親御様が亡くなられたり、ご病気になられたりして、ご自分たちの代になった時に、「お寺に関することが分からず困りました」という声を伺うことも多いです。また、お寺とご縁が深い方でも、法話は聞いていても、仏教や浄土真宗などの基本的なことについて、意外と知らないという方もおられるかもしれません。
そこで今回は、浄土真宗の概要が示された「浄土真宗の教章」について、ご一緒に見ていこうと思います。「教章」を見ると、浄土真宗の概要について知ることができます。
今回の話が、お寺や仏教のことについて知るきっかけになれば幸いです。また、お寺とのご縁が深い方でも、改めて知ることもあるかもしれません。私も資料をつくりながら、改めて学ばせていただきました。
それでは、さっそく「教章」を通して、浄土真宗の概要を見ていきましょう。今日は時間の関係で、「教章」とは何かということと、「教章」の中の「宗名」について見ていきます。
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さて、「浄土真宗の教章」とは、浄土真宗の概要が示されたものです。
「教章」は、昭和42年(1967年)に、親鸞聖人のご誕生800年、立教開宗(この宗が始まって)から750年を機とし、その少し前に定めたものだそうです。今年(2023年)は、ご本山の西本願寺で、親鸞聖人のご誕生850年、立教開宗800年の法要(行事)がおこなわれています。ですので、この「教章」ができてから、今は50数年が経過していることになります。
本願寺の二十三代門主の勝如上人が、初めて「浄土真宗の教章」を制定され、その後、平成20年(2008年)に、二十四代門主の即如上人が、現在の教章を新たに制定されました。ちなみに門主とは、浄土真宗本願寺派という宗派の代表の方です。宗祖の親鸞聖人から、代々その子孫が門主を継承し、血筋が続いているそうです。
「浄土真宗の教章」は、『日常勤行聖典』というお経の本の最初の方に記載されていますので、お持ちの方はご覧になってみてください。また、浄土真宗本願寺派のホームページでもご覧いただけます。
▼浄土真宗本願寺派HP
https://www.hongwanji.or.jp/info/
「教章」を見ていただくと、「宗名」(しゅうめい)は「浄土真宗」とあります。そして、「宗祖」という部分には、「親鸞聖人」と書かれていますね。「宗派」の名前は「浄土真宗本願寺派」。「本山」は、正式名称は「龍谷山 本願寺」で、通称「西本願寺」とも呼ばれています。続いて、「本尊」や「聖典」。
また、「教義」「生活」「宗門」という項目についても記されています。
このように、「浄土真宗の教章」には、浄土真宗の概要が示されています。
さて、「教章」の中身を見ていきましょう。まず、「宗名」(しゅうめい)は、「浄土真宗」です。
「宗名」とは、この宗の名前のことです。つまり、「宗名」のところでは、私たちの宗は、「浄土真宗」であるということが示されています。
日本の伝統仏教でも、様々な宗があります。例えば、「天台宗」や「真言宗」、「曹洞宗」や「臨済宗」、「浄土宗」や「日蓮宗」など、一度は耳にしたことがあるような宗が色々とありますね。
ではその中で、私たちの宗は何宗かと言うと、「浄土真宗」であるということが、この「宗名」のところに示されています。
「宗名」と似たものに「宗派名」があります。これは、同じ宗の中でも宗派が違う場合もあるため、「宗名」と「宗派名」とは項目が分けられています。
例えば、「宗名」が同じ「真宗」でも、東本願寺を本山とする「真宗大谷派」と、仏光寺を本山とする「真宗仏光寺派」では、同じ「宗」でも「宗派」が違います。このように、同じ宗でも宗派が違う場合がありますので、「宗名」と「宗派名」は項目が分けられています。
ちなみに、私たちの宗の名前は「浄土真宗」で、宗派名は「浄土真宗本願寺派」です。
昔は、俗称で「一向宗」と呼ばれていたそうです。一向一揆という言葉を聞かれたことがあるかと思います。本願寺の門徒が中心となって起こした一揆とも言われ、そこから一向一揆と呼ばれたようです。
「一向宗」の「一向」とは、「二心なく一心に阿弥陀仏に向かい拝む」という意味の言葉です。本願寺の門徒には、そのような特徴が見られたことから、俗称で「一向宗」と呼ばれていたそうです。
しかし、俗称の「一向宗」ではなく、「浄土真宗」という宗名を公称にしたいと、東西本願寺より江戸幕府に願い出たことがあったそうです。しかし、それに対して、「浄土宗」の主に増上寺が反対したと言われています。「浄土真宗」という名前は「浄土宗」と同じ意味だから、「浄土真宗」という宗名は認められないとのことでした。そうしたこともあり、江戸幕府は「浄土真宗」という宗名を検討中とし、その時点では許可しませんでした。
明治時代に入り、新政府に対して、真宗各派が「真宗」と公称させてほしいと願い出て、認められます。その後、西本願寺は「浄土真宗」と名乗るようになり、今に至っています。
今は、「真宗十派」と言われるように、浄土真宗系、真宗系の宗派は、大きく10あるとされ、他にも諸派があります。「真宗」と言っても、「浄土真宗」と言っても、同じ系統の宗になります。
「浄土真宗」という宗の名前の由来は、宗祖である親鸞聖人の書物の中に、「浄土真宗」という言葉が多く出てきます。そこからとって、「浄土真宗」という宗名にしたと言われています。
「浄土真宗」という言葉の意味は、『浄土真宗辞典』によると、「往生浄土を説く真実の教え」という意味があります。浄土とは、阿弥陀仏という仏様の国のこと。往生とは、その阿弥陀仏の浄土に往き生まれることです。
ですから、「浄土真宗」という言葉は、「阿弥陀仏の浄土に往き生まれることを説く真実の教え」という意味の言葉になります。「浄土真宗」という「宗名」が、そのままこの宗の教えの内容も示しています。
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今回は、浄土真宗の概要が示された「浄土真宗の教章」について、特にその中でも、「教章」とは何かと、「宗名」の部分を中心に見ていきました。内容的に、初めて知ることも結構あったのではないでしょうか。
今回の話が、浄土真宗やお寺について理解を深めるご縁となったのであれば幸いです。
合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生