2020年10月2日、本願寺福岡教堂にて講演に登壇をさせていただきました。「コロナ時代のオンライン伝道と心構え」についてお話をしましたので、今回はその内容を紹介させていただきます。

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◆オンラインでの伝道活動

このたびは、お声がけいただき、ありがとうございます。信行寺の神崎修生です。

本日は、「オンラインでの伝道活動」というテーマをいただきましたので、お話をさせていただきます。

この「オンラインでの伝道活動」について、なぜ話す必要があるのかとその背景を考えてみると、やはりこのコロナ禍において、「お寺での参集が難しくなった中でどうすればよいか?」ということだと思います。

伝道活動の多くは、お寺でのご法座を中心におこなわれていますので、お寺に集まることができないとなると、仏縁や仏法聴聞の場(仏教を聞き学ぶ場)がなくなってしまうという事態でもあります。

この「お寺での参集が難しくなった中でどうすればよいか?」というのが、今回の大きな問いの一つだと思います。

その答えであり、仏縁、仏法聴聞の一つの形として、「オンラインでの伝道活動」ということに着目され、今回その事例紹介ということでお声がけいただいたのだと思っています。

私がお預かりしている信行寺でも、3月の彼岸法要の延期から始まり、子ども会、永代経法要、真宗講座の中止など、中々お寺での集まりが難しいことを実感しました。

また、コロナ禍によって見えてきたこともありました。このコロナ禍から見えてきたことは、不測の事態でも対応できる「基本姿勢や心構え」の大切さです。それを平時から養っておくことの大切さに気付かされました。

そこで、そこで私の発表の前半部分では、コロナ禍から見えてきた「平時から大切にしたい基本姿勢と心構え」についてまずお話させていただきたいと思います。

そして、後半には、オンラインでの伝道活動として、「コロナ禍における信行寺での取り組み」についてと、「オンラインの良さと課題」について、お話させていただこうと思います。

◆平時から大切にしたい基本姿勢と心構え

平時から大切にしたい基本姿勢と心構えということで大きく3つ重要な観点があると考えています。

①適応の重要性
②知ることの重要性
③本質の重要性

この3点について、順にお話をさせていただきます。

①適応の重要性

コロナ禍によって改めて思わされたことは、望む望まないに関わらず、世の中は変化するということです。Beforeコロナと比べ、随分と色々なことが変化しました。

お寺においても、参集が難しくなったことや、マスク着用、座席の感覚の保持、飲食を控えるなど、様々なことが変化しました。

諸行無常。全ての物事は移り変わっていくという言葉の通りであることを、改めて思わされました。

それと同時に、状況に応じて柔軟に変化し、適応していくことの重要性も感じました。

様々な業界の状況を見ていると、適応したところは生き残るという現象がおこっているようです。

生き残りや成功には運も勿論ありますが、我々ができることの一つは、状況に応じて適応することでしょう。

②知ることの重要性

状況に適応するには、知ることが重要です。知らないことには、どのような選択をすれば良いのかが分かりません。状況に合っていない行動を選択してしまうこともあります。

何を知ると良いかですが、例えば今回であれば、「感染状況」「門信徒の思い」「先行事例」などについて知っておくと、どのような選択をするのが良いかの判断材料になります。

新型コロナウイルスの「感染状況」でいえば、実効再生産数(コロナが拡大、維持、縮小しているかの指標)や、重症化率、死亡率を始め、お寺の近隣地域の感染状況を把握しておくと現状が理解しやすいでしょう。

また、風邪やインフルエンザなど、他のものとの比較、もともとの世代別死亡率との比較なども冷静におこなえると良いと思われます。

また、お寺がどういう行動をとるかを考える上で、「門信徒の思い」を知ることも重要でしょう。お寺は直接お話を伺える関係性にある方も多いと思いますので、コロナでのご自身の状況の変化や心境について、直接伺ってみるとよいでしょう。

