【仏事作法解説】お仏壇でのお参りの手順と作法(浄土真宗本願寺派)

今回は、ご自宅のお仏壇の仏様の前で、お参りをする時の手順と作法について、お話したいと思います。

最近、お仏壇を購入された方は、どのようにお参りをすれば良いのか、疑問を持たれている方もおられるかと思います。また、以前からご自宅にお仏壇がある方でも、改めて手順や作法を確認する機会としていただければ幸いです。

まずは、お参りの前にすることや、身に着けるものなどのお話をさせていただきます。その後に、お参りの手順と作法についてご紹介します。

それでは、さっそく見ていきましょう。

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◆お仏壇を綺麗に整える

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まず、お参りをする前に、お仏壇の中を綺麗にします。

日頃は簡単で良いので、埃(ほこり)が溜まらないように、軽く掃除をしましょう。例えば、羽箒(はぼうき)や毛払い、毛ばたきと言われる柔らかい羽根の箒(ほうき)などを使うと、掃除がしやすいです。

手を合わせる時に、さっと掃除をすると、日頃からお仏壇を綺麗に保っておくことができるのでお勧めです。

また、樒(しきみ)やお花も必要に応じて変えてください。

◆念珠や式章を身に付ける

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次に、仏様に手を合わせる際は、お念珠を身に付けましょう。

本願寺の第八代宗主の蓮如上人は、「お念珠を持たずにお参りすることは、仏様を素手でわしづかみにするようなものだ」と言われました。仏様に手を合わせる際には、お念珠を身に着けることを習慣にしていただければと思います。

また、ご家族と同居されている方は、お念珠を使い回さずに、各自ご自身のお念珠を持っておくようにしましょう。お子様やお孫様がお念珠をお持ちでない場合は、プレゼントなさってみてはいかがでしょうか。

お念珠の保管は、お念珠かけがあれば、そちらにかけておくと良いです。

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また、式章(しきしょう)をお持ちの場合は、日頃のお参りの際にもご着用ください。式章は、肩衣(かたぎぬ)という昔の礼服が由来とも言われます。式章を着用することで、衣服を整えてお参りをするという意味があります。

式章は、下り藤などの紋が首の後ろ側にある場合には、上下があります。藤が垂れ下がっている向きになっていることを確認し、その状態で首にかけます。

式章は、使わない時は、式章の容れ物やお経本入れなどにしまっておくと良いです。これはちょっとした工夫ですが、折りたたむ時に、下側半分を内側に折り込むようにしてたたむと良いです。そうすると、開いた時に折り目が左右均等になり、式章を付けた時の見た目が美しくなります。

内側に折り込まずにたたむと、折り目が片側に寄ってしまうのですね。ちょっとした工夫ですが、参考にしてみてください。

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お念珠も式章も大切なものですので、床や畳の上などには直接置かないようにしましょう。また、お念珠と式章は、トイレに行く時には外して、トイレの中に持ち込まないようにしましょう。

◆点火(お仏壇に明かりを灯す)

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ここから、お仏壇の荘厳(しょうごん)の説明に入ります。荘厳とは、お飾りのことです。

まずは、お仏壇に明かりを灯します。お寺では、輪灯(りんとう)や金灯籠(かなどうろう)と言われる仏具に明かりを灯して、仏様をお飾りします。これを、点火と言います。

今でも、お寺では火を用いて、輪灯などに明かりを灯しているところもありますが、電気式になっているところが多いです。

ご自宅では、お仏壇の電気をつけ、明かりを灯すことが点火となります。

◆供飯(お仏飯をお供えする)

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次に、お仏飯をお供えします。お仏飯を仏様にお供えすることを、供飯(ぐはん)と言います。

お仏飯とは、仏様にお供えをするご飯のことです。仏飯器というご飯を盛る器に、ご飯を丸く盛り、仏様の前にお供えします。丸く盛るのは、蓮のつぼみの形を表していると言われます。

ちなみに浄土真宗本願寺派では、お仏飯をお供えする時に、お茶碗やお膳は用いません。お仏飯をお供えする時は、仏飯器を用います。

お仏飯をお供えするタイミングは、朝に仏様にお参りをする時にお供えするのが一般的です。もし朝にご飯を炊かない方は、夕飯の前にお供えするのも良いかと思います。

お仏飯をお供えするのは、一日に一回で構いません。例えば、朝にお仏飯をお供えされたら、夕方や夜に手を合わせる際には、お仏飯をお供えいただく必要はありません。

このように、お仏壇に明かりを点火したら、その次にお仏飯をお供えします。本来の順序でいえば、お寺では点火の後は蝋燭(ろうそく)に明かりを灯すとされています。

しかし、お仏壇では、蝋燭をつけた後にお仏飯をお供えすると、衣服に火がついたりして危険です。ですので、蝋燭に火をつける前に、お仏飯をお供えするほうが実用的かと思います。

◆点燭(蝋燭に明かりを灯す)

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次に、蝋燭(ろうそく)に火をつけ、明かりを灯します。これを、点燭(てんしょく)と言います。

普段は洋蝋燭を使うことが多いかと思いますが、ご法事などの特別な時には、和蝋燭を用いるのも良いかと思います。洋蝋燭に比べると、少し価格は高いですが、味わいがあってお勧めです。

◆供香(香りをお供えする)

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蝋燭に明かりを灯したら、次は香りをお供えします。香りを仏様にお供えすることを、供香(ぐこう)と言います。一般的には、線香を用いて香りをお供えします。

浄土真宗本願寺派では、お線香は立てずに、香炉にねせてお供えします。お子様やお孫様が、お参りをする時にお線香を立てていたら、ねせてお供えすることをお伝えいただくと、作法が伝承されて良いかと思います。

