信行寺で開催している「朝参り」では、皆様の心が少しでも安らぐようなご縁となればと思い、法話をしております。動画と文章でご覧いただけるようにしましたので、宜しければご覧くださいませ。
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皆様、本日も信行寺の「朝参り」に、ようこそお参りくださいました。
「朝参り」では、短い法話をしております。法話を通して、少しでも心が安らいだり、一日、一カ月を心新たに過ごすようなご縁となれば幸いです。
さて、日本を代表するマーケター(マーケティングをする人)で、森岡毅さんという方がおられます。ユニバーサルスタジオジャパンや、丸亀製麺の再生の立役者として知られています。テレビにご出演なさることもあるので、ご存知の方もおられるかもしれませんね。
森岡さんは、マーケティング会社である株式会社刀を立ち上げ、様々な企業の経営再建に携わっておられます。私は、森岡さんのお話を聞くと、凄く共感を覚え、胸が熱くなって、やる気や勇気をいただくんですね。
先日、とあるテレビ番組で、その森岡さんがお話されていたのを拝見しました。そこで森岡さんは、仏教にも通じるお話をされていましたので、皆さんにもその内容を紹介したいと思いました。
そこで今回は、森岡さんの言葉をご紹介しながら、仏教の考え方について味わってみたいと思います。テーマは、「利他の心の大切さ」です。
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森岡さんは、テレビ番組でこのようにおっしゃっていました。
「人のためということであれば、日本人はもっと強い力と勇気を持てる特徴を持っている方が多いということを、お伝えしたいんです。自分のためだけだったら頑張れないんですよ。でも、チームのためなら頑張れる、すごいやる気が出るってありますよね。
例えば、運動が苦手な人が、自分一人でコツコツ運動しようと思っても続かないんだけれども、パーソナルトレーナーが待ってくれてると思ったら、運動したくなくてもいけるじゃないですか。これというのは、自分以外の人と目的を共有することによって、自分自身をより好ましい行動を取る方に強くしてるんですよね。
これは、僕が自分の目で見たアメリカの社会の中にはあまりない。(アメリカでは)自分が自己実現するために、やる気が出る方の割合が多い。でも、日本は昔から、みんなで協力しながら、田んぼを一生懸命耕してきたお国柄なわけですよ。日本人って、自分以外の人に対しての思いやりがモティベーション(動機)になるという特徴をずっと持ってきた。」
このように、森岡さんは日本人の特徴についてお話されていました。日本人の特徴は、「人のためなら頑張れる。チームのためなら頑張れる」という特徴があるということでした。私もこの意見に同感です。
先日のWBCでの日本のチームの活躍も、まさにチームのために頑張った結果の優勝ではなかったかと思います。
人のことを思い、人のために行動をする。そういうところに、日本人の特徴があるのではないか。日本以外の国と比較した時に、そういうものが改めて見えてくるのかもしれません。
こうした人を思う心を、仏教では「利他」と言います。日本人は、本来的には「利他の心」が強いのではないかと、私も感じます。
誰しもが、自分のことを優先したり、自分の望むようになれば嬉しい気持ちになったりする利己的な一面をもっています。しかし、自分の行動が人のためになっていないと感じた時には、「これで良かったのだろうか」という思いになったり、虚しさにおそわれたりもします。利他の心が、「それでいいのだろうか」とはたらきかけるのでしょうね。
この番組の中で、「情けは人のためならず」という言葉も出てきていました。「情けは人のためならず」とは、「人に情をかけることで、それが巡り巡って自分のためにもなる」という意味の言葉ですね。本来はそうした意味の言葉ですが、間違って「情けをかけてもその人のためにならないから、苦しんでいても助けないほうがいい」というように使われていることもありますね。
人のことを思い、人のために行動をする。それが、自分の喜びともなり、巡って自分のためにもなっていく。必ずしも、したことが返ってくるとも限りませんし、恩返しを押し付けてもいけません。しかしそれでも、人のことを思う行動自体が、自分の喜びになり、人のためなら頑張れるというところがあるのだと思います。
浄土真宗でご本尊として敬われている阿弥陀仏という仏様は、「いつもあなたのことを思っています」というような利他の心、慈悲の心がとても深い仏様だそうです。
お経に触れながら、仏教に触れながら、そうした利他の心や慈悲の心の大切さについて気付かされていくことも、仏縁に遇う大きな意味でしょうね。
身の回りに目を向けて、身近な人のために、社会のために、できる範囲でできることをしていく。そうしたことが、自らの心の充足にもつながり、良い日々や家庭や友人関係や社会を形作っていく。そのように思います。
勿論、恩の押し付けや、恩返しの押し付けは、相手のためになりませんので良くありません。相手の言葉や反応に意識を向け、必要とされることを、自分の無理のない範囲でおこなっていくことが大切かと思います。
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今回は、「利他の心の大切さ」というテーマで、お話させていただきました。
皆様、どのようにお感じになられたでしょうか。また是非、ご感想もお聞かせください。
本日も信行寺の朝参りに、ようこそお参りくださいました。
合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
南無阿弥陀仏