皆さん、こんにちは。僧侶の神崎修生です。

今回は、「利他が重要な考え方になる」というテーマでお話をさせていただきます。

▼動画・音声でご覧になりたい方はこちら

今、どんな国でも、どんな業界でも、利他(他者のためを思うこと。他者のためになることをすること)の重要性が実感されているように思います。

なぜ利他が重要か

新型コロナウイルスによって、世界は鎖国され、分断されることが分かりました。都市一極集中型の社会の課題が明らかになりました。医療体制が崩壊するかもしれない、日用品や食料が手に入らないかもしれないということを実感しました。

経済活動、消費活動が制限され、収入がなくなる、雇用がなくなる、仕事がなくなるということを実感しました。

医療や介護や育児などの機関が麻痺することを実感しました。家族や個人が孤立することを実感しました。


仏教に説かれる、「全てのものは移り変わっていくという諸行無常」や、「全てのものごとは思い通りにならないという一切皆苦(いっさいかいく)」が、全人類的に実感されているのではないかと思います。


利己(自分の利益だけを考え、他者のことを顧みないこと)では、社会がもたない、地球がもたないという大きなレベル感だけでなく、仕事も自分の生活も成り立たないということを、多くの方が自分ごととして実感されたのではないかと思います。


今後も、感染症の流行や、食料不足、地震、気候変動、環境破壊などによる影響は、起こり続けることが予想されています。

不安をあおるわけではなく、利他を大切にして、互いが支え合う社会、地域、職場、家族などにしていかなければ、それぞれの生活が成り立たないことを基準にして、各々が自分の生活や、仕事、地域、社会を設計しなおしていく必要があることが見えてきたかと思います。


仏教には、「あらゆるものはつながり合い、単独では存在していないという諸法無我」の考え方もあります。自分だけでよいという利己の考え方から、あらゆるものがつながっていて、相互依存の中、互いに影響を及ぼし合い、補完し合って存在しているということへ気付いていくこと。そして、そうした社会や地域のあり方、仕事のあり方、個人の生き方にシフトしていくことが重要だと思われます。


このような時代的な背景があり、利他(他者のためを思うこと。他者のためになることをすること)がさらに重要なものになっているのだと考えられます。


ただし、利他は自己犠牲の上に成立するものではなく、自利(自らのためとなること)がセットです。利己ではないことを強調するために利他を取り上げていますが、自利利他円満(自らのためとなることが他者のためとなり、他者のためとなることが自らのためとなる。それを実現している状態)が基本となります。


仏教の目指すところに、「さとりに至るという涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」がありますが、まさに、自利利他円満がベースになります。

利己(自分がよければいい)では、社会だけでなく、自分の生活も、あらゆるものも成り立たない。自利利他円満(自らのためが他者のためになり、他者のためが自らのためとなる)の生き方、考え方、家庭や仕事や地域、社会のあり方を考えていかないといけないのではないかと思います。


これは、強者と弱者、勝者と敗者という構図の中、一部の人が生存し、利益を享受していくあり方からのシフトでもあります。シフトできるかが、一人一人にかかっているように思います。


利他の活動や生き方をしていくにあたり、仏教を、これまで紡がれてきた人類の智慧として捉え、生き方や考え方、価値観、世界観のベースとして、オープンソース的に多くの方に活用していただけるのではないかと感じています。


では、実際にどういうことをしていけばいいのか。そうしたことを、次回以降に書いていきたいと思います。

良い社会、良い職場、良い家庭、良い人生にしていこうとするポジティブな動きにしていきたいですね。

合掌


浄土真宗本願寺派 教證山信行寺

神崎修生

▼続きの記事はこちら

利他の考え方をもとに、今何をすべきか?【仏教コラム】
利他によって、人生や社会が豊かになる