「仏教解説」では、仏教の考え方をできるだけ分かりやすく、ご紹介しています。仏教の考え方を通して、皆様の仕事や生活がより良いものとなったり、日々を安らかに穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。

今回は、その八正道の中の八つ目、八正道の最後になりますが、正定(正しい精神統一)についてご紹介致します。そして最後に、四諦八正道を振り返り、簡単にまとめていきます。

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◆正定

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正定とは、正しい精神統一のことです。一つの対象に心を集中し、精神統一に励むものです。

私たちの心は、何も訓練していなければ、散り乱れ、集中していない状態です。心の動きを観察してみると、色々な思考が湧いてきて、いかに心が散り乱れているかがよく分かります。

例えば、仕事をしていてもSNSの反応が気になれば、次の瞬間にはスマホを見ていたり、やっていることに飽きると、別のことをし始めたりします。そうした心が散り乱れた状態ではなく、一つの対象に心を集中し、精神統一に励んでいく。それが正定です。

正定の具体的な方法として、サマタ瞑想が挙げられます。サマタ瞑想とは、一つの対象に心を集中する瞑想法です。サマタ瞑想の代表的なものとして、呼吸瞑想があります。また他にも、慈悲の瞑想もサマタ瞑想に分類されています。

サマタ瞑想のように、正定とは、一つの対象に心を集中し、精神統一に励むものです。一つの対象に心が集中するということは、欲や怒りなどの捉われから離れていくことにもなります。慈悲の瞑想でも、慈しみの心や落ち着いた心が、怒りや憎しみの感情を和らげるとされます。

この数十年、医療やビジネス方面での瞑想の転用が進んでいます。そして、瞑想でのストレスの低減などの効果も実証されています。

ただ、八正道に説かれる正念のヴィパッサナー瞑想や、正定のサマタ瞑想は、本来は安らかなさとりにいたるための仏道修行だと言われます。ですからその分、深みや難しさがあるとされます。瞑想の行為自体は簡単でも、散り乱れた心を集中したり、精神統一していくことが難しいのでしょうね。

仏道修行においては、きちんとした師に教わって、修行に励む必要があるでしょう。

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ちなみに、浄土真宗の宗祖の親鸞聖人という方は、20年もの間、様々な行に励んでも、いっこうに迷いが晴れることがなかったと言います。

そんな自身の経験から、様々な行に励んでさとりにいたる仏道を降り、一心に阿弥陀仏に帰依しさとりをひらくお念仏の道を選ばれた方でした。

◆四聖諦まとめ

さてここまで、仏教の根本的な教えである四諦八正道について、全12回、約半年をかけてご紹介してきました。ずっとご一緒していただいた方は、本当にありがとうございます。

最後に、四諦八正道をざっと振り返って、今回は終わりにしたいと思います。

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お釈迦様は、仏教の代表的な考え方、実践法として、四聖諦(ししょうたい)を説かれています。四聖諦とは、仏教が説く四つの真理のことです。

四聖諦の一つ目の真理は、苦諦(くたい)でした。苦諦とは、「人間の生存は苦」であるという真理でした。では、なぜ「人間の生存は苦」なのでしょうか。そのことが四聖諦の二つ目に説かれていました。

四聖諦の二つ目の真理は集諦(じったい)です。集諦には、「苦しみの起こる原因は煩悩」であると示されていました。なぜ「人間の生存は苦」なのかというと、煩悩があるからであり、私たちが抱える苦しみの根本原因は煩悩だと示されています。

そして、四聖諦の三つ目の真理は滅諦(めったい)でした。苦しみの原因である「煩悩を止滅することで、安らかなさとりにいたる」ことが示されていました。では、安らかなさとりにいたるために、どのようなことをおこなえばよいのでしょうか。そのことが四聖諦の四つ目に示されています。

四聖諦の四つ目の真理は道諦です。道諦には、「安らかなさとりにいたる方法としての八正道」が示されていました。八正道を実践していくことで、煩悩や苦しみが和らぎ、安らかなさとりにつながっていくというものでした。

そういう流れで、道諦に示される八正道について見ていきました。

◆八正道まとめ

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八正道の一つ目は正見(正しい見方)、二つ目は正思惟(正しい思考)でした。この二つは、物事の見方や考え方といった智慧に該当する部分と言われます。

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八正道の三つめは正語(正しい言葉づかい)、四つ目は正業(正しい行い)、五つ目は正命(正しい生活)でした。この三つは、戒という仏教徒の行動規範について説かれているところと言われます。

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八正道の六つ目は正精進(正しい努力)、七つ目は正念(正しい思念)、八つ目は正定(正しい精神統一)でした。この三つは、禅定と言われる心の安定に該当する部分だと言われます。

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仏教のシンボルマークである法輪をご存知でしょうか。法輪は八方向にのびていますが、その一つ一つが八正道を表しているとも言われます。

そして、この法輪のマークのように、八正道の一つ一つは連関していて、八正道のうちの一つをおこなえば、他の七つもおこなっていることになると言われます。

ですので、八正道の中の一つでも、これはできそうだ、自分にとって良さそうだと思われるものがあれば、そこから行うといいと言われます。

行に励んでさとりにいたることは、世俗の生活を送りながらは難しいものがあります。ですが、日々の生活の中で、仕事や生活に活用するというような方法でしたら、有効なものも多いと思います。

私自身も仏教の考え方が、物事の見方や判断の軸になっていますし、仏法を学んだことで良かったと思うことも多々あります。これまでの回も見返していただきながら、日常の些細なことからで構わないと思いますので、活用してみていただければと思います。

皆様の生活や仕事がより良いものとなったり、日々を安らかに穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献:
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・『望月仏教大辞典』/世界聖典刊行協会
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・『岩波仏教辞典』第二版/中村元他
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・『ブッダの真理のことば 感興のことば』/中村元 訳
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