そこから見えてくるものもあるでしょう。私もご法事などで聞き取りをおこなったりして、門信徒の方々の思いを把握しようと心掛けるようにしています。

コロナ感染の恐れや不安をお持ちの方はご年配の方には多いですし、また人と会えない寂しさを抱えている方も多いです。運動不足によって体力や筋力が落ちたという意見や、介護施設や病院へのお見舞いが難しいことへの悲しみ、誰にも見送ってもらえないんじゃないかといった不安など、様々な意見を伺うことができます。

こうした不安や苦悩の言葉から、お寺として何ができるだろうかと考え、どういう行動が望まれているかが見えてきます。感染状況とあわせて、門信徒の思いを知ることも重要なことだと思います。

また、「先行事例」を知ることから見えてくるものもあるでしょう。

例えば、他のお寺や他の業界の対応が参考にもなるでしょう。その際に、情報の取得するメディアや人を決めておくと良いでしょう。例えば、業界の専門誌や新聞、Webニュースや、SNSなどです。人から直接聞くということもあるでしょう。

手前みそですが、我々は「Bラーニング」という寺院関係者向けのオンラインでの学びの場づくりをおこなっています。

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2019年1月に立ち上げ、全国超宗派245名もの寺院関係者の方々が、現在ご参加くださっています。

「Bラーニング」では、日々、寺院関連のニュースの紹介や、寺院の事例など有益な情報を発信しています。また、月に1回程度、オンラインでの勉強会も開催しており、オンライン講義の動画配信もおこなっています。

コロナ関連でも、オンラインの勉強会を2回すでに開催しました。

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1回目は5月に、元厚生労働省で福岡県知事選にも出馬された武内和久さんをお招きして、コロナから見えてきたことについてお話いただきました。

2回目は9月に、『寺院消滅』や『無葬社会』などの著書でも著名な僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳さんをお招きして、コロナの見立てとお寺にできることを伺いました。

是非、Bラーニングご関心がある方は、ご参加ください。

ここで言いたかったことは、知ることの重要性です。コロナ対策をはじめ、先行事例について共に学び合ったり、知ることでも、自坊がどのようなことをおこなっていけばよいかの見通しになると思います。

また、先行事例ということでいうと、過去の感染症流行時の世の中の状況を調べたり、親鸞聖人の生き方に学ぶということも宜しいかと思います。

親鸞聖人在世時は、騒乱や度重なる飢饉などが起きた時代でもあり、その中で聖人がどのような生き方をなさったかを知ることは、我々の灯にもなることでしょう。現代に、親鸞聖人がおられたらどのようなことをなさるだろうかと考えてみるのも良いかもしれません。

「世の中安穏なれ。仏法ひろまれ」という親鸞聖人のお言葉は、仏法ひろまれという活動が、多くの方あg阿弥陀如来のお慈悲に遇い、救われていくことを表現されている。つまり、仏法ひろまれということが、我々、真宗の僧侶、寺院関係者にとって重要なことですよと教えていただく、強いメッセージのように私は受け止めています。

このお言葉が、「仏教やお寺をもっと身近に」という私の活動の支えになっています。

③本質の重要性

平時から大切にしたい基本姿勢と心構えの3つ目は、本質の重要性です。

状況に応じて変化し、適応する時に、本質的なものは何かも同時に考える必要を感じています。

何でも変えるというよりは、本質的なものは何か、変えないほうが良いものは何かを見極め、形やあり方などの表面的な部分を変化させていく必要性を感じます。

例えば、仏様や仏法、ご本願は不変ですが、言葉や伝える方法は時代や人に応じて変えた方がいいでしょう。それらに応じた伝える方法の一つが、今回のオンラインの伝道活動ということになるかと思います。この方法自体に善悪はなく、状況に応じて変えるべきものです。

