With&Afterコロナの社会に、お寺ができること。武内和久さんご登壇の勉強会

こんにちは、僧侶の神崎修生です。

2020年5月14日(木)に、元厚労省室長、参与を勤め、現在、ONE・福岡株式会社 代表取締役を勤める武内和久さんをご講師に迎え、オンライン勉強会を開催しました。

テーマは、「after&withコロナの社会」です。寺院関係者の学びの場「bラーニング」の主催で、運営の小林信翠さんのご縁により実現し、26名の寺院関係者の方々にご参加いただきました。


内容は、「新型コロナウイルスの影響によって、社会がどのように変わっていくか」ということを武内さんからご発表いただき、「お寺がどのような役割を担い、具体的にどのようなことができるか」ということについて、参加者一同で考えました。

総じて、武内さんから前向きなメッセージが発せられ、私も前向きに取り組んでいこうと、思いを新たにしました。


今回は、お話いただいた中から、特に

・新型コロナウイルスによる社会の変容
・原点回帰の経済
・人間らしい生活の再構築
・行政との連携

に関して取り上げ、私なりにまとめさせていただました。

先行きが不透明な中で、どのような人生を歩んでいったらよいのか、お寺としてはどのような取り組みの可能性があるだろうか、そのような疑問を持つ方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

新型コロナウイルスによる社会の変容

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まず、武内さんから、新型コロナウイルスの影響によって、仕事や生活、価値観の面で、様々なことが変容していくのではないかというお話がありました。

具体的には、

・リアルからデジタル、年功から能力、集積からリモート、国から地方といった、働き方、組織のあり方の変容

・競争から共存、価値の探索から足元価値の再発見、ロジックから物語、生の消費から生の創造といった、価値観の変容

などのお話でした。


新型コロナウイルスによって、時代が変わるか変わらないかの議論よりも、どう時代を変えていくかを考えたほうがいいという武内さんの言葉が印象的で、仏教の文脈を加味して、上記の内容を捉えるならば、


・競争よりも、自他共に支え合おうとする自利利他的な共存の社会にしていこう
・遠くのものを求めるのでなく、今ここを大切にしていこう
・物事を分解して、一側面から解釈するのではなく、全体感をもって物語の文脈で解釈していこう
・それぞれが、生きる意味を大切にしていこう

このようなメッセージに伺えました。

原点回帰の経済

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また、これまでの経済のあり方を変えていったほうがいいのではないかという趣旨のお話もいただきました。


株主偏重なものから、ステークホルダー型の経済への転換、また、足ることを知る知足経済や、当たり前に感謝し、価値を再認識しなおすサンクスエコノミーを大切にするなど、経済に関する価値や成果の基準を見直すタイミングにあるというお話だったかと思います。


また、今回の新型コロナウイルスにより、医療や介護、物流といった業界が、安定的な社会を実現するため重要なインフラとしての機能と役割を果たしていることが再確認されたこと、それでいながら、比較的低賃金での労働環境にあることから、もっと大切にしていかなければならないこと、そのためにコスト感覚の変化や、いのちをまもる経済にしていく必要があることを伺いました。

人間らしい生活の再構築

キッズサンガ(子ども会)

また、武内さんから、人間らしい生活を再構築していこうというメッセージも受け取りました。

・国や地域や個人が分断、孤立する社会のあり方ではなく、利他の精神をもとにした、包摂・包括の社会のあり方の重要性

・ゆったり・ゆっくりな生活の大切さや、いつか人は亡くなるということの再認識など、生きる意義や心のつながりを各個人が再構築、再発明していくことが重要であること


特に、生きる意義や心のつながりを各個人が再構築しようとすることが大切であることを、強いメッセージとして感じました。生きる意義や心のつながりは、国や行政から主導されてするようなものでは勿論なく、個々人が再構築しようとする営みがとても重要だという趣旨で、すごく共感しました。


生きる意義や、心のつながりは、人がより良く生きていく上でとても重要なことでありながら、生きる意義について考えるような機会は人生の中ではあまりなく、心のつながりも、意図的につくっていくことは中々難しいかもしれません。

