「仏教解説」では、仏教の考え方をできるだけ分かりやすく、ご紹介しています。

仏教の考え方を通して、皆様の仕事や生活がより良いものとなったり、日々を安らかに穏やかに過ごすようなご縁となれば幸いです。

今回は、八正道の二つ目、正思惟(正しい思考)について見ていきます。

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◆八正道

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さて前回は、八正道のお話をしていました。八正道とは、分かりやすい言葉で言えば、幸せに生きていくための道であり、幸せに生きるための実践方法と言えるかと思います。

前回は、八正道の一つ目、正見(正しい見方)についてご紹介しました。今回は、八正道の二つ目の正思惟(正しい思考)についてご紹介したいと思います。

◆正思惟

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八正道の二つ目の正思惟とは、正しい思考、正しい考え方のことです。正思惟には、主に三つの内容があると言われます。

◆出離思惟

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一つ目は、出離思惟とか、出欲思惟と言われますが、これは世俗的な欲から離れる思いです。

欲は、人生を楽しむ動機にもなりますが、欲を満たそうと追い求め続け、人生に迷ったり、欲を満足させられずに苦しんだり、欲によって人生が振り回されることもありますね。

世俗的な欲から離れる思いが、私たちが幸せに生きる上で大切な考え方だということが、正思惟には示されているように思います。

世俗的な欲ということで、思ったことがありましたので、少しお話をさせていただきたいと思います。

先日私は、用があって東京に行く機会がありました。

私は普段は、福岡市から少し離れた地方のお寺にいるものですから、東京に行くと、都会の空気を吸って楽しいです。普段、地方にいて、久々に都会に行くと、都会の特徴がよく分かります。

特に渋谷や新宿に行って思うのは、目にする広告や商品の数がとても多いということです。いたるところにお店がありますし、ビルの液晶には絶え間なく宣伝が流れています。

その環境にいて思うのは、それだけ多くの広告や商品を目にすれば、物欲や消費欲が沸き起こってくるということです。おしゃれなものを見れば、いいなと思いますし、美味しそうなスイーツ屋さんがあれば、食べたいなと思います。皆様はスイーツはお好きでしょうか。

キラキラした色々なものを目にすると、それが欲しくなるということが、私たちにはあるのではないでしょうか。広告や商品を多く目にするというのは、東京だけではなく、地方都市でも言えることですね。福岡の博多や天神などでもそうです。

東京は都市の規模大きいですから、それがとても分かりやすいですが、私たちは、ある程度の都会にいれば、知らず知らずのうちに、多くの広告や商品を目にして、物欲や消費欲が喚起されているということが言えるかと思います。

ドイツのマルクス・ガブリエルという哲学者の方が、確か言っていたと思いますが、日本の東京にくると、東京は世界の中でも、消費社会の象徴のような場所だと、そんなことをおっしゃっていたように記憶しています。

それくらい東京は、いたるところに広告や商品があり、世界の中でも、物欲や消費欲が特に刺激される街だということでしょう。

私たちは、日本にいて、当たり前になっているかもしれませんが、それだけの広告や商品を目にして、物欲や消費欲が喚起されるような環境にいるということは、当たり前ではないのかもしれません。

さて、正思惟の一つ目は、出離思惟や出欲思惟と言われ、世俗的な欲から離れる思いのことでした。今お話した物欲や消費欲といった欲は、世俗的な欲に含まれるかと思います。

欲は、人生を楽しむ動機にもなります。モノを買ったり、美味しいものを食べたり、消費することで、私たちは楽しさを感じます。また、モノやサービスが購買されなければ、経済も循環しません。

特に、モノがない時代においては、物質的な豊かさを追い求めることで、国は豊かになり、人々は便利になり、幸福度は高まったことでしょう。ただし、ある程度、物質的に豊かになれば、個人においては、それ以上、物質的な欲求を満たしても、幸福度は高まらないとも言われます。

また、日本社会の状況を見ると、少子高齢化や人口減少の中で、日本の経済成長やGDPは横ばいです。社会状況や幸せの価値観が変化する中で、それでもなお私たちは、物欲や消費欲が喚起されるような環境にいます。

モノを買ったり、消費することで、幸福感を得られるというような、消費社会の価値観の中で生きています。そうしたことを認識しながら、私たちの生活や世の中を眺めてみると、ちょっとだけ違った視点で見えてくるものがあるかもしれません。

個人の幸せにおいては、物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさも大切じゃないかとか。モノが溢れた現代は、モノを持とうとする生き方よりも、モノを持たない生き方をしてみようかとか。

また現代の日本では、GDPと人々の幸福度は相関していないと言われます。経済成長は国の発展にとって大事ですが、それが個人の幸福度を必ずしも高めているわけではないと言われます。そのため日本政府も、GDPで国の豊かさをはかるという指標以外に、人々の幸福度をはかるための指標の開発を色々と議論しているそうですね。

企業としても、ESG投資やSDGsというような、自分たちが提供している商品・サービスが、本当に人々の暮らしをより良くしているかや、社会にとって良いか、地球環境に配慮しているかといったことが問われ、企業理念や企業のあり方を見つめ直すような動きもあるようです。

世俗的な欲から離れる思いが、私たちが幸せに生きる上で大切な考え方だということが、正思惟の出離思惟には示されている。そのことを、現代の日本社会の中で、どう捉えれば良いかというのは、色々な捉え方があるかと思いますが、私はそのようなことを思いました。

◆無瞋思惟

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正思惟の二つ目は、無瞋思惟といって、怒らない思いです。これは、怒りや憎しみから離れようとする思いだと言われます。

怒りや憎しみでカッとなると、周りが見えなくなったり、自分は間違っていないと思ったり、相手と折り合いがつけられなくなったりして、正しく考えられなくなります。

怒らないようにしようという思いが、私たちが幸せに生きる上で大切な考え方だと、正思惟の無瞋思惟には示されているように思います。

◆無害思惟

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正思惟の三つ目は、無害思惟といい、他者を傷付けないという思いです。

無害思惟の逆は、害思惟と言って、自分にとって邪魔な相手を排除しようという思いです。

もし、邪魔な相手を排除しようと攻撃したならば、攻撃された相手は憎しみを抱きます。そして、いつかやり返されたり、結果的に自分の信頼を失うような結果になるでしょう。

他者を傷付けないという思いもまた、私たちが幸せに生きる上で大切な考え方だと、正思惟の無害思惟には示されているように思います。

無害思惟とは、慈悲とも言えます。慈悲をもった考え方が、私たちの人生を幸せにしていくということでしょう。

いかがだったでしょうか。今回は、八正道の二つ目、正思惟(正しい思考)について、ご紹介しました。次回も、続きをご紹介したいと思います。

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合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献:
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・『望月仏教大辞典』/世界聖典刊行協会
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南無阿弥陀仏