ご家族を亡くされてご葬儀をされた後に、仏壇の準備などについてどうしたらよいだろうかと、困ったことのあるご遺族も多いかと思います。

そこで今回は、「入仏式」(にゅうぶつしき)について、解説をさせていただきます。

「入仏式」とは、「仏壇を購入し、御本尊(ごほんぞん)をお迎えする際におこなう儀式のこと」です。

「入仏式」について、その中でも特に、「入仏式とは何か」や「入仏式のタイミング」「入仏式での仏壇の飾り方・お供え物の仕方」「よくある質問」といった内容について、ご紹介をさせていただきます。

参考にしていただければ幸いです。

▼この内容は動画でもご覧いただけます。

なお、この内容は、浄土真宗本願寺派(本山は西本願寺)の内容でお話をさせていただきます。

また、「仏壇を選ぶ際のポイント」「仏壇の向きと配置」などについては、別の動画で解説していますので、宜しければそちらも併せてご覧になってみてください。

▼仏壇を選ぶ際のポイント

▼仏壇の向きと配置

それでは、さっそくまいりましょう。

◆入仏式とは何か

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まず、「入仏式とは何か」について解説をします。

「入仏式」とは、「仏壇を購入し、御本尊(ごほんぞん)をお迎えする際におこなう儀式のこと」です。

御本尊とは、敬い依りどころとなる仏様などのことです。

浄土真宗では、阿弥陀仏という仏様の絵像や木像、また「南無阿弥陀仏」と書かれた名号(みょうごう)を、御本尊として仏壇に安置します。

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「仏壇」とは「仏の壇」とあるように、「仏様を安置し、手を合わせる場所」です。

家庭に仏壇を置くということは、礼拝や信仰の対象となる御本尊(仏様)を安置し、手を合わせ、仏様を思うひとときを日常の中にもつことと言えます。

それは、家庭の中に安心や温もりを感じ、心の依りどころとなる場所ができるということでもあります。

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また「仏壇」とは、ご遺族にとっては「先立たれた方を思う場所」でもあるでしょう。

多くの方が、ご家族を亡くしたことをきっかけに仏壇を購入され、家庭に安置なさいます。

そうしたご遺族の心情や実態から考えると、仏壇は「先立たれた方を思う場所」とも言えます。

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「入仏式」とは、そうした「仏様を安置し、手を合わせる場所」であり、「先立たれた方を思う場所」となる「仏壇」を購入し、「御本尊をお迎えする際におこなう儀式」と言えます。

これからずっと手を合わせていく場所が家庭内にできる、その節目の儀式が「入仏式」ですので、丁寧におこないたいものです。

なお浄土真宗では、「入仏式」「入仏慶讃(きょうさん)法要」と言い、「開眼(かいげん)供養」や「魂入れ」などの言い方はしません。

◆入仏式のタイミング

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次に、「入仏式をおこなうタイミング」ですが、「新たに仏壇を購入され、御本尊をお迎えする際におこなう」のが一般的です。

ご葬儀を終えると、葬儀社の方が中陰壇(ちゅういんだん)と言われる壇を、ご自宅に設置くださる場合が多いかと思います。

しかし、四十九日が終わると、基本的に中陰壇は片づけます。

ですので、できれば四十九日までの間に仏壇を購入され、入仏式ができると良いかと思います。

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また、入仏式の前に、仏壇と併せて御本尊をお迎えする必要があります。

所属寺を通じて、本山の西本願寺からご本尊をお迎えされると良いです。

西本願寺から授与される御本尊は正式なもので、掛け軸の裏側に印と裏書きがされています。

すでにご縁のあるお寺があられる方は、そのお寺の御住職や坊守様などにご相談なさってみてください。お取り寄せいただけます。

ご自宅に仏壇が届く日と、御本尊をお迎えする日が分かれば、入仏式をおこなう日を決めます。

入仏式をおこなっていただきたい旨を、ご縁のあるお寺にお申し出ください。

日時をお約束して、お参りしていただけます。

ちなみに、信行寺では入仏式と四十九日は、できるだけ別日におこなっていただくようにご案内しています。

入仏式では、読経などに加えて、「仏壇の飾り方」や「お供え物の仕方」など、仏壇に関しての基本的な作法や、よくある疑問点などをお伝えさせていただいています。

そうした時間があると、ご遺族も仏壇についての理解が深まり、仏様に向き合う気持ちも新たになられるようです。

四十九日と別日でされるかどうかは、お寺によって対応も違うかと思いますので、お寺に直接お尋ねになってみてください。

また、入仏式は仏壇の購入時だけでなく、仏壇の修復を終えた後、再び御本尊を安置する際におこなうこともあります。

また、そもそも仏壇は、先立たれた方を思う場所であると共に、心の依りどころとなる場所でもありました。

ですので、どなたも亡くなられていなくても、ご自宅に御本尊、仏壇をお迎えされることは、とても意義深いことだと思います。

◆入仏式での仏壇の飾り方・お供え物の仕方

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入仏式における「仏壇の飾り方」や「お供え物の仕方」についても、簡単に解説します。

