【仏教に学ぶ】シリーズでは、身近な疑問や悩み事を、仏教に学んでいます。前回に続き、「不必要に怒らない三つの智慧」というテーマで見ていきます。

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【仏教に学ぶ】「不必要に怒らない三つの智慧」①怒りの原因を知る|神崎修生@福岡県 信行寺|note

私たちは、怒っている時に、その怒りの原因を自分以外のものに求める癖を持っています。そしてまた、思い通りにならない時に怒る癖も持っています。

つい人のせいにしてしまう。思い通りにいかない時に怒りやすい。そうした私たちが持っている癖を知り、怒りの感情が起きる構造を理解することで、人や物事に対する見方が随分と変わるということを見ていきました。

そして今回ですが、「不必要に怒らない三つの智慧」の二つ目について、見ていきたいと思います。「不必要に怒らない三つの智慧」の二つ目として、「思いやりの心を持つ」ことを挙げました。「思いやりの心を持つ」ことで、怒りの感情が和らぐことを、ご一緒に見ていきたいと思います。

この話が、日々を安らかに過ごすようなご縁となれば幸いです。それでは、さっそく見ていきましょう。

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◆思いやりの心

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さて、「不必要に怒らない三つの智慧」の二つ目には、「思いやりの心を持つ」ことを挙げました。

「思いやりの心を持つ」ことで、相手に対する見方が変わったり、心が穏やかになり、怒りの心が和らぐことがあります。

例えば、小さなお子さんがおられるご家庭では、子どもがお茶や牛乳などをこぼしてしまうこともありますね。

「なんでこぼすの」「こぼしたらだめって言ったでしょう」と、とっさに怒ってしまうこともあります。しかし、思いやりの心を持って、子どもを見てみると、どういうふうに見えるでしょうか。

子どもなりに、自分で頑張ってお茶を運ぼうとしていたのかもしれません。お母さんやお父さんの手を煩わせずに、自分で頑張ってやろうと思っていたのかもしれません。目の前の食事に気を取られて、コップに目がいかなかったのかもしれません。子どもの様子を見てみると、そんないたいけな姿が見えてくるかもしれませんね。

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忙しくて余裕がないと、相手のことを思いやる心もなくしてしまいます。「忙しい」という言葉は、「心を亡くす」という意味があるそうです。「心を亡くす」と書いて、「忙しい」という漢字になります。忙しいと、相手を思いやる心もなくしてしまうんでしょうね。

ですので、忙しい時ほど心に余裕をもち、「思いやりの心を持つ」ことを忘れないようにしたいですね。

もう一つ事例として、ある30代の男性の方のお話をご紹介させてください。ある30代の男性が、60代の先輩男性と街中を歩いていた時のことです。ティッシュ配りをしている方が、ティッシュを渡そうとしてきたそうです。

その時に、30代の男性は、ティッシュを渡されるのを「うっとおしいな」と思ったそうです。そのように思う方もおられるのではないでしょうか。30代の男性が、ティッシュを受け取らずに通り過ぎようとした、その時です。

60代の先輩男性は、ティッシュを受け取って、「ありがとうね。ご苦労さんね。寒いだろうね。ありがとうね」と親身に言葉をかけながら、ティッシュ配りの方をねぎらったそうです。

30代の方は、隣でその姿を見て、「なんて思いやりに溢れた人なんだろう」「凄いな」「この人みたいになりたいな」と、尊敬の思いが湧いたといいます。

60代の先輩の思いやりに触れて、自分まで心が温かくなり、ティッシュ配りの方も笑顔になったそうです。30代の男性の方は、そんな話を私にしてくれました。

「思いやりの心を持つ」と、相手の見え方も変わるのでしょうね。ティッシュ配りをしている方が、寒そうにしている姿や、頑張って配っている姿が見えてくる。「うっとおしいな」と思う自分の視点からでは見えないような姿が、見えてくるのでしょうね。

繰り返しますが、「思いやりの心を持つ」ことで、相手に対する見方が変わったり、心が穏やかになり、怒りの心が和らぐことがあります。そして、その思いやりの心が相手にも伝わり、相手の心をも和らげ、温めることもあります。「思いやりの心を持つ」ことは、自分と周囲に良い影響を及ぼすのでしょうね。

◆慈悲の心

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「思いやり」とは、仏教の言葉では「慈悲」とも言います。「慈悲」は、仏道の中心とも言えるものです。「慈悲」の振る舞いを心がけることが、心を穏やかにし、怒りの心を和らげると言います。

お釈迦様の言葉に、このような言葉があります。

たといどこにあっても他人を軽んじてはならない。悩まそうとして怒りの想いをいだいて互いに他人に苦痛を与えることを望んではならない。
あたかも、母が己が独り子を命を賭けても護るように、そのように一切の生きとし生けるものどもに対しても、無量の慈しみのこころを起こすべし。

(『スッタニパータ』148、149)

ここには、相手のことを思う「慈悲」の心の大切さや、「慈悲」の振る舞いを心がける大切さが記されています。

生きとし生けるもの全てに、思いやりの心を向けることは、中々難しいかもしれません。ですが、これは全てのものはつながっているという価値観が前提にあります。

つまり、子どもが苦しんでいれば、親である自分も苦しみを感じるように、友人が苦しんでいれば自分も苦しみを感じるように、自分と他者とは、私たちが思っている以上につながっているということです。

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ですから、自分が良ければ良いという姿勢ではなく、私もあなたも幸せでありますようにと願うような、「思いやりの心」「慈悲の心」を持つことの大切さが、仏教には示されています。

「慈悲」の振る舞いを心がけることが、心を穏やかにし、怒りの心を和らげると言われます。そして、その思いやりの心が相手にも伝わり、相手の心をも和らげ、温めることもあります。

「思いやりの心を持つ」ことが、自分と周囲に良い影響を及ぼすのでしょうね。このようなことから、「不必要に怒らない三つの智慧」の二つ目に、「思いやりの心を持つ」ことを挙げました。

いかがだったでしょうか。今回は「不必要に怒らない三つの智慧」の二つ目として、「思いやりの心を持つ」ことについて、お話させていただきました。

「思いやりの心」「慈悲の心」を持つことで、相手に対する見方が変わったり、心が穏やかになり、怒りの心が和らぐことがある。そのようなお話をさせていただきました。是非、感想やご自身の経験から感じたことなどもお聞かせください。

こうした話が、日々を安らかに過ごすようなご縁となれば幸いです。次回以降に、「不必要に怒らない三つの智慧」の三つ目を見ていきたいと思います。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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