皆様、こんにちは。まもなくお盆がやってきますね。お盆とは、一般的には先立って往かれた方々、ご先祖をお迎えして供養する季節や行事とされています。

お盆は仏教行事だと思われている方が多いと思いますが、実は習俗という、昔から伝わっている風習や習慣としての側面があります。仏教的な要素と習俗的な要素が入り混じっているのが、お盆であると言えます。

今回の前半では、そうしたお盆の仏教的な由来と習俗的な由来をご紹介して、お盆とは何かについて見ていきます。

また、浄土真宗においてお盆とは、習俗的ものとは違った考え方もしています。ですので後半では、浄土真宗におけるお盆の意味合いや位置づけも併せてご紹介します。そして、それがそのまま、浄土真宗のお盆のお供え物の仕方にも通じていますので、最後に、お盆の供え物やお飾りの仕方についてもお話します。それでは見ていきましょう。

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◆お盆の仏教的な由来

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まずは、お盆の仏教的な由来について見ていきましょう。

お盆の仏教的な由来は、『仏説盂蘭盆経』(ぶっせつうらぼんきょう)というお経に記された内容をもとにしていると言われます。そのお経の内容を、簡単にお話します。

お釈迦様の弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)は、ある時、亡くなった母親が餓鬼道(がきどう)という世界で、飢えに苦しんでいることを知ります。食べ物を手にしても、口に運ぶ寸前に消えてしまい、食べることができません。

母親が食べ物も飲み物も口にすることができず、苦しんでいることを知って目連尊者は悲しみ、何とか母親を助けることができないかと思い、お釈迦様に相談します。するとお釈迦様は、安居(あんご)という僧侶が修行する最終日である7月15日に、食べ物などをお盆に盛ってお供えし、修行僧たちを供養しなさいと言われます。目連尊者はお釈迦様に言われた通りにし、それによって母親は飢えから解放されます。

『仏説盂蘭盆経』とは、簡単に言うとこのような内容です。お盆に食べ物を盛ってお供えするとか、7月15日に供養するというような内容が、今のお盆に通じるところがあります。

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ちなみにお盆は、地域によって7月盆と8月盆とがありますね。もともと旧暦では、7月にお盆が行われていたようですが、明治時代に入り、暦が旧暦から新暦に替わります。その際に、旧暦の7月のままお盆をおこなう地域と、新暦に直した8月にお盆をおこなう地域とに分かれたようです。

またお寺によっては、お盆に「盂蘭盆会」(うらぼんえ)という行事をおこなうところもあります。信行寺でも、毎年8月13日と15日に「盂蘭盆会」をお勤めしています。

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「盂蘭盆会」という言葉は、『仏説盂蘭盆経』から取ったものでしょうが、「盂蘭盆」という言葉には、どういう意味があるのでしょうか。

以前は、「盂蘭盆」とは「逆さづりにされた苦しみ」という意味があると言われていました。ですが近年では、イラン語のウルヴァンが語源で、「死者の霊魂」を意味し、「死者の霊魂をまつる祭祀」であるという説が出てきています。

そうだとすると「盂蘭盆会」とは、「死者の霊魂をまつる法要」という意味合いになり、一般的なお盆の意味に近いのではないかと思います。

またちなみに、『仏説盂蘭盆経』は、内容的に中国の儒教などの倫理観が混じっていて、お経と言えるのか疑問が生じています。ともあれ、お盆の仏教的な由来は、『仏説盂蘭盆経』というお経に記された内容をもとにしていると言われています。

◆お盆の習俗的な由来

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次に、お盆の習俗的な由来について見ていきましょう。習俗とは、ある地域に昔から伝わっている風習や習慣のことです。

先程も言いましたが、仏教行事と考えられているお盆などの行事には、習俗的な要素が多分に入り混じっています。日本への仏教伝来が、西暦500年代と言われますが、それより以前から、日本にはお盆のような風習があったという説があります。

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先祖の霊などの祖霊(それい)が、日頃はあの世にいて人々をまもってくれていて、毎年の正月やお盆の時期に祖霊がかえってくるという考え方が、日本には昔からあるようです。

先祖の霊がかえってくるという考え方は、まさにお盆の「迎え」という考え方と一緒です。そして、一定期間がすぎれば、またあの世にかえっていくとされているのですが、これは「送り」の考え方と一緒です。

