【仏教解説】第5回_煩悩②_瞋恚(怒りの心)

【お坊さんのかんたん「仏教解説」】では、仏教に関するテーマを一つ取り上げて、できるだけ簡単に分かりやすくご紹介しています。

仏教やお寺を身近に感じていただいたり、日々を安らかに、穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。

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◆煩悩とは?

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さて、前回から「煩悩」について見ています。煩悩とは、心身を煩わせ、悩ませるものの総称です。もっと簡単に言うならば、煩悩とは、我々の悩みや苦しみの原因となっているものでした。

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前回もお話しましたが、煩悩には、代表的な煩悩が三つあります。貪欲(とんよく)、瞋恚(しんに)、愚痴(ぐち)の3つです。これら三つで、三毒の煩悩とも言っています。

前回は、三毒の煩悩の一つ目、貪欲(とんよく)についてお話させていただきました。貪欲とは、貪りの心のことです。もっと欲しいと思う心が、悩みや苦しみの原因となっていることを、前回見ていきました。

今回は、三毒の煩悩の二つ目、瞋恚(しんに)について、ご紹介させていただきます。

◆瞋恚

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さて、今言ったように、三毒の煩悩の二つ目は、瞋恚(しんに)です。瞋恚とは、怒りの心のことです。

煩悩とは、我々の心身を悩み煩わせ、苦しみの原因となっているものでした。ですから、代表的な煩悩の一つである瞋恚(怒りの心)が、我々の心身を悩み煩わせ、苦しみの原因となっているということです。

怒ると頭に血が上ったり、血圧が上昇したりして、身体にも負担がかかりますね。心臓の鼓動も早くなりますし、怒ることで体力も消耗します。また、怒っている時は、イライラしたり、むしゃくしゃしたり、もやもやしたりして、精神的にも良くはありませんね。このように、怒りの心は、我々の心身を悩み煩わせ、苦しみの原因となっているんですね。

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そしてまた、怒りの心は、接する周りの人にも影響を及ぼします。怒りを向けられた相手は、いい気持ちはしないでしょうし、誰かが怒っていたら、ピリピリと空気がはりつめますね。怒りの感情は、自らを苦しめるだけでなく、他者をも苦しませてしまう要因になります。

◆どういう時に怒る?

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我々は、どういう時に怒るでしょうか。多いのが、自分の思い通りにならなかったり、都合が悪い時に怒ることが多いですかね。何であの人はこんなことをするのかとか、あの人があんなことをしなければこうはならなかったのにとか。自分の思い通りにならなかったり、都合が悪い時に、我々は怒ることが多いようです。

ですので、自分が怒っている時には、自分の思い通りになっていないという理由で怒ってはいないだろうかと、一旦冷静になって、見つめてみるといいかもしれませんね。

いつもいつも、相手が悪いばかりではないと思うんですね。考え方や価値観が違うだけということもあります。相手が悪くないのに怒ってしまうと、いらぬ恨みや憎しみをかったり、自分の信頼にも傷がついてしまいます。

我々は、問題を自分のせいにするよりは、他のせいにするという他責傾向があります。例えば、自分がお皿を割った場合は、「お皿が割れた」と言うことはありませんか。お皿がつるつるしているからとか、お皿がこんなところに置いてあるからとか、まるで自分以外の何ものかのせいで、お皿が割れたんだ、自分のせいではないというようなニュアンスが、「お皿が割れた」という言葉には含まれているように感じます。

一方、自分以外の人がお皿を割った場合。例えば、家族が自分のお気に入りのお皿を割ってしまったとしましょう。その時は、「お皿が割れた」とは言いませんね。「お父さんがお皿を割った」「お母さんがお皿を割った」「お兄ちゃんがお皿を割った」というように、「〇〇がお皿を割った」と言うでしょうね。

このように、我々には、問題を自分のせいにするよりは、他のせいにするという他責傾向があります。他責傾向があることを認識して、怒った時ほど冷静になって、状況を見つめてみたいものです。

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また他にも余裕がない時とか、あまり睡眠がとれていない時とか、疲れている時とか、大きな案件を抱えている時などは、怒りやすくなるかと思います。自分の状況によっても怒りやすさは変わりますね。

できるだけ余裕を持つようにしたり、自分の心や身体にも目を向けてセルフケアをしたり、今は繁忙期で忙しくてちょっと疲れているというように、自分の状況を周囲に伝えることもできることかもしれません。

◆和顔愛語

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仏教には、和顔愛語(わげんあいご)という言葉があります。和やかな表情と、慈しみのある言葉遣いを大切にするということです。相手の表情や言葉が和やかで穏やかだと、接するほうは安心しますよね。

表情は相手に伝播するとも言われます。笑顔や優しい言葉遣いは、我々が簡単にできて、自分や周りをあたたかくする慈しみのお布施です。ここでいうお布施とは、ご葬儀やご法事で包むものではなくて、他者への施しという意味です。

自分の表情や言葉遣いがとげとげしくなっていないか、人を緊張させてはいないかとチェックしてみて、和顔愛語を心掛けてみるといいかもしれませんね。

もちろん、不当な扱いを受けていたり、いじめや偏見を受けていると感じるような場合は、和顔愛語といかないこともあります。自分が悪くないのに自分を責めたり、無理に笑顔をつくろうとすることで、かえって自分を苦しめることもあります。

何でも人のせいにするのはよくないですが、同じく何でも自分のせいにしてしまうのも苦しくなります。苦しさを感じる時には無理をしすぎず、休息をとったり、信頼できる人を頼るといったことも大事かと思います。

いかがだったでしょうか。お坊さんのかんたん「仏教解説」ということで、今回は、煩悩の中でも代表的な、瞋恚という怒りの心についてお話をさせていただきました。次回は、三毒の煩悩の三つ目、愚痴についてお話したいと思います。

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合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
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▼次回の内容

【仏教解説】第6回_煩悩③_愚痴・無明(愚かさ・無知・真理に暗い状態) | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

▼前回の内容

煩悩って何?①【お坊さんのかんたん「仏教解説」】 | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

◇参照文献:
・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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