SDGsと仏教、そして地方創生

2020年1月28日(火)、博多の光薫寺様にて開催された、「仏教×SDGs de 地方創生セミナー」に参加してきました。今回は、その所感をレポートさせていただきます。

目次

  1. ポイント
  2. 感想
  3. お寺に落とし込んで考える
  4. お寺の課題
  5. お寺の可能性
  6. 信行寺での実践例
  7. 実践における気付き

ポイント

公認ファシリテーターの小菅隆太氏の指導のもと、参加者の皆様と『SDGs de 地方創生カードゲーム』をおこないました。ゲームは、大変に盛り上がり、初めて席を同じくする異業種の方々と、仮想の街づくりと地方創生のシュミレーションをおこないました。行政や住民など、様々なステークホルダーの役となり、対話や共働しながら、街づくりをおこなっていく中で、地方創生に如実につながっていくことを、実感として学びました。

また、『持続可能な地域のつくり方』の著者である筧裕介氏による基調講演がおこなわれました。「自分の未来と地域の未来はつながっており」、だからこそ、「地域全体が息づいているような持続可能な地域づくりが重要」であり、そのために、「他者と対話や共働が欠かせない」ことなどを、ポイントとして学びました。

感想

もともと、SDGsの概念は大変素晴らしく、仏教との親和性も高いのですが、難点としては、地球規模の課題が多く挙げられ、その解決改善に、一個人がどのように寄与できるのか、その具体策と実践をこれから試行錯誤していくフェーズにあったのが、地域や社会人としての一個人とSDGsとのこれまでの関係であったように思います。

しかし、今回のセミナーでは、仏教との親和性の再確認は勿論、地方創生、街づくりという階層にまで落とし込まれ、さらには、住民としてもそこに参画していくことが可能であること、いや、住民だからこそ、そこに参画していくことが重要であり、そして、それによって、街が人的にも経済的にも良くなっていくことを、肌感覚として実感できたことが良かったと思いました。

お寺に落とし込んで考える

また、お寺や僧侶という立場においても、具体的な学びがありました。

以前から指摘されている、日本や地域の状況、つまり、人生100年時代、高齢化、老老介護、入院・介護施設の不足、在宅介護、家で看取る、核家族化、単身化、孤独死、孤独な社会、地縁の弱体化、過疎化などの状況を鑑みると、地域における人のつながりや、それを成立させるコミュニティの存在はとても重要だと、改めて感じました。

そして、地域に存在し、昔からのコミュニティや地縁を内包しているお寺は、今のところ、地方創生や街づくりに、大きく関与しているわけでもなく、期待されているわけでもない現状があります。一部のお寺や僧侶は、積極的に、それに関わり、役割を果たしておられる方もいますが、現在は少数と言えるでしょう。

お寺の課題

お寺におられる方々も、地域が良くなっていかないとお寺は成り立たないことは実感されている方が多いと思います。しかし、お寺が地方創生に積極的に関わっていくには、超えるべきハードルがあると感じています。

ほとんどのお寺は、家族による自営業であり、平均で2~3名の家族で、お寺の管理運営をおこなっています。地方の商店街の中にある自営業のお店や、家族で営む理容院などと、リソースとしてはそう変わりません。つまり、人的・財的なリソースは、あまり大きくはないということです。

より具体的にいうと、例えば、70代夫婦のご住職と奥様だけで、跡継ぎがいないというお寺もあったりするわけですが、その中で、葬儀や法事の執行、お墓の管理、信徒の相談対応、各種催しなどをおこなっています。その状況で、お寺が地方創生や街づくりにも積極的に関わっていくことは、場合によっては難しいこともありえます。

色々なお寺があるので、一概にはいえませんが、これらの現実的な課題や状況を念頭に入れつつ、関わり方や打ち手を決めていく必要があります。

お寺の可能性

ただし、お寺にはもともと持っているリソースがあります。それは、今回、光薫寺の住職である小林信翠氏が示しておられたように、

①時間的リソース(過去からの深いつながり)

②空間的リソース(お寺の伽藍や場)

③人的リソース(信徒の方を中心とした人のつながり、集まり)

④教えに基づいた救い

というものです。

誰一人取り残さないというSDGsの理念は、仏様の願いでもあり、仏道を歩む僧侶の活動規範でもあります。しかし、地域課題や人それぞれに抱える苦悩を、お寺や僧侶だけで解決、対応していくことは、非常に困難です。

だからこそ、お寺が既に持っているリソースを、最大限活用できるような体制を整えていくこと、そして、お寺、宗教者が担うべき役割とは何かを、理念として紡いでいくこと、明確化していくこと、そして、活動理念を共にする同志の方々と、対話を重ね、共働し、心が豊かな地域の創生を目指していくこと。

そうした姿勢や方向性は、今のお寺には、とても可能性のあることですし、潜在的に求められていることではないでしょうか。

信行寺での実践例

私の事例で恐縮ですが、実は、2年ほど前より、私が副住職を勤める信行寺において、とあるプロジェクトを実行していて、実行と活性化のフェーズに入っています。詳しい内容は、記していると長くなるので、また別の機会に書ければと思いますが、そのプロジェクトを立ち上げ、実行していった際のアクションの流れを、参考までに記しておきます。


◇理念構築のフェーズ
・仏教やお寺、僧侶としての活動理念を言語化、明文化すること。
・その理念を、自らの地域における課題や求めに照らして、磨きあげること。

◇土壌づくりのフェーズ
・理念実現のための具体的なプロジェクトや活動をデザインしてみる。
・磨き上げた理念と、実現のための取り組みを発信し、仲間を集める。
・地域に存在するリソースを洗い出し、不足している必要なリソースも書き出す。

◇実行のフェーズ
・小さくでもいいので、とにかく実行してみる。

◇活性化していくフェーズ
・活動を通して、対話を重ねる。
・楽しく、参加しやすい雰囲気づくりをおこなう。
・それぞれの活躍の場や役割を用意する。

あくまで一案ですが、私が行ったプロセスは上記のようになります。

実践における気付き

また、プロジェクトをおこなってみて、以下のような気付きがありました。

・理念は伝えるだけじゃ伝わらない。実行する具体的なプロジェクトや活動を実践、実現していく中で、時間をかけて浸透していくものである。

・自助、互助の仕組みの一端をお寺が担い、場と人とのつながりを設計していくことが重要。そして、その姿勢をお寺が示すこと。

・自助互助の取り組みは、自己犠牲型ではない、ワクワク、楽しく、自分らしく、成長や生きがいを感じる中で、できるとより良い。「困っている人を助けたい」、「誰かの役に立ちたい」という動機からおこる、理念先行型の活動は、とても素晴らしい。しかし、一部の方の負担に依存しすぎ、心身を壊してしまったり、財政面で活動が立ちゆかなくなったりする場合が多い。

・しかし、活動する上で、その根本となる理念や動機は、とても重要である。

などです。

今回のセミナーでの時間は、とても素晴らしく、楽しいものでした。
関係者の皆様、素敵な機会をありがとうございました。

最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。

合掌

浄土真宗本願寺派 教證山信行寺

副住職 神崎修生