お坊さんのかんたん「仏教かいせつ」ということで、仏教に関するテーマを一つ取り上げて、できるだけ分かりやすくご紹介をさせていただきます。仏教やお寺を身近に感じていただくご縁となれば幸いです。

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さて、今回取り上げるテーマは「お経」です。お経と言われると、皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか。漢字が羅列されているとか、ご葬儀やご法事でお坊さんが読むものといったイメージがあるでしょうか。

他にも、ご自宅のお仏壇でお経をとなえているという方や、写経をしたことがある方など、お経が身近にあるという方もおられるかもしれませんね。

しかし改めて、お経とは何かと聞かれると、意外に答えるのが難しいかもしれません。そこで今回は、「お経」について、ご一緒に見てまいりましょう。なおこの内容は、主に浄土真宗本願寺派の内容でお話をさせていただきます。

◆お経とは

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まず、お経とは何かですが、お経とは、仏教の開祖であるお釈迦様の説法です。お釈迦様は、今から約2500年くらい前の方で、80歳の生涯を生きたと言われます。その間、現在のインドやネパールの各地を旅され、色々な方に向けてご説法をなさいます。そのご説法の内容がお経であると言われます。

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応病与薬(おうびょうよやく)とか、対機説法とも言われますが、病に応じて薬を処方されるように、お釈迦様は人々の悩み苦しみに応じて、ご説法をなさったと言います。

ですから、お経には人間の悩み苦しみの原因についてや、その対処法や解決法について記されています。お経というと呪文のように聞こえるかもしれませんが、実はお経には、この人生をより良く生きていく真理が記されているんですね。

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こうしたお釈迦様の説法の内容を、後に仏弟子の方々が文字にして遺したものが、こんにちに伝わるお経です。

お釈迦様の当時、現地では文字で書いて遺すという文化がなかったそうです。お釈迦様が亡くなられた後、お釈迦様が語られていたことが分からなくなると感じたお弟子の方々が集まり、経典編纂会議がひらかれます。この会議のことを結集(けつじゅう)と言っています。

お釈迦様が語られたことは、こういうことだった。こういうことはお釈迦様は語られなかった。そうした議論をして、お釈迦様の説法の内容を確認していったそうです。

最初の段階では、文字にして記録はされず、口頭で覚えていったと言います。そして、後代になって文字に記されていくことになります。

◆北伝仏教・大乗仏教

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仏教はその後、大きく二つのルートで伝播していきます。一つは北の方面に伝わったということで北伝、もう一つは南の方面に伝わったということで南伝と言われています。

北伝仏教は大乗仏教とも言われ、中国、朝鮮半島、日本などに伝わっているものです。南伝仏教は上座部仏教とも言われ、スリランカや東南アジアなどに伝わっていると言います。

日本には、北伝の大乗仏教が主に伝わっていますから、そちらを中心にお話したいと思います。

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お経はもともと、昔のインドなどで使われていた言葉で書かれていました。
仏教が中国に伝わるタイミングで、お経が中国の言葉に翻訳され、漢字で記されるようになります。その漢字で記されたお経が、そのまま日本に持ち込まれましたので、日本で見たりとなえたりするお経の多くは漢字なんですね。

何でお経は漢字なのかなと思われた方は、その理由は、日本では中国で翻訳されたお経を用いているからなんですね。

◆お経の種類によって分派

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さて、お釈迦様が人々の悩み苦しみに応じてご説法をなさり、その内容を記したものがお経であると申しました。人の悩みは数多くありますから、お経の種類もまた、とても多くのものがあります。そして、お経によってその内容が違います。

その数あるお経の中で、このお経の内容が素晴らしい、このお経こそが自分が依りどころとしていくものだというように、お経の種類によって宗派が分かれていきます。宗派が分かれる要因は他にもありますが、宗派が違うというのは、根本とするお経、経典が違うというのも主な要因です。

◆阿弥陀仏の救いについて説かれたお経

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ちなみに浄土真宗では、阿弥陀仏という仏様の救いが説かれたお経をとても大切にしています。阿弥陀仏については、前回お話させていただきました。浄土真宗や浄土宗などで、ご本尊として敬っている仏様が、阿弥陀仏です。

浄土真宗という宗派がどういう宗派かというと、阿弥陀仏の救いにおまかせしていくことや、南無阿弥陀仏とお念仏を称えることを大切にしている宗派です。それはお経の中に、その阿弥陀仏の救いにおまかせしていくことや、南無阿弥陀仏とお念仏を称えることの大切さが記されてあるからです。

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浄土宗の開祖である法然聖人(ほうねんしょうにん)や、そのお弟子である浄土真宗の宗祖 親鸞聖人(しんらんしょうにん)といった方が、阿弥陀仏の救いの素晴らしさを讃えていかれました。それを、後代の我々が受け継いでいるというわけです。

ですので、浄土真宗や浄土宗では、阿弥陀仏の救いについて説かれたお経を特に大切にしています。

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具体的には、

・『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』
・『仏説観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)』
・『仏説阿弥陀経(ぶっせつあみだきょう)』

この三つのお経を、浄土真宗や浄土宗では、根本とするお経としています。この三つのお経をまとめて、「浄土三部経(じょうどさんぶきょう)」とも言っています。

いかがだったでしょうか。お坊さんのかんたん「仏教かいせつ」ということで、今回はお経について、特に大乗仏教や、浄土真宗という観点からご紹介させていただきました。

他にも、日本で有名なお経としては般若心経とか、様々なお経がありますが、他の宗派のお坊さんのお話も是非聞いてみてください。このお話が少しでも、仏教やお寺を身近に感じていただくご縁となれば幸いです。

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合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生
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▼次回の内容

煩悩って何?①【お坊さんのかんたん「仏教解説」】 | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

▼前回の内容

【仏教用語解説】阿弥陀仏とは | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

◇参照文献:

・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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