ただし、仏様や仏法、ご本願は変えてはならない本質的なものです。変えるべきところと、変えないでおく本質的な部分との見極めが重要になるかと思います。

◆コロナ禍における信行寺での取り組み

ここからは、コロナ禍における信行寺での取り組みについて、特にオンラインでの取り組みのことをお話をさせていただきます。

私が、オンラインでの発信を本格的に始めてから、まだ半年になります。
コロナ禍により、お寺の集まりが難しくなったこともあり、一気にオンライン活用を進めました。

オンラインの取り組みは、大きく2つおこなっています。

①ブログや動画の配信
②オンライン朝会

それぞれについて、お話させていただきます。

①ブログや動画の配信

◆流れ

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ブログや動画の配信の流れですが、まずブログを執筆します。ブログは、Wordpressかnoteで記事をUPします。

次に、ブログで書いたものをもとに、動画を撮影し、YoutubeでUPします。

これらを、インスタやツイッター、フェイスブック、ラインなどのSNSで拡散します。

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ご法事など門信徒の方々と直接お会いする場面でも、法話や雑談に絡めて、ブログや動画配信のことやその内容についてお話しています。

また、お寺からの発行物やポスター、掲示板などでも、発信活動を告知しています。

すると、門信徒の方々に知っていただけ、関心や興味を持っていただく方が出てきます。その中から、チャンネル登録やフォローにつながり、継続的な仏縁が育まれていくという流れになっています。

◆目的・対象者
ブログや動画配信の目的ですが、オンラインの仏縁づくりです。仏縁の機会を増やし、深めるというものです。

対象者は信行寺の門信徒の方々に向けて発信しています。しかし、それ以外の方にもご覧いただいています。

視聴者層は、50代、60代の方が多いようです。
親が亡くなったり、亡くなるかもしれないという中で、お寺や仏事のことを知っておこうとする方や、仏教などへの関心がわく方が多いようです。

◆発信内容

発信内容は、門信徒の方々の関心や疑問に応えるものや、仏縁を広げ、深めるような内容です。具体的には、仏事作法や真宗入門講座などや、お経の動画、お寺の活動のレポートなど様々です。お寺で日ごろからおこなっていることや、今持っている知識など、ある程度何でも発信する材料になります。

門信徒の方々に、分からないことや知りたいことなどを直接伺って、それに応えるように書く場合もあります。

◆効果

ブログや動画配信の効果ですが、まず門信徒の方々から喜びの声をいただくことが多くなりました。

「Youtube見ましたよ」と声をかけてくださる方、「ご自宅のお仏壇の前で、お経の動画に合わせて、一緒にお参りしました」という方、「仏事のことなど何も分からないことばかりなので、動画で見ることができて嬉しいです」という方。

「親が亡くなったばかりで、お寺のこと、浄土真宗のことが知れて良かったです」という方。「動画を見ることが日々の励みになっています。これからも道を照らしてください」というようなもったいないお言葉までいただきました。

また、ご家族が亡くなられそうな中、お寺とお墓を探しておられ、SNS経由で信行寺を知ってご来寺され、そこからご葬儀をお勤めし、ご遺骨を納骨させていただくようなご縁が生まれたこともあります。

また、テレビや新聞、ラジオでの報道取材や、Webメディアでの取材など、こちらからプレスリリースはしていませんが、半年で10回以上の取材がありました。

そして、発信していることで、僧侶とは何をしている人か、どういうことができるのかが理解され、講演やイベント出演も続きました。

◆気付き

本格的にはじめて半年ですが、門信徒の方々の喜びの声が聞こえてきたり、新たな仏縁が生まれたり、これまでになかったような種類の仕事が増えてきたり、色々な効果が出てきているように思います。

私自身、特に優れたところがあるわけでもありませんが、発信をすることで、どんなものを持っているのかが可視化されるということもありそうです。

また、自分が持っている知識なども、実は他から見ると価値があるものもあったり、発信することで門信徒の方々の関心や疑問が見えてもきます。

そして、発信活動は、それぞれの寺院がおこなってもいいものだと思います。それぞれの寺院にご門徒さんがおり、その方々は、自分のお寺の住職さん、坊守さんなどからお話が聞きたいからです。

