利他によって、人生や社会が豊かになる

皆さん、こんにちは。僧侶の神崎修生です。

前回までに、「利他(他者のため)が重要な考え方になる」というお話をしました。

利己(自分の利益だけを考え、他者のことを顧みないこと)では、社会がもたない、地球がもたないだけでなく、仕事も自分の生活も成り立たない。そのことを、新型コロナウイルスを通して、自分ごととして実感された方も多いのではないでしょうか。

だからこそ、互いが支え合う社会、地域、職場、家庭などにしていこうとする営みが大切であり、利他(他者のため)ということが重要な考え方になります。

今後も、感染症の流行や、食糧不足、地震、気候変動、環境破壊などの影響が起こり続けることが予想されており、だからこそ「利他の考え方」を大切にし、「利他の考え方をもとに、今すべきことは何か?」を考えること、そして「課題解決のアクション」をとることが重要です。

課題解決につながるアクションを具体的にとっていかなければ、事態は好転せず、悪化していくからです。


逆説的にいうと、課題解決をしていくことによって、自分(たち)だけでなく、他者の痛みや不安、苦しみも和らいでいくとも言えます。つまり、「課題解決のアクション」が、「自利利他(自らのためが他者のためとなり、他者のためが自らのためになる)」につながるといえます。

こうしたことから、「利他の考え方をもとに、今何をすべきか?」といった時に、まず「課題解決のアクション」が重要になるというお話を前回までにさせていただきました。


ただ、課題といっても、複雑な課題もあれば、解決が非常に困難な課題もあり、それをどうしたらよいのかということは考えないといけない問題です。

そこで重要になるのが、「利他の輪をつくること」だと思います。


今回は、「利他の輪による共働」についてや、「利他によって、人生や社会が豊かになる」というテーマでお話をさせていただきます。

▼動画・音声でご覧になりたい方はこちら

目次

  1. 利他の輪によってうまれるもの
  2. 課題解決を目的とした共働
  3. 自利利他の話の根本的な目的
  4. 意味や方向性が見出されていく
  5. まとめ

利他の輪によってうまれるもの

画像1

さて、私が思う「利他の考えをもとに、今何をすべきか?」は大きく二つあり、一つは「課題解決のアクション」、もう一つは「利他の輪をつくること」です。


利他の輪とは、「利己(自分(たち)が良ければよい)」ではなく、「自利利他(自らのためが他者のためとなり、他者のためが自らのためになる)」ということを意識的にも、行動的にも大切にするつながりといえます。

つまり、利他の輪とは、自利利他を大切する人のつながり、グループ、コミュニティのことです。

「利己」ではないことを強調するために利他の輪としていますが、本来的には自利利他の輪です。


なぜ、利他の輪をつくると良いのかは、自利利他を大切にする人のつながりによって、共働が生まれ、自分(たち)だけでは解決できない課題が解決される可能性がでてきたり、支え合いがうまれてくると考えるからです。

課題解決を目的とした共働

画像2

自分(たち)だけで課題解決が難しいことは多々あり、その時に、共働する利他の輪によって、課題解決が進むのではないかというお話をさせていただきます。


解決が難しい課題とは、例えば規模が大きなものや、専門的な知見が必要とされること、マンパワーや資金が必要になることなどです。

その時に必要なのが共働で、様々な人たちが、それぞれの専門分野や得意とすることなどで補完し合いながら共働をすることによって、解決の糸口が見え、解決につながるということがあるかと思います。

自分(たち)だけでは課題解決が難しい時に、共働することで、解決につながる可能性が高まるので、課題解決を目的とした、共働する利他の輪をつくることは有用性があると思います。


課題解決を目的としたグループは、例えば、政府の対策本部などもそれにあたるでしょうし、地域包括ケアシステムもそうしたものでしょう。地域でのローカルなグループも様々にあることでしょう。


このように、課題解決を目的としたグループや、取り組みは既に色々あるかと思います。共働は、今に始まったことではないし、何を今さらと思われる方もおられることでしょう。

ただ、この利他の輪の話は、似たような取り組みは既にあるとか、既存のグループとどう違うかというところがポイントなのではなく、利他の輪を新たにつくっていったり、既存のグループでさえ、利他の輪に変わっていくことで、より良くなっていくということが、この話のポイントになります。


数回にわたるこの「自利利他」の話の底流には、仏教という人類が2500年かけて紡いできた、生き方、考え方の智慧、人類の智慧を活用して、さらにより良い人生、より良い社会にすることができないかという大きなテーマがあります。

自利利他の話の根本的な目的

画像3

ここで、そもそもこの自利利他の話の根本的な目的とは何かについて、きちんと言語化しておこうと思います。つまり、自利利他や課題解決のアクション、利他の輪の重要性について語ってきましたが、それは何のためにおこなうのかという根本的な目的についての問いです。