「仏壇の飾り方」ですが、仏壇店で仏壇を購入された方は、お飾りをしてくださることが多いかと思います。

まず、仏壇の上段中央には、御本尊となる仏様を安置します。

ご本尊が阿弥陀仏の絵像などの掛け軸であれば、掛け軸をお掛けします。

次に、御本尊の両側にお掛けする掛け軸を、脇掛(わきがけ)と言います。

向かって御本尊の右側には親鸞聖人(しんらんしょうにん)の絵像を、左側には蓮如上人(れんにょしょうにん)の絵像をお掛けします。

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御本尊に、「南無阿弥陀仏」という六字名号を、脇掛には「帰命尽十方無礙光如来」(きみょうじんじっぽうむげこうにょらい)という十字名号(じゅうじみょうごう)と、「南無不可思議光如来」(なもふかしぎこうにょらい)という九字名号(くじみょうごう)をお掛けする場合もあります。

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次に、仏具についてですが、三具足(みつぐそく)や五具足(ごぐそく)でお飾りします。

三具足とは、ロウソク立て、香炉、花瓶(かひん)という花立ての三つの仏具が、一つずつ揃っている状態のことです。

仏壇手前の向かって右側からロウソク立て、中央に香炉、左側に花瓶の順番で置きます。

ロウソク立てにはロウソクを立てますが、入仏式では朱色の朱蝋(しゅろう)を用います。宜しければ、仏壇店でご購入ください。

花瓶には、適宜、季節のお花などをお生けください。

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五具足は、仏壇手前の外側から、花瓶を一対、その内側にロウソク立て一対、中央に香炉という順番で置きます。

五具足の仏具がある方は、五具足でお飾りをされ、三具足しかない方は、三具足でお飾りください。

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「お供え物の仕方」ですが、入仏式の当日は、「お仏飯」(おぶっぱん)をお供えください。

お仏飯とは、仏様にお供えするご飯のことです。

仏飯器(ぶっぱんき)という器にご飯を丸く盛り、仏様の前にお供えします。

その他のお供え物の仕方ですが、仏壇の中はお供え物であふれるようにはせず、できるだけすっきりとさせておきます。

仏壇の中にお供え物をする場合は、供笥(くげ)や高坏(たかつき)の上にお供え物を置き(盛り)、一対にしてお供えすると綺麗です。

◆よくある質問

最後に、入仏式についてのよくある質問にお答えいたします。

まず、「入仏式はしたほうが良いでしょうか?」というご質問をいただくことがあります。

入仏式は、お仏壇を購入され、仏様を迎える節目の儀式となりますので、なさることをお勧めします。

考えてみますと、人類は入学式や卒業式、成人式や葬儀など、人生の節目に儀式をおこない、心を新たにするという営みをおこなってきました。

入仏式も、これから仏様に手を合わせていく日々が始まる、そういう節目となりますので、入仏式をなさると心を新たにする機会になるかと思います。

次に、「コンパクトな仏壇でも、入仏式をしたほうが良いでしょうか?」という質問をいただくこともあります。

住宅の事情から、最近はコンパクトな仏壇が選ばれる傾向があります。

コンパクトであっても仏壇に変わりはありませんので、入仏式はおこなわれると良いです。

また、「入仏式のお布施は、どの程度すると良いでしょうか?」というご質問をいただくこともあります。

お布施は、基本的にはお気持ちでお包みされると良いかと思います。

「お気持ちだと分かりづらい」と思われる方もおられることでしょう。

その場合は、ご縁のあるお寺にお尋ねできるようであれば、お尋ねされてみてはいかがでしょうか。

門信徒の方々がお包みされているお布施のある程度の額を、教えてくださるお寺もあるかと思います。

それぞれのご家庭のご事情もあられるかと思いますので、聞かれたものを参考にしつつ、お気持ちで包まれると良いかと思います。

いかがだったでしょうか。

今回は、「入仏式」について、解説をさせていただきました。

その中でも、「入仏式とは何か」「入仏式のタイミング」、「入仏式の仏壇の飾り方・お供え物の仕方」「よくある質問」といった内容について、ご紹介をさせていただきました。

参考にしていただけますと幸いです。

本日触れた「御本尊と脇掛について」「仏壇の飾り方」「お供え物の仕方」などは、別の動画でさらに詳しく解説していますので、もっとお知りになりたい方は、そちらもご覧になってみてください。

▼ご本尊と脇掛けについて

▼仏壇の飾り方

▼お供え物の仕方


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献
・『浄土真宗聖典』注釈版/浄土真宗本願寺派
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・『浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典』/浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典編纂委員会
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・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
https://amzn.to/3ha42oh
・『浄土真宗本願寺派 法式規範』/浄土真宗本願寺派 勤式指導所
https://amzn.to/395mYmY
・『浄土真宗 必携』み教えと歩む/浄土真宗必携 編集委員会
https://amzn.to/38MDjNc

・『岩波仏教辞典』第二版/中村元他多数
https://amzn.to/3GUXUQc
・『勤式作法手引書』/堤楽祐
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・『マンガ仏事入門』/岡橋徹栄
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・『勤行意訳本』/神崎修生
(『勤行意訳本』については、信行寺までお問い合わせください。 (
https://shingyoji.jp/ )

南無阿弥陀仏