なぜ、お線香をねせてお供えするのかと言うと、もともと昔はお線香はありませんでした。では、どのようにしてお香をたいていたかと言うと、お寺では香炉の中の灰に溝を掘って、その中に抹香というお香の粉末を入れて、お香をたいていたそうです。今でもご本山の西本願寺では、そのようにお香をたいているそうです。

このように、お香を立ててお供えをするという作法は、そもそも浄土真宗にはありませんでした。その後、お線香が発明され、お線香を立てるという作法が日本に広まったと考えられます。

しかし、浄土真宗においては、西本願寺のお香のお供えの仕方に習い、お線香であっても、あえて立てる必要はなく、ねせてお供えをしています。

また、お線香をお供えする本数についても、よく質問があります。結論を言いますと、お線香をお供えする本数に、決まりはありません。

お仏壇にある香炉は、お線香を折らないと横にねせることができない場合がほとんどです。ですので、香炉の大きさに応じて、お線香を適当な長さに折り、ねせてお供えします。

例えば、お線香を一本取り、半分に折ってお供えしたり、三等分に折ってお供えをします。

香炉が横長で、お線香を折らずにお供えできる場合は、お線香を適宜取って折らずにお供えする場合もあります。その場合は、例えば二本程度お供えいただいても良いかと思います。

事前に、香炉の大きさに合わせてお線香を折り、線香入れに置いておくのも良いでしょう。

◆合掌・念仏・礼拝

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お線香をお供えしたら、手を合わせます。

合掌は、両手の人差し指から小指を、お念珠の輪の中に通し、親指で軽く押さえます。お念珠の房は下にくるようにします。そして、両手の掌(てのひら)を合わせるようにし、指が開かないようにします。

肘をはらずに、両手を胸の前で合わせます。上体に対して、指先の角度を45度程度にすると、美しい合掌の姿勢になります。額の前で合掌したり、胸から遠い場所で合掌はしません。

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合掌をしたら、目線を仏様のほうへ向け、「南無阿弥陀仏」(なもあみだぶつ)(「なまんだぶつ」「なまんだぶ」とも言う)と数回お念仏を声に出して称(とな)えます。

そして、上体を前に45度程度傾け、礼拝(らいはい)します。ちょうど、指先と床とが並行になるくらいの角度です。

腰が痛い場合などは、無理に上体を傾けなくても良いですが、正式な作法としてはそのようになっていることをお伝えしておきます。

合掌して、お念仏を称え、上体を傾け礼拝したら、元の姿勢に戻り、合掌をときます。合掌していない時は、お念珠は左手に持ちます。

◆読経(お経をとなえる)

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合掌、礼拝の後、お経をとなえる時間があれば、是非お経をおとなえ下さい。

お経をとなえる時には、聖典を用います。聖典とは、お経やお経の解説など、大切な言葉が記された書物のことです。私たちに身近な聖典と言えば、本願寺から出ている『日常勤行聖典』があります。通称、お経本とも言われます。

聖典を開く時は、聖典を両手で持ち、額のところで押しいただきます。その後、聖典を開きます。そして、聖典にそって、お経をとなえます。

どのお経をとなえると良いのかについては、以前解説していますので、そちらをご参考になさってみてください。

▼浄土真宗のお経。何をとなえると良いのか

また、お経のとなえ方について解説した動画や、ご一緒にお経をとなえることができる動画も用意していますので、そちらも合わせてご活用ください。

▼読経

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さて、鏧(きん)についてですが、浄土真宗本願寺派では、お経をとなえる時に鏧を打ちます。

手を合わせる時に、鏧を打つ方もおられるかと思います。ですが、お経をとなえる時以外に鏧を打つという作法は、本願寺派にはありませんので、知っておいていただければと思います。

お経をとなえ終えたら、聖典を閉じ、額のところで押しいただきます。そして、聖典を経卓(きょうじょく)の上に置きます。経卓は、その名の通り、お経本、聖典を置く卓のことです。

◆明かりを消す

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お参りを終えたら、お仏壇や蝋燭の明かりを消します。またお仏飯も、お参りを終えたら下げます。

以上が、ご自宅のお仏壇の仏様の前で、お参りをする時の手順と作法になります。

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最後に、ここまで紹介したお参りの手順と作法を、簡単に振り返っておきましょう。

まず、お仏壇を綺麗に整えます。その後、お念珠や式章を身に着けます。

そして、電気をつけてお仏壇に明かりを灯します。これを、点火と言いました。

その後、お仏飯をお供えする場合はお供えします。これを、供飯と言いました。

次に、蝋燭に明かりを灯します。これを、点燭と言いました。

そして、お線香などで香りをお供えします。これを、供香と言います。

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そして、合掌、お念仏、礼拝をします。時間があれば、是非お経をおとなえください。お経をとなえた後は、もう一度、合掌、お念仏、礼拝をします。

お念珠や式章をしまい、最後にお仏壇の明かりを消して、お仏飯を下げます。

以上が、ご自宅のお仏壇の仏様の前で、お参りをする時の手順と作法でした。

仏様にお参りをする際に、最初はこの解説をご覧いただきながらお参りをしていただくと、正しい手順や作法が身に付きます。身に付けば、後は自然な流れでできるようになります。宜しければ、是非ご活用いただければ幸いです。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献
・『浄土真宗聖典』注釈版/浄土真宗本願寺派
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・『浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典』/浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典編纂委員会
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・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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・『浄土真宗本願寺派 法式規範』/浄土真宗本願寺派 勤式指導所
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・『勤行意訳本』/神崎修生
(『勤行意訳本』については、信行寺までお問い合わせください。 (
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南無阿弥陀仏