この内容は、2021年3月3日開催のオンライン朝会の法話を文字起こししたものです。

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改めて、本日もようこそお参りくださいました。ヘルシーテンプル@オンライン、本日は信行寺版ですね。

幸せを育む法話の時間ということで、ご参加の皆様と共に、人生や幸せについてご一緒に考えさせていただいております。

さて、このところ食事を通して、いのちをいただくというお話をさせていただいておりました。

今回は、そのしめとして、いのちにまつわる絵本の紹介をさせていただきます。

絵本のタイトルは、『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』という本です。

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ご覧になられた方もおられるでしょうか。

 

この絵本は、坂本義喜(よしき)さんという方の実体験をもとにつくられた絵本だそうです。

坂本さんは、食肉センターに勤めておられ食肉解体作業員という、牛のいのちを解いて、お肉にする仕事をされていました。

坂本さんによると、食肉センターに運ばれてくる牛たちは、大きくて獰猛だそうです。

牛に対してかわいいとか、かわいそうという感情よりも、早く解いて肉するということを、坂本さんも仕事としておこなわれていたそうです。

興奮した状態の大きな牛に威嚇されたら、食肉解体作業員の方でも、やはり身構えたり、恐怖を感じることもあるのかもしれません。

そんなある日、坂本さんが食肉センターの事務所にいると、牛を積んだ一台のトラックがやってくるのが見えました。明日、肉になる予定の牛が、運ばれてきたのです。

トラックが停車すると、助手席から10歳くらいの女の子が飛び降りてきて、牛のいるトラックの荷台にタッタッとあがっていったそうです。

坂本さんは、事務所からその様子を見ていて、危ないなと思ったそうです。しばらくたっても女の子が荷台から降りてこないので、坂本さんは心配になってトラックのところへ寄っていきました。すると、女の子が牛に話しかけている声が聞こえてきたそうです。

「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃんが肉にならんとお正月がこんて、じいちゃんのいわすけん。みいちゃんば売らんとみんながくらせんけん。ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ」

そういう女の子の声が、聞こえてきたそうですね。「みいちゃん」とは、運ばれてきた牛の名前のようです。

運転席から女の子のおじいさんが降りてきて、坂本さんにこう言いました。

「坂本さん、みいちゃんは、この子といっしょに育ちました。だけん、ずっと、うちにおいとくつもりでした。ばってん、みいちゃんば売らんと、この子にお年玉も、クリスマスプレゼントも買ってやれんとです。あしたは、どうぞ、よろしくおねがいします」

そうおっしゃったそうです。女の子と一緒に育ってきた牛のみいちゃん。しかし、みいちゃんをお肉にしないとお正月を迎えられない、孫にクリスマスプレゼントも買ってあげられない。そうしたことを聞いた坂本さんは、複雑な気持ちになったそうです。

女の子がみいちゃんの首や肩をなでているとき、みいちゃんは幸せそうな顔をしていたそうです。そして、こんなにおとなしくて利口な牛がいるのかと、坂本さんは驚いたそうです。坂本さんは「この牛は解きたくないな」という思いで、その日は家に帰ったといいます。

翌日、みいちゃんのいのちを解くために、坂本さんは食肉センターへ出勤し、みいちゃんの様子を見にいきました。

すると、みいちゃんは坂本さんを見て、最初は威嚇してにらんでいたそうですが、時間がたつにつれ、みいちゃんから寄ってきて、
坂本さんの手をなめたそうです。坂本さんは、運ばれてきた牛を初めてかわいいと思ったといいます。そして、坂本さんは、みいちゃんにこう語りかけました。

「みいちゃん、ごめんよう。みいちゃんが肉にならんと、みんながこまるけん。ごめんよう」

そしていよいよ、みいちゃんのいのちを解く時がきました。

「じっとしとけよ、みいちゃん、じっとしとけよ」

そう坂本さんが語りかけると、みいちゃんはじっとして動かなかったそうです。その時、みいちゃんの大きな目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちたといいます。坂本さんは、牛が泣くのを初めてみて、とても驚いたそうです。

そして、みいちゃんの頭にピストルのような道具を当てると、みいちゃんはくずれるように倒れ、いのちが解かれていきました。

坂本さんは、人と心を通わせたみいちゃんのいのちを解くということを経験して、自分の仕事の意味を見出したそうです。自分の仕事は、牛たちが少しでも楽な気持ちで、あの世にいけるようにすることだ。そう思ったそうです。