そこで個々人が、生きる意義や心のつながりを再構築とするきっかけとして、お寺をそのような目的で活用していただける機会をつくっていくことは、大切なアプローチだと感じました。例えば、


・何のために生まれ、なぜ生きているのかという仏教の根本の問いと教えから、生きる意義への気付きが醸成されてくる場を設計すること

・地域などのローカルな人のつながりが育まれているお寺のサンガを活用し、心のつながりも感じられる場を設計すること


お寺の取り組みや、担う役割などを設計する時には、こうした仏法僧の三宝をベースにして考えることが、お寺という場の価値が最大化されていいと私は思います。

(お寺は、仏様、仏様の教え、仏様の教えを大切にする仲間という、仏法僧を、三つの宝(三宝)とよび、とても大切にしています。)

行政との連携

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また、武内さんは、元厚生労働省で、地域包括ケアシステムの第一人者であることから、行政との連携というお話もいただきました。

お寺が、セーフティーネット、駆け込み寺的な要素もあり、地域包括ケアシステムの中に加わることも大切だと思われるとの趣旨のお言葉もありました。


行政との連携をはかっていくためには、いくつかお寺として具体的におこなったほうが良いことをあげられ、

・お寺がどんな役割を持っていたり、どんな取り組みをしているかを言語化し、可視化することが大切であること

・行政側からお寺側にアプローチすることは、相当ハードルが高いため、お寺側からアプローチしたほうが良いこと

・行政の方々との信頼関係を育んでいくことが大切であること

などについて、教えていただきました。


また、宗教法人では、行政との連携が難しい部分もあるのではないかという質問に対しては、まずは緩やかなところから機会を共にしていくことも大切ではないかとのご返答もありました。

ご参加者の方が、お寺で取り組まれている終活カフェの紹介をしていただきましたが、そうしたことが緩やかな機会づくりになるのではないかという話にもなりました。終活カフェの場には、行政の社会福祉協議会の方も同席され、何か具体的な相談があった場合は、その場で相談ができるような体制を取られているということでした。

また、宗教法人ではなく、NPO一般社団法人として連携することや、超宗派の団体としての取り組みで連携していくことなどの具体案も、参加者の方からあげていただきました。


その他、お寺は家族で運営をおこなっている場合が多く、お寺が住居で、仕事とプライベートの境目がないという特殊な職種であり、子育てや介護、既存の寺院活動でもかなりの負荷がかかっているという状況への懸念の声もあがりました。

お寺が、セーフティネット、駆け込み寺的な要素を持つ時に、こうした過負荷な状況は冷静に考え、それについての対策もとらないと実現が難しいと思われます。

駆け込み寺的な活動に既に取り組まれているお寺の方も、必要性を感じているから取り組まれていることはありつつも、気合いや根性だけでなく、各機関や専門家、行政との連携をおこなわれ、場合に応じて、専門機関とつなぐということをされていると伺いました。


そして、お寺には、檀信徒(門信徒)の方々が悩み相談をしに来られることも多く、すでに、駆け込み寺の要素を内包しているとも言えます。具体的な対応をとったほうが良いような相談もあるため、お寺側の観点からも、他の専門機関や行政とのつながりを持っておいた方が良いとも言えます。

今回は、武内和久さんを講師に迎え、「bラーニング」にて、オンライン勉強会を開催しました。

「after&withコロナの社会」において、「どのような社会に変えていきたいか」「お寺がどのような役割を担い、具体的にどのようなことができるか」ということについて、皆さんと考えさせていただきました。

講師の武内和久さん、ご縁をいただいた小林信翠さん、ご参加の皆様、どうもありがとうございました。

bラーニングでは、今後とも各種勉強会を開催していきます。


◆武内和久氏

武内和久氏


ONE・福岡株式会社 代表取締役。1971年生まれ福岡市西区(姪浜)出身。 厚労省室長(医療/介護/福祉/子育て/年金/雇用分野)→マッキンゼー 、アクセンチュア→厚労省参与、自治体アドバイザー→TVコメンテーター→現在。 味噌汁づくりが趣味。

合掌

浄土真宗本願寺派 教證山信行寺

神崎修生