そしてまた、「迎え」と「送り」の時に、火を焚いて迎えたり送ったりしていたそうです。これが、未だに行われている「迎え火」や「送り火」の由来とも言われています。

このようにお盆とは、仏教的な要素だけではなく、習俗的な要素が多分に入り混じってできあがったものであることがお分かりいただけるかと思います。いやむしろ、習俗的な要素に、仏教的な要素が加わってできあがっていったものと言えるかもしれません。

◆仏教と先祖教

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お盆の習俗的な考え方のように、既に亡くなった祖先が、生きている人々の生活に関わっていると考え、先祖を祀ることを「祖霊信仰」や「先祖崇拝」と言います。

そして、お盆は表面的には仏教で、本質的には祖霊信仰に基づいて成り立っているように見えます。

またこれは、お盆だけに言えることではなく、日本のお寺には仏教という要素と、こうした「祖霊信仰」や「先祖崇拝」のような、いわゆる先祖教という要素が入り混じっています。

日本に仏教が伝来し、長い年月の中で、人々の求めに応じながら仏教が変容し、土着化していった歴史があります。または、お寺側としては仏教を発信していても、受け手側の人々のほうが仏教を先祖教として捉えてきたこともあったでしょう。

いずれにせよ、このようにお盆のような仏教行事は、仏教的な要素だけではなく、その地域の風習や習慣といった習俗的な要素が多分に入り混じっています。そのため、仏教的な視点から見ていくだけでは、お盆の全体像や本質が見えてきません。

お盆は、仏教と先祖教の要素が入り混じってできあがっている。そう捉えるだけで、随分と見え方が変わってくるかと思います。

◆お盆の歴史

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さて次に、お盆の歴史を見てみましょう。真宗大谷派の僧侶である蒲池勢至(がまいけせいし)先生が書かれた『お盆のはなし』という本に、詳しく書かれていますので、簡単にまとめてご紹介します。

先ほど言ったように、お盆のような風習は、日本への仏教伝来以前からあったと想像されますが、「盂蘭盆会」としてお盆の行事が勤められるようになったのは、西暦600年代だそうです。『日本書紀』には『仏説盂蘭盆経』の内容をもとにした「盂蘭盆会」が、お寺でおこなわれた様子が記されています。この時期には、天皇や貴族たちを中心におこなわれていたようです。

西暦1100年代前半には、7月14日にお盆に食べ物を盛ってお供えし、拝んだ後、「盂蘭盆会」をおこなっているお寺へお盆を送ったと、公家の日記などに記されています。民衆においても、こうしたことが行われていた様子が一部記されています。ちなみにこの時期が、浄土宗の開祖である法然聖人の誕生の少し前くらいです。

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鎌倉時代には、お盆に灯籠を灯して、先祖の霊などを迎える行事が盛んになってきます。ちょうど、親鸞聖人が生きた時代頃です。もっと以前から「迎え火」はおこなわれていたようですが、灯籠を使うなど形が整ってきます。

室町時代に入ると、お盆を迎える時にお墓参りが行われるようになります。1400年代には、お盆は随分賑やかになり、念仏踊りや灯籠の寄進なども盛んにおこなわれるようになります。この時はまだ、各自宅にお仏壇がある状況ではありませんでしたが、家に霊供膳(りょうぐぜん)と言われるお供えものをして、亡くなった人を供養したり、家の外に灯籠を灯し、灯籠を中心に念仏をとなえて踊って供養することがおこなわれていたようです。浄土真宗の中興の祖 蓮如上人が生きた時代頃です。

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江戸時代に入り、日本各地にお寺が立てられ、家にお仏壇が置かれるようになります。そして、現在おこなわれているようなお盆の行事ができあがっていきます。お墓や川や海で迎え火を焚き、お仏壇や盆棚にお供え物をして先祖を供養し、また送るという儀礼が成立していきます。

このように、長年かけてお盆の行事が形づくられていきます。お盆の歴史を知ると、お盆がかなり昔からあることがお分かりいただけるかと思います。

ここまでが今回の前半の内容になります。(続きは後半をご覧ください)

合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献
・『浄土真宗聖典』注釈版/浄土真宗本願寺派
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・『浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典』/浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典編纂委員会
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・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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・『浄土真宗本願寺派 法式規範』/浄土真宗本願寺派 勤式指導所
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・『浄土真宗 必携』み教えと歩む/浄土真宗必携 編集委員会
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・『お盆のはなし』/蒲池勢至
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・『真宗民俗史論』/蒲池勢至
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・『勤行意訳本』/神崎修生
(『勤行意訳本』については、信行寺までお問い合わせください。 (
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