近年、核家族化の進行により、家庭に仏壇がない環境で育つ方が増えています。
そのため、家族を亡くしたことをきっかけに、初めて自宅に仏壇を安置する方も少なくありません。
そして、いざ仏壇を用意しようとすると、「どのような仏壇を選べばよいのか」や、「どこに、どの向きで安置すればよいのか」といった疑問が生じることでしょう。
また、すでに家庭に仏壇があられる方でも、「仏具の置き方」や「お供え物の仕方」について、どうしたら良いか分からないという方もおられるのではないでしょうか。
また、「そもそも仏壇とは何か」という根本的な問いを抱く方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、「仏壇の意味や成り立ち」について、ご一緒に考えてみたいと思います。
「仏壇の意味や成り立ち」を知ることで、「仏壇とは何か」や、「私たちが手を合わせる意味」についても考えるご縁となれば幸いです。
それでは、さっそくみていきましょう。
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◆仏壇とは「仏様に手を合わせる場所」

そもそも、「仏壇」とは何でしょうか。
「仏壇」という言葉には、「仏様を安置し、手を合わせる場所」という意味があります。
日本の仏教にはさまざまな宗派があり、それぞれの宗派で特に敬っている仏様などを「本尊」と言います。
浄土真宗では、「阿弥陀仏」を本尊とし、仏壇の中央に安置します。
浄土真宗の宗祖親鸞聖人は、阿弥陀仏という仏様は、常に私たちのことを見て、思いをかけてくださっている仏様だと味わわれています。
私たちは日々の生活の中で、喜びだけでなく、悲しみや苦しみなども抱えて生きています。
阿弥陀仏は、そんな私たちのありのままを受けとめ、思いをかけてくださっている仏様だと言われるのですね。
法話などを通して、そうした阿弥陀仏の温かい慈悲の心を聞くときに、私たちは安心や温もりを感じたり、仏様に対して自然と手が合わさることがあります。
お仏壇を自宅に安置し、阿弥陀仏を本尊としてむかえるということは、家庭の中に、安心や温もりを感じ、心の依りどころとなる場所ができるということでもあります。

本尊の形式ですが、阿弥陀仏の「木像」を安置する場合や、掛け軸に阿弥陀仏の姿が描かれた「絵像」を安置する場合もあります。
また、「南無阿弥陀仏」(なもあみだぶつ)と書かれた「名号」(みょうごう)を本尊として安置する場合もあります。
ここで名号とは、阿弥陀仏の名前のことであり、また阿弥陀仏が私たちへ思いをかけていることを表現した言葉でもあります。
このように、本尊の形式について、浄土真宗では「木像」「絵像」「名号」の三つがあります。
それぞれ表現方法は異なっていますが、いずれも阿弥陀仏のお姿や慈悲の心を表していることに変わりはありません。

また、仏壇の構造は、寺院(お寺)の本堂内陣をもとにしています。
本堂の内陣とは、仏様が安置されている空間のことです。
それを家庭向けに縮小したものが仏壇です。
仏壇とは、「寺院の礼拝空間を家庭用に再現したもの」なのですね。
ですので、仏壇は寺院の礼拝空間と同様に、「仏様を安置し、手を合わせる場所」であると言えます。
◆仏壇とは「先立たれた方を思う場所」

「仏壇」は「仏様に手を合わせる場所」であると同時に、遺族にとっては「先立たれた方を思う場所」でもあるでしょう。
多くの方が、家族を亡くしたことをきっかけに仏壇を家庭に安置なさいます。
遺族の心情と実態から考えると、仏壇は「先立たれた方を思う場所」と言えます。

大切な方を失って、どのように受けとめたら良いか。
これは、人類が昔から抱えてきた大きな問いではないでしょうか。
亡くなった方が大切な方であればあるほど、その方との別れを受けとめることは難しいものです。
ただし、日本では昔から、亡き人を思い、手を合わせることを通して、その方とまたつながり直そうとしてきました。
そうした、亡き人を思い、つながり直していく場として、仏壇は受けとめられてきたのではないでしょうか。
◆仏壇のもつ「仏教と先祖教の二重構造」

ここまでみてきたように、仏壇とは「仏様を安置し、手を合わせる場所」としての意味があります。
また、遺族にとって仏壇とは、「先立たれた方を思う場所」でもあります。
このように、仏壇には「仏様に手を合わせる場所」という「仏教的な要素」と、「先立たれた方を思う場所」という「先祖教的な要素」とが交ざり合っています。
日本の仏壇は、「仏教と先祖教の二重構造」として形成されている。
そうとらえると、「仏壇とは何か」が明確になり、腑に落ちるものがあるのではないでしょうか。
日本の仏壇は「仏教と先祖教の二重構造」をしているというこの考え方は、浄土真宗の考え方というわけではありません。
ですが、仏教の教義的な側面からだけでなく、仏壇文化が形成された歴史や、その時代時代における人々や遺族の心情なども含めて考えていくと、そのような見方ができるかと思います。
長い歴史の中で、仏教の教えと亡き方を大切にする心が交り合い、仏壇や仏壇文化が形成されてきました。
仏壇の起源や成り立ちをみることで、「仏壇とは何か」がより明らかになってきます。
では、仏壇はどのようにして生まれ、どのように形成されていったのでしょうか。
次回は、仏壇の起源や由来についてもみていきましょう。
合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
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◇参照文献
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・『浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典』/浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典編纂委員会
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・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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南無阿弥陀仏