「仏教解説」では、仏教の考え方をできるだけ分かりやすく、ご紹介しています。仏教の考え方を通して、皆様の仕事や生活がより良いものとなったり、日々を安らかに穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。

今回は、八正道の中の六つ目、正精進(正しい努力)についてご紹介します。

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◆正精進

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八正道の六つ目の正精進とは、正しい努力のことです。

努力という言葉からは、色々なものが考えられます。ですが、正精進における努力とは、「さとりへの道を妨げる悪を断ち、さとりへの道を進める善を励むこと」だと言われます。

悪を断ち、善を励む(善を勤める)ということで、正精進とは、正断(しょうだん)とも、正勤(しょうごん)とも言われます。

さて、正精進の正しい努力とは、さとりへの道を妨げる悪を断ち、善を励むことですが、具体的には、四正勤(ししょうごん)という四つのことについて努力することだと言われます。

◆四正勤

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四正勤(四つの正しい努力)とは、このようなものです。

一つ目は「まだしていない悪いことは、しないよう努力すること」。二つ目は「いま自分がもっている悪いところは、なくすよう努力すること」。三つめは「まだしていない善いことは、するよう努力すること」。四つ目は「いま自分がもっている善いところは、増やす(維持する)よう努力すること」。

この四正勤のように、正精進の正しい努力とは、簡単に言えば、「悪いことはせず、善いことをするよう努力する」ということです。

過去・現在・未来において、「悪いことはせず、善いことをするよう努力する」ことが、四正勤であり、正精進と言えるかと思います。

「悪いことはせず、善いことをするよう努力する」というと、何だか子どもじみたものだと思われるかもしれません。

しかし、先ほど述べたように、ここでの悪いこと、善いこととは、さとりへの道に通じているかどうかという前提があります。

ただ「悪いことはせず、善いことをしましょう」「努力をしましょう」ということではないのですね。

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正精進とは、「さとりへの道を妨げるような悪いことはしないよう努力すること」であり、「さとりへの道を進めるような善いことをするよう努力すること」です。

最初に八正道とは、幸せに生きていくための道であり、幸せに生きるための実践方法だと申しました。

「幸せ」がそのまま「さとり」だとは、本来は言えないのですが、分かりやすくここでは、いったん「幸せ」という言葉を使います。

そうすると、正精進とは、「幸せを妨げるような悪いことはせず、幸せにつながるような善いことをするよう努力すること」と言えるでしょう。

そして、正精進とは正しい努力のことでした。正しい努力をするからこそ、幸せにつながるのであり、正しくない努力をしても幸せにはつながらないわけですね。

では、さとりや幸せにつながる正しい努力とはどういうものでしょうか。

「悪いことはせず、善いことをするよう努力する」という、ここでの善悪とは何でしょうか。

◆三毒の煩悩

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正精進における悪(悪いこと)とは、具体的には、貪欲(とんよく)、瞋恚(しんに)、愚痴(ぐち)の三毒の煩悩が挙げられています。

三毒の煩悩は、以前にも出てきましたね。覚えていらっしゃいますでしょうか。煩悩を代表する三つです。

貪欲とは、もっと欲しいと思う貪りの心のことで、好むものを近づけよう、手に入れようとするものです。執着と言ってもいいですね。

瞋恚とは、怒りの心のことで、嫌いなものを遠ざけようとするものです。

愚痴とは無明とも言って、自分の思い通りになれば喜び、思い通りにならなければ怒るというような「自分本位に生きている状態」や「自分本位に気付かずに生きている状態」のことを言います。

仏教では、貪欲、瞋恚、愚痴に代表される煩悩が、私たちの抱える苦悩や迷いの根本原因であるとされています。

苦悩や迷いの原因が煩悩であることは、四聖諦(ししょうたい)の集諦(じったい)や、八正道の一つ目の正見で学びました。

▼四聖諦②集諦

【仏教解説】第14回_四聖諦②集諦_苦しみの原因とは | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

▼八正道①正見

【仏教解説】第17回_八正道①正見(正しい見方) | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

とにかく、正精進ではこうした「貪りや怒りにまかせた、自分本位の方向性の努力を良くないこと」とされています。

八正道の二つ目の正思惟でも、出欲思惟という世俗的な欲から離れる思いや、無瞋思惟という怒らない思いが、私たちの苦悩を和らげ、幸せにつながることを学びました。

▼八正道②正思惟

【仏教解説】第18回_八正道②正思惟(正しい思考) | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

では改めて、どのようなものが正精進(正しい努力)と言えるでしょうか。

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例えばですが、正精進(正しい努力)とは、「自分だけが良ければよいのではなく、自分とご縁がある方も良くなるような、自利利他の方向性での努力」ということが言えるのではないでしょうか。

他にも例えば、「自分本位の貪りや怒りから衝動的に行動するのではなく、他者への思いやりや慈しみなど、慈悲の心に基づいた努力」とも言えるのではないでしょうか。

これらは一例ですが、今回の話を参考にしていただきながら、どのような努力が善い方向性の努力なのか、ご自身の生活や仕事などに引き寄せて、是非考えてみていただけれと思います。

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いかがだったでしょうか。今回は、八正道の正精進(正しい努力)についてご紹介致しました。次回以降も、八正道の続きをご紹介させていただきます。

合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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▼前回の記事
【仏教解説】第21回_八正道⑤正命(正しい生活) | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

◇参照文献:
・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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・『望月仏教大辞典』/世界聖典刊行協会
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