今回は、浄土真宗でよくおとなえされる「重誓偈」というお経のとなえ方について解説致します。
お経本をお持ちの方は、お手元にご準備いただき、となえ方を確認しながらご覧いただければと思います。
「重誓偈」は、比較的短いお経です。
身近な方が亡くなられたりして、ご自宅のお仏壇でお経をとなえてみようと思われる方や、お経に関心がある方など、こちらを参考にしていただきながら、ご自身でもお経をおとなえいただけますと幸いです。
なお、こちらのお経のとなえ方は、浄土真宗本願寺派（本山は西本願寺）のものになります。
▼動画もあわせてご活用ください。となえ方をご確認いただけます。
◆「重誓偈」の導入
さて、それでは「重誓偈」のとなえ方を解説していきます。
まず、お経本を開く際ですが、お経本を両手で持ち、額のあたりにいただいてから、「重誓偈」のページを開きます。
では、「重誓偈」の最初のページをご覧ください。
ページの右上に鏧二声（きんにせい）という言葉と、丸が二つ書いてあります。
これは、鏧を二回打つという意味です。
鏧を二回打ってから、お経をとなえます。
一句目の「我建超世願」（がごんちょうせがん）の上に、黒い丸があります。
この黒い丸のある一句目は、一人でとなえます。
例えば、ご法事やお寺での法要の時などは、僧侶の一人が「我建超世願」と一句目をとなえ、他の方は二句目の「必至無上道」（ひっしむじょうどう）からご一緒にとなえます。
ご家族などで複数名でとなえる場合は、お仏壇の前に座っている方が鏧を打ち、一句目をとなえ、他の方は二句目からとなえます。
お一人でとなえる場合は、ご自身で鏧を打って、一句目からとなえます。
「重誓偈」の音の高さですが、一応決まりがあります。
お経の最初の音の出始めの高さを、出音（しゅっとん）と言います。
「重誓偈」の出音は、ハ長調ミの音になります。
厳密にいうと、現代音楽のミの高さよりも若干音が低いのですが、ご家庭でとなえる分にはそこまで気になさらなくても結構かと思います。
またお経は、男性の声の高さを基準にして音が設定されているとも言われます。
女性や声が高い方などにとっては、声が出しにくい音の高さかもしれません。
その場合は、ご自身のとなえやすい音の高さでとなえていただいても結構です。
ただし、ご法事の時など、複数名でとなえるような場合は、できるだけ僧侶がとなえる音の高さに合わせて、となえていただいたほうが音が揃い、綺麗に聞こえるかと思います。
◆経段のとなえ方
さて、「重誓偈」の文字の右側を見ますと、「引」という印があります。
この「引」という印は、「引」とある文字の音を引っ張ってとなえる、伸ばしてとなえるという意味です。
一句目で言うと、「我建超世願」の「願」の「が」の右側に「引」という印があります。
ですので、「願」の「が」の部分を伸ばしてとなえます。
二句目も「必至無上道」の「道」の「ど」の右側に「引」という印がありますね。
ですので、「道」「ど」の部分も伸ばしてとなえます。
次に、四つ目の句の「誓不成正覚」（せいふじょうしょうがく）ですが、「誓」と「不」の間に棒線があります。
ここの部分は、「せーいふ」というように、「誓」の部分を長く、「不」の部分を短くとなえます。
この「誓不」というとなえ方が、「重誓偈」では三か所出てきます。
先ほどの「引」という印と、今の「誓不」という部分を注意していただければ、他の部分はそれほど難しくなく、おとなえいただけるかと思います。
次に、「重誓偈」の経段というお経の部分の最後のページをお開けください。
最後から二句目のところに、「次第にゆっくり」という表記があります。
この表記の通り、最後の二句はゆっくりとなえます。
そして最後の「当雨珍妙華」（とううちんみょうけ）の「華」の左下に丸があります。
これは、鏧を一回打つということです。
◆念仏のとなえ方
それでは、次の念仏とあるページをご覧ください。
「南無阿弥陀仏」という念仏が六句記してあります。
こちらも「重誓偈」の冒頭と同じように、黒い丸のある最初の一句は一人でとなえます。
複数名でとなえる場合は、他の方は二句目からご一緒におとなえください。
そして、一句目の「南無阿弥陀仏」の「仏」左下に丸があります。
これも、鏧を一回打つということです。
最後の六句目の「南無阿弥陀仏」の「仏」の左側にも、同じように丸があります。
これも、鏧を一回打つということです。
ちなみに、南無阿弥陀仏というお念仏ですが、浄土真宗本願寺派では、「なもあみだぶつ」と言います。
ですが、お念仏を口に出しておとなえする時は、「なまんだぶ」や「なまんだぶつ」ととなえることが多いです。
ここでは、「なまんだぶ」となっておりますので、そのようにおとなえください。
◆回向のとなえ方
次に、回向のとなえ方を見てみましょう。
こちらも黒い丸のある「願以此功徳」（がんにしくどく）の一句は一人でとなえます。
複数名でとなえる場合は、他の方は二句目の「平等施一切」（びょうどうせいっさい）からご一緒におとなえください。
最後の「往生安楽国」（おうじょうあんらっこく）のところに三か所丸があります。
これは、鏧を三回打つという意味です。
二つ目の丸が少し小さく表記してありますが、この部分は若干小さく鏧を打つことを表しています。
ここまでとなえ終わったら、お経本を閉じて、額のところでいただきます。
そして、合掌をして、お念仏をとなえ、礼拝するという流れになります。
◆ご一緒にとなえてみる
では、「重誓偈」を通しておとなえしてみましょう。
動画にあわせて、ぜひご一緒におとなえしてみてください。
▼【お経となえ方解説】重誓偈
◆
いかがだったでしょうか。
今回は、「お経となえ方解説」ということで、「重誓偈」のとなえ方について、解説致しました。
日ごろは、仏様にお線香をお供えして、手を合わせるというだけの方も、今日はお経をおとなえしてみようかなと思われる時や、どなたかの月命日の日とか、お正月やお盆、お彼岸といった季節の節目などから、まずはおとなえしてみるのはいかがでしょうか。
それから徐々に、お経をとなえることを習慣にしていただけますと幸いです。
合掌
福岡県糟屋郡 信行寺（浄土真宗本願寺派）
神崎修生
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◇参照文献：
・『勤行意訳本』／神崎修生
（『勤行意訳本』については、信行寺までお問い合わせください。 https://shingyoji.jp/ )
南無阿弥陀仏