見方のこと。
二つ目の正思惟とは、正しい思考のこと。
三つ目の正語とは、正しい言葉づかいのこと。
四つ目の正業とは、正しい行いのこと。
五つ目の正命とは、正しい生活のこと。
六つ目の正精進とは、正しい努力のこと。
七つ目の正念とは、正しい思念のこと。
八つ目の正定とは、正しい精神統一のことです。

これらの八つの項目について実践していくことで、人生が心豊かなものとなっていくと言われます。

さて、八正道の各項目には、全て正しいという言葉がついています。ここでの正しいとは、「完全な」とか「本質的な」というような意味があると言われています。

今は正しいという言葉を使っていますが、この正しいには、「完全な」とか「本質的な」という意味があることを含みながら、聞いていただけると幸いです。

さて、八正道は、正しい見方、正しい思考、正しい言葉づかいというように、全て正しいという言葉がついていると申しました。それは、この八正道にあげられている項目には、正しい方法やあり方があるということです。私的には、まずここがポイントだと思います。

つまり、八正道の項目にあげられている物事の見方や、思考の仕方、言葉づかい、行い、生活、努力などには、正しい方法やあり方があるということです。

もちろん、それは仏教的な立場からの考え方ではありますが、それらの正しい方法やあり方を知ること。そして、それを日々実践することで、この人生が心豊かなものとなっていく。ここがまず、八正道のポイントだと思います。

この八正道に出てくる、物事の見方や、思考の仕方、言葉づかい、行い、生活、努力といった項目は、我々が日ごろからおこなっていることですね。仕事や学校や、家庭など、どのような環境においても関わってくる、とても日常的なものです。

例えば、八正道の一つ目の正見や、二つ目の正思惟とは、物事の見方や思考の仕方に関するものです。なぜこの問題は起きているのかとか、なぜ自分は悩んでいるのかといった、我々が日々つきあたるような問題についての項目です。

つまり、八正道に説かれていることは、日常的な場面で応用したり活用ができるということです。

三つ目の正語、四つ目の正業とは、言葉づかいや行いに関するものです。五つ目の正命、六つ目の正精進とは、生活や努力に関するものです。これらは、我々の日々の言動や生き方に関わるものですね。

このように、この八正道に説かれていることは、我々が日常的に応用、活用できるものです。

こういう場面ではどのような選択をすればよいのかとか、人に対して、どんな接し方をしたほうがいいのかとか、自分はどんな人でありたいのかとか。仏教は、そうしたことを考える上での判断軸になるものであり、 それを考えるだけでなく、実践していくものが、八正道になります。

仏教は、単なるお勉強ではないと言われます。私も浄土真宗の僧侶になる時に、この八正道の勉強をしました。しかし、八正道の八つが何であるかを覚えても、日々の中で八正道を実践したり、人生や生き方が変わるものとならなければ、その勉強もあまり意味がないと思うんですね。

仏教は、お勉強のためのものではなくて、深く人生を味わうことのできる見方や心を育んでいくものだと言われます。

ローマは一日にして成らず、千里の道も一歩からと言われるように、この人生もまた、日々の積み重ねで成り立っています。日々の生活やそこでの言動が、我々の人生を形作っているんですね。ですから、この日々の生活や言動が、とても重要なものだということになります。

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お釈迦様(ブッダ)の言葉に、このような言葉があります。

生まれによって賤しい人となるのではない。生まれによって尊い人となるのではない。行為によって賤しい人ともなり、行為によって尊い人ともなる。

(『スッタニパータ』136)

生まれによって尊い人となるのではなく、行為によって尊い人となる。

この言葉は、カースト制という生まれながらに身分が決まってしまっている人々を感動させ、勇気づけたと言われています。

そしてこの言葉は、現代を生きる我々にとっても、日々の生活やそこでの言動がいかに大切なものであるかを気付かせる言葉でもあります。

我々の人生は、日々の積み重ねで形作られています。日々の生活やそこでの言動が、きちんと正しいものとなっているか。その判断軸となるものが八正道と言えます。

日々の生活やそこでの言動が、きちんと正しいものとなっているかと、確認しながら日々を生きていくことで、深く人生を味わうことのできる見方や心が育まれ、安らかで幸せな方向へ歩んでいくことができる。

そんな人生を生きてほしいというお釈迦様の願いが、この八正道に込められているように感じます。

いかがだったでしょうか。

今回は、四聖諦の四つ目の道諦、そこに説かれる八正道の概要についてお話しました。次回は、八正道の一つひとつについて、もう少し見ていきたいと思います。

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合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献:
・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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・『望月仏教大辞典』/世界聖典刊行協会
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・『岩波仏教辞典』第二版/中村元他
https://amzn.to/3AoOTY4
・『ブッダの真理のことば 感興のことば』/中村元 訳
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・『ブッダの言葉』
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南無阿弥陀仏