結論をいうと、それは自他の抜苦与楽(じたのばっくよらく)です。

自他の抜苦与楽(苦を抜き、楽を与える)とは、自らと他者の、様々な痛みや苦しみが緩和され、自他ともにより良く生きていくことです。自他の抜苦与楽が、この自利利他の話の根本的な目的です。

人生や社会を豊かにするということも、また、幸せに生きるとか、ウェルビーイングといった概念も、この自他の抜苦与楽に包括され、違う言葉として言い換えたものです。仏教の根本目標である、さとりに至るという涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)も、我々の人生の歩みとして具体的に落とし込んだ時に、自他の抜苦与楽の生き方ということが言えるかと思います。


まず、前提として、地球や社会や地域がもたないという大きなレベル感だけでなく、現在営んでいる仕事や、家族や自分自身の生活すらも成り立たないかもしれないということがありました。

そこで、今自身が抱える課題を具体的に解決していく行動をそれぞれが取っていくことも重要であるし、また、支え合い、助け合っていくことも重要になるということでした。


こうしたことを、今回の新型コロナウイルスによって、全世界的に、同時に実感している時期にあるかと思います。

今まさに「自利利他(自らのためとなることが他者のためとなり、他者のためとなることが自らのためとなる)という考え方の重要さ」を自分ごととして実感できるタイミングにあるということが言えます。


自他の抜苦与楽を根本的な目的として、それを実現していくために、自利利他の考え方や行動が重要なものとなる。そして、自利利他の具体的な行動として、「課題解決のアクション」と、「利他の輪をつくる」という行動が重要ではないか。

全体感としては、このような構造と階層があり、部分的に切り出して話をしています。部分ばかりを見ていると、全体感が分からなくなることがあるので、一度ここで根本的な目的を通して、全体感を確認をしておきました。


そして、全体を通して、自利利他(利他)という言葉を特に全面に出しているのは、自利利他(自らのためが他者のためとなり、他者のためが自らのためとなる)という概念は、仏教に限らず、どんな人か、どんな業界か、どんな地域や国かに関わらず、ある程度通用する概念だからです。


また、利己(自分がよければよい)では行き詰まりを見せている中にあって、「利他が重要な考え方となる」ことが、共感をうみやすく、共通認識として持ちやすいタイミングにあるからです。


この自利利他の話の根本的な目的は、自他の抜苦与楽です。つまり、それぞれの人生や家庭や、仕事、人間関係、地域、社会などにおける、精神的・肉体的・社会的な痛みや苦しみが緩和される、そしてより良くなっていく、良い方に変わっていく、人生や社会が豊かに感じられていくというものです。

意味や方向性が見出されていく

画像4

共働の話に戻ると、課題解決を目的にした、共働する既存のグループや取り組みが、利他の輪になっていくのはどういうことかというと、そのグループや取り組みに、意味や方向性が見出されていくことだと思います。

利他の輪になっていくことで、それぞれの専門性や特徴を活かして共働しつつ、そもそも、これは何のためにおこなっているのか?という意味や根本的な目的について考えるきっかけができます。

そして、自他の抜苦与楽(自らと他者の、様々な痛みや苦しみが緩和され、自他ともにより良く生きていく)という方向性が明確になります。

さらに、自分(たち)のためにおこなっていることが、他者のためになる、そしてそれが、自分(たち)のためになるという、自利利他の好循環が、人生や社会を豊かにするということが、本質的に理解され、実感されてきます。


これは大きなことで、人生は自他の抜苦与楽に生きることで、豊かになるということに気付くことができるということです。そしてこれは、生き方や仕事に対して、利益やお金以外の目的やKPI(行動の評価指標)を与えるものです。


長くなりましたので、今回はここまでにします。

まとめ

今回は、

・自分(たち)だけで、抱える課題を解決することが難しい時に、利他の輪の共働によって、解決していく可能性があること。

・そして、利他の輪は、課題解決だけでなく、支え合いや助け合いを促していくものであること。

・そもそも根本の目的は、自他の抜苦与楽であること。

・自他の抜苦与楽を実現するために、自利利他を重要な考え方、行動として取り上げ、具体的には、課題解決のアクションと、利他の輪をつくることをおこなっていくこと。

・新しい利他の輪をつくることも良いし、既存のグループや取り組みを、利他の輪にしていくこともよい。利他の輪としていくことで、意味や方向性が見出されてくること。

・そして、自他の抜苦与楽に生きることが、人生や社会を豊かにするものであること。


こうしたお話をさせていただきました。

次回以降、今回触れらなかったことについて、またの機会にお話したいと思います。

最後まで、お読みいただき、ありがとうございます。

合掌


浄土真宗本願寺派 教證山信行寺

神崎修生

▼関連の記事