【一口法話】共命鳥_怒りが自滅を招く

今日は、仏教の経典に出てくる「共命鳥」(ぐみょうちょう)という話をご紹介したいと思います。

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「共命鳥」は、身体は一つですが、頭が二つある鳥です。頭が二つありますから、それぞれ違うことを考え、別の個性を持っています。しかし、身体は一つという不思議な鳥です。

一羽の名前はカルダ、もう一羽の名前はウバカルダと言います。

ある時、とても美味しそうなお花が咲いていました。カルダは、ウバカルダが眠っている時に、その美味しそうなお花を全部食べてしまいました。たとえウバカルダは食べなくても、自分が食べたことでその利益はあるだろうと、カルダは思ったそうです。

しかし、ウバカルダは、カルダが黙ってお花を全て食べてしまったことを知って怒ります。そして、この怒りを晴らすために、カルダに仕返しをしてやろうと、ウバカルダは思いました。

ある時、毒のある花が咲いていました。ウバカルダは仕返しをするために、カルダが寝ている間に毒の花を食べました。仕返しは成功して、カルダは死んでしまいます。しかし、身体は一つしかありませんから、食べたウバカルダも当然死んでしまいました。

カルダは死ぬ前に目を覚まして、このようなことを言ったそうです。

「ウバカルダ。私は、互いに利益があると思い、お花を食べました。あなたは、そのことに怒りの心を起こしましたね。怒りや憎しみ、愚かさからくる行動には、良いことはありません。なぜなら、怒りは自分を傷付け、他者をも傷付けてしまうからです」。このような内容のことを言って、カルダは亡くなったそうです。

こういう話が経典に出てくるのですね。皆さんはどのようなことを思われたでしょうか。

毒の花を食べれば、相手のカルダも死ぬけれど、自分も死ぬことは、恐らくウバカルダも知っていたことでしょう。しかしそれでも、ウバカルダは毒の花を食べます。

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この「共命鳥」の話から、私が思うことの一つは、怒りや憎しみの心とは、時には生き方を変え、人生を狂わせるほど怖いものだということです。

怒りや憎しみの心は、それ以外のことを考えられない状態にまで、人を追い込むことがあります。

例えば、相手への恨みから危害を企て、その後に自分も後を追うというような事件は昔からあるでしょう。愛情の裏返しは憎しみであり、愛情が大きいほど、それが叶わなかった時の憎しみは大きなものとなります。

他にも例えば、仕事で自分のやり方を指摘された時に、怒りの心が起こり、いつしか仕事で目的を達成することよりも、その人を言い負かしたり、一泡吹かせることが目的になってしまうこともあります。

このように、怒りや憎しみの心とは、時には生き方を変え、人生を狂わせるほど怖いものです。「共命鳥」の話から、そのようなことを思わされます。

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もう一つ、私が「共命鳥」の話から思わされることは、思ったよりも自分と周囲とはつながっていて、影響を及ぼし合っているということです。

共命鳥は、互いに別のことを考え、別の個性を持っていますが、身体は一つしかありませんでした。ですから、片方が取る行動が、もう片方に影響を及ぼします。片方が右側に行きたいと思い、もう片方が左側に行きたいと思えば、身体は一つしかありませんから、どちらに行くのか、話し合ったりして折り合いをつけなければいけないですね。

自分と周囲の人たちとの関係性も同様に、実は思ったよりもつながっていて、影響を及ぼし合っている。そういうことを、この「共命鳥」の話は示しているのではないか。そんなことを考えさせられるのですね。

例えば、職場に怒った顔をしている人がいれば、その場の雰囲気はピリピリとして、嫌な感じになります。逆に、明るく笑顔の人がいれば、場の雰囲気も和やかで、温かいものとなります。

まとめると、「共命鳥」の話から私なりに考えさせられることが二点あります。

一点は、怒りや憎しみの心とは、時には生き方を変え、人生を狂わせるほど怖いものであるということ。もう一点は、思ったよりも自分と周囲とはつながっていて、影響を及ぼし合っているということです。

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つまり、自分がどういう言動や振る舞いをするかは、自分だけでなく、他者に影響を与えているということです。

例えば、家族がいれば、自分の言動がパートナーや子どもや孫にも影響を与えます。職場では、自分の振る舞いが、上司や同僚、部下、ひいては取引先にも影響を与えます。

こうした仏法に触れることは、自分の言動を振り返る機会になると言われます。自分の言動が、どのように周囲に影響を与えているだろうかと考え行動するのか。それとも、自分と人とは関係ないと思い、独りよがりに行動するのか。それによって、相手に与える印象も変わってきます。

私自身も肝に銘じたいと思いますが、こうした日々の言動の一つ一つが、私たちの人格を作り上げていくのでしょうね。いつも聖人のような振る舞いはできないですし、あまり気にしすぎても堅苦しくなりますので、ほどほどでよいかと思いますが。

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そしてまた、自分も周囲の影響を受けるということは、自分がどういう環境に身を置くのかということも、人生に関わる大事なことだとも、この話から思います。

環境を選べない場合もありますが、もし選べるのであれば、どういうところに身を置き、何を学び、どういう人と交流をすると自分は幸せを感じるのか。心豊かに、安らかに過ごせるのか。そういう視点で、今いる環境や、日々接しているものを見つめ直してみてもいいかもしれません。

この「共命鳥」という鳥は、浄土真宗でも大切にしている『仏説阿弥陀経』というお経の中にも出てきます。阿弥陀仏という仏様の浄土という美しい国に、「共命鳥」がいると説かれています。そして、「共命鳥」は、阿弥陀仏の代わりの姿だとも言われています。仏様が鳥となって、私たちに大切なことを伝えようとされているのですね。

私たちは、時には怒りや憎しみに捉われてしまう存在であること。そして、怒りや憎しみの心は、自分を傷付け、他者をも傷付けること。また、思った以上に自分と他者とはつながっていて、互いに影響を及ぼし合っていること。そのようなことを、「共命鳥」の話から考えさせられます。

阿弥陀仏とは、自分と他者の区別なく、他者をまるで自分のように見て、思いをかける慈悲の象徴だとされています。自分と他者とは思ったよりつながり、影響を及ぼし合っているからこそ、他者のことも思う言動や振る舞いも大切である。そのようなことを、「共命鳥」の話と、阿弥陀仏の姿を通して考えさせられます。

皆様は、どのようなことを思われたでしょうか。またご感想もお聞かせいただければと思います。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参考
▼浄土真宗本願寺派 総合研究所

http://j-soken.jp/ask/2169

南無阿弥陀仏