拠り所としてのお寺。供養の相談窓口

先日、鹿児島市にある浄土真宗本願寺派の妙行寺様に伺い、お寺での取り組みについて教えていただきました。

「地域の拠り所としてのお寺」になろうと、素晴らしい取り組みをしておられましたので、ご紹介させていただこうと思います。

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妙行寺様では、様々な相談事の窓口になっておられました。

特に、お墓やご葬儀、お仏壇、また介護や健康に関することまで、お寺が相談の窓口となっておられました。

近くに安心して相談できる場所があることで、お寺の門信徒をはじめ、地域の方々の中にも、ほっとされている方は多いと思います。

お寺がそうした相談の窓口となり、「地域の拠り所としてのお寺」となろうとされていることが、とても素晴らしいと思いました。

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さて、核家族が普通の現代では、お墓やご葬儀やお仏壇のことといった、いわゆる供養のことに関して、どうしたら良いか分からないという方も多いのではないでしょうか。

そして、こうしたことは死別直後に、一気に判断を求められます。たとえ病気であったとしても、亡くなる時は突然訪れますね。

ご葬儀はどうするのか。お墓や納骨堂はどうするのか。お仏壇をどうするのか。

事前に考えていない場合には、短い期間でこうした決断をくださいないといけません。

また、「迷惑をかけたくない」というご本人の言葉と、遺された方との思いが違う場合もあります。

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考える間もない中、選んだ方法に対して、「本当にこれで良かったのだろうか」「もっときちんと考えて決めたかった」という後悔の思いを抱き続けている方もおられます。

ある方は、こうおっしゃっていました。

「「迷惑をかけたくないから、家族葬にしてほしい」と母が希望したので、身内で葬儀をしました。でも後日、近所の方に「なんで教えてくれなかったの」と言われたり、自宅に続々とお参りに来られたりして大変でした。こんなことなら、お通夜やご葬儀に、ご近所の方を案内しておけば良かったと思いました」。そうおっしゃっていました。

また、ある男性の方は、ご本人は海が好きで、「自分の遺骨は全て海に散骨してほしい」と希望されていました。

その方が亡くなった後、「本当に全て海に散骨して、遺骨が残らなくて良いのか」と、奥様は思い悩まれていました。ご相談を受けて、お話をしていく中で、一部はご本人の希望通りに散骨をされ、残りは納骨堂へ納骨することになりました。「そうしておいて良かったです。全く遺骨が残らなかったら、心の拠り所が無くなって、後悔をしていたと思います」。そのようにおっしゃっていました。

また、別の方は、インターネットでお仏壇を購入されたそうですが、「来てみると思ったよりも小さくて、おもちゃみたいで失敗しました」とおっしゃっていました。

家族葬がだめとか、散骨がだめとか、小さいお仏壇がだめということを言いたいのではありません。

考える間がない中で、選んだ方法に対して、「本当にこれで良かったのだろうか」「もっときちんと考えて決めたかった」という後悔の思いを抱き続けている方がおられるのですね。

こうした、死後どうするかということは、あまり考えたくはないことです。しかし、大事なことなので、できれば事前にどんな方法があるのかを知り、「できるだけ後悔が少なく」「そうして良かったと思える」あり方を考えたいものですよね。

後悔している方たちのことは責められません。お寺がそういうことを相談できる場所になっていれば、その方たちの選択も変わり、後悔しなくて済んだかもしれません。

そういう意味で、お寺が相談の窓口となっている妙行寺様の取り組みは、とても素晴らしいと思いました。

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しかし、お寺がそのような相談の窓口となることは、実は簡単ではありません。

限られた人手で、それらのご相談に対応できるのか。お寺側にも知識が求められますし、込み入ったご相談ですと時間もかかります。

妙行寺様では、相談対応のための人手を確保され、対応できる体制を整えておられました。しかし、費用面でそれだけの体制を整えられるお寺は少ないでしょう。

また、地域の方々が、相談先としてお寺のことを思い浮かべ、相談のために実際にお寺へ足を運ぶというように、お寺が相談窓口となるまでには、たとえ妙行寺様であっても、地道な努力なしでは成しえなかったことでしょう。

信行寺も含めた他のお寺が、妙行寺様の取り組みに学び、同じような取り組みをしようと思う場合、いきなり体制づくりからおこなうと、おそらく上手くいきません。

相談対応のための人手を確保すると、人件費がかかりますし、そもそもお寺が相談先として認知されていなければ、相談はありません。コストばかりがかさんでしまいます。

では、どのようにすれば良いのでしょうか。現実的な一歩として、妙行寺様の取り組みの中にヒントがありました。

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妙行寺様では、お墓やご葬儀、お仏壇、介護や健康といった悩みに関わる専門家を招いた学びの場を、数多く用意しておられます。

この専門家を招いた学びの場づくりが、他のお寺で同じような取り組みをしようとする場合の現実的な第一歩になると思います。

学びの場があれば、テーマに関心を持つ方が参加されます。

例えば、「ご葬儀について、どんな準備をしたらよいのか」について、専門家から話が聞ける機会があれば、ご関心がある方は参加なさるでしょう。

よくお寺に通われている方であれば、近くのお寺でそうした話を聞く機会があれば、ご葬儀社での説明会とは、少し違った気軽な感覚で参加できるかもしれません。

学びの場があるということは、そのテーマに悩みや不安がある方に、場を開くということになります。

お寺に行ったことがない方でも、お寺へ足を運ぶ理由ができ、実際にお寺に足を運ぶという機会にもなります。

そして、学びの場で話を聞いたり、考えたりする中で、ご参加者の考えや気持ちが整理される機会にもなるでしょう。

また、「お寺がそうした内容のことを取り扱っているということは、お寺に相談してもいいんだ」と、相談先として認知されるようにもなります。

さらに、学びの場をきっかけとして、お寺側も専門家の方々とのつながりや信頼関係が育まれます。

お寺の人も、ご参加者と一緒に学び、知識が蓄積されていきます。

お寺にご相談があった時に、知識があると、より良いあり方をご相談者と一緒に考えることがしやすくなります。

例えば、お墓の移転やお仏壇の購入に関して、ご相談者の思いを汲み取りつつ、より良いあり方を一緒に考えられる可能性が高まります。

相談内容が複雑で、どうするのが良いか、考えが行き詰まるような場合には、専門家の方々に聞くこともできます。

そして、いざお墓の移転やお仏壇の購入という段階の話になった場合には、信頼できる専門家の方々をご紹介できます。

お寺で、各専門家を招いた学びの場をつくること。これは、お寺が相談の窓口となり、「地域の拠り所としてのお寺」となろうとされているお寺の方にとって、かなり現実的な一歩だと思います。

まず、学びの場を作り、その後必要に応じて、体制は整えていけば良いと思います。

妙行寺様では、お寺が相談の窓口となり、「地域の拠り所としてのお寺」となろうとされていることが、とても素晴らしいと思いました。

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「できるだけ後悔が少なく」「そうして良かったと思える」看取りや供養のあり方を、ご一緒に考えるような機会を持つ。それは、お寺としてとても意義深いことだと、妙行寺様の取り組みを通して感じました。

今回は、鹿児島市にある浄土真宗本願寺派の妙行寺様の取り組みを通して、「地域の拠り所としてのお寺」の事例について、ご紹介させていただきました。

どのようなことを感じられたでしょうか。

信行寺においても、まだそうした相談先になっていないことも多いと思います。学びの場づくりなど、お寺でも話し合いながら、何ができるかと考えていきたいと思います。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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