その後、先程のおじいさんが食肉センターへきて、みいちゃんのお肉を少しもらって帰ったそうです。そして、家族皆で、みいちゃんをいただいたそうです。

みいちゃんと一緒に育った女の子は、もう最初は泣いて泣いて、みいちゃんを食べなかったといいます。

おじいさんは、女の子にこう言ったそうです。

「みいちゃんのおかげで、みんながくらせるとぞ。食べてやれ。みいちゃんに、ありがとうといって食べてやらな、みいちゃんがかわいそかろ?食べてやんなっせ」

そのおじいさんの言葉を聞いて、女の子は泣きながら手を合わせ、「みいちゃん、いただきます」と言って、みいちゃんをいただいたそうです。

女の子はどんなことを感じたでしょうか。

 

この絵本から、我々も色々なことを考えさせられますね。我々は、牛肉というお肉として見ることが多いですけれども、もともとはその牛肉も、みいちゃんのようにいのちあるものだったわけですね。

ここ何回か申し上げておりますけれども、我々は、何らかのいのちを摂取しないことには生きてはいけません。いのちは大切という自分。しかし、そのいのちをいただかないと生きてはいけない自分。この大きな矛盾を抱えながら、我々は生きています。そして、矛盾を感じても、いのちをいただきながらでないと生きてはいけない我々がいます。

そしてまた、食事がこの口に入るまでに、多くの方が携わっていることに気付かされます。

みいちゃんを育てたおじいちゃん、みいちゃんと一緒に育った女の子、みいちゃんのいのちを解いた坂本さん。そして、いのちからお肉となり、加工され、流通され、販売され、調理され、ようやくこの口へと入ります。

食事をいただくとは、いのちをいただいているということ。そして、多くの方々のおかげで食事を恵まれているということ。

そういうことを、考えさせられますね。

多くのいのちと、みなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきます。

浄土真宗本願寺派の食前のことばの意味合いが、より深く感じられてきます。

 

我々は生きていくために、そして自分の生活を維持していくために、何らかのいのちに手をかけないと生きてはいけません。

我々は、より良い人生や幸せを願います。しかし、我々が願う、より良い人生や幸せとは、実は多くのいのちと、多くの犠牲の上に成り立っているということが、今回の話から学ぶことができました。美味しい食事をいただくことは、我々が幸せを感じる瞬間でもありますが、同時に大切ないのちに手をかけているということです。

はり大きな矛盾を抱えながら、我々は生きていることを思わされます。こうしたことを考える時、いかに知らず知らずの内に罪を重ねてきた自分であるかと気付かされてきます。

浄土真宗の宗祖である親鸞聖人は、地獄にしかいきようのないわが身であるとおっしゃいました。こうした、いのちをいただいて生きているという話から、親鸞聖人の思いの一端が知られてきます。

色々な罪悪を抱えながら生きているわが身である。思えば、一つ一つの思いや行為が、自分本位ではないだろうか。そうしたことが思われてきます。

また親鸞聖人は、阿弥陀如来という仏様の慈悲の光に照らされて、包まれていることを喜ばれた方でもありました。

多くのいのちをいただいているという事実を考えてみれば、矛盾や罪を抱え、中々どうして、自分本位にしか生きられない自分がいます。そして、せめて多くのいのちをいただいていることや、多くのおかげさまがあることに手を合わせて感謝をしたいと思います。

いただきます、ごちそうさま。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。手を合わせ、食事のことばや、お念仏をせめて称えていきたいと思います。

幸せを育む法話の時間ということで、今回は絵本『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』という本を紹介させていただき、そこから感じることをお話させていただきました。

まだ絵本を読んだことがない方は、是非手に取って読んでいただければと思います。

 

▼『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』

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最後までご覧いただきありがとうございます。

 

合掌

福岡県糟屋郡宇美町 信行寺(浄土真宗本願寺派)

神崎修生

▼【仏教ひとくち法話】シリーズ

いただきますとお供え物【仏教ひとくち法話】#016 (shingyoji.jp)

【仏教ひとくち法話】#015 いのちをいただきます | 信行寺 福岡県糟屋郡にある浄土真宗本願寺派のお寺 (shingyoji.jp)

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