他にも、動画などは、すごい分量、情報量を伝達できるメリットもあります。

オンラインの発信は、ご高齢の方にはご覧いただけない場合も多いですが、ブログで書いたものは、プリントして配付できますし、動画はDVDに焼いて配付もできます。このように、2次利用、3次利用が可能なのもよいところです。

覚如上人が書かれた『御伝鈔』、蓮如上人が書かれた『御文章』も、その時代に応じた伝道活動だったことだと思います。インターネットはあくまでツールであるので、できる方がどんどんと活用して発信をしていくと良いかと思います。

②オンライン朝会

コロナ禍における信行寺の取り組み、2つ目は「オンライン朝会」です。オンライン会議システムのZoomを使っておこなっています。

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信行寺版と全国版とをおこなっています。

信行寺版では、お経をとなえ、ストレッチ、法話と対話をおこなっています。2週間に1回、朝7時から30分間。年齢層は、30代~60代で、毎回5~10名の方がかわるがわるご参加くださっています。これまでお寺には来られなかった方、また東京の方など、オンラインだからこそ参加くださるという新たなご縁が育まれています。

ご参加者からは、「心が落ち着く」「清々しい朝ですっきりする」「法話などで日頃考えないことを考える」といったご感想をいただいています。

コンセプトとしては、素のままの自分でいていい、ここでは頑張らなくてもいい、リラックスできる居場所にしてもらえればと思っています。

全国版では、健康を目的に、ストレッチや法話、対話をおこなっています。
全国の超宗派のお坊さんが、毎朝日替わりで開催しています。

7時から20分間。毎朝150~200名が参加され、多い時には250名くらいが参加される時もあります。コロナを期にオンラインではじめ、5月頃から、のべ2万人を超える方がご参加くださっています。

「健康になった」「落ち着く、癒される」「早起き、健康の習慣ができた」「これがないとだめ」など、多くの喜びの声をいただいています。

◆オンラインの可能性

次に、オンラインの良さと課題について、先述の気付きの部分で触れていないことをお話します。

オンラインでは、仏教やお寺、僧侶の存在が身近になるというメリットがあります。オンラインは、誰でも、どこでも、いつでもアクセスできるからです。

現状、お寺とご縁を持ちたいとか、仏教に興味があるという方はおられますが、接続点や意味合い、形があっていないと感じることがあります。

接続点がお寺だと、敷居が高く、お寺に入りづらい、参加しずらい、初心者にはハードルが高いということがご意見として伺います。その点、オンラインは敷居がないので、新たなご縁が生まれやすく、またご縁も深まりやすい傾向にあります。

また、お寺での行事など、意味合いや形が時代にあっていない場合もあります。僧侶、お寺に直接だと意見をしにくいところも、オンラインだと本音を伺いやすいので、その本音から、今にあった意味合いや形を探れるところがあるかと思います。

また、お寺に来ることができない層(忙しくて足が向かない、介護がある、高齢で家から出るのが難しい)と仏縁ができる可能性も感じます。ご年配の方には、お子様やお孫様を通じて、HPなどご覧いただけるように勧めています。

門信徒の次世代、次々世代とのご縁も、インターネットを通じてうまれています。

◆オンラインでの課題

オンラインでの課題もありますが、それはそのままオフラインの良さとも言い換えることができるところもあります。つまり、実際にお寺に来る良さ、直接会う良さが、オンラインの活動を通して見えてきました。

やはり思うことは、実際に会ったり、お寺で時間を共にしたりなど、体験価値はオンラインはリアルには適いません。お寺に来ること、実際に会って話すことの価値は高まっています。

ここから思うことは、お寺での参集の場をどう再開していくかということです。感染症対策や門信徒の不安に配慮しながら、できることをおこなっていくことが重要だろうと思います。

そして、オンライン、オフラインを駆使して、仏法繁盛、お念仏繁盛、自他の抜苦与楽の活動を行うことが大切だと考えます。

本日は、最後までお聞きいただき、ありがとうございました。

浄土真宗本願寺派 信行寺
